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リサの婚活物語③

 リサがアランと出会って2か月ほど経った。アランは軍人のため、任務で休暇が潰れる事が度々あったが、それでもお互いの休暇が合う日にはデートをしたり、仕事終わりに夕食を共にしたりして、仲を深め合った。

 そして、何回目かとなるデートの前日、仕事を終えたリサはデパートに寄って買い物をしてから家に帰った。夕食後、買い物袋から購入したものを取り出して、しげしげと見つめる。


(買ってしまった…。年甲斐もなくビキニの水着を…。だって、デートの場所は「セイレンウォーターパーク」帝国一のプール遊園地だもん。大丈夫、まだギリギリ20台だし、貧乳だってビキニは似合う…はず。アランさん褒めてくれるかな。でも、痛い女って思われたらどうしよう…てか、死ぬ)


 期待と不安を入り混じらせながらベッドに入るリサであった。


 翌日、朝からそわそわと準備をしているリサに、年の離れた妹のハル(高校2年生。16歳、貧乳)が声をかけて来た。


「お姉、デート?」

「あら、おはようハル。そうよー。今日もデートなの♡ 羨ましいだろー」

「別に羨ましくもないけど…。で、どこ行くの?」

「セイレンウォーターパーク」

「わあ、いいなぁ。わたしも行きたい! 付いて行っていい!?」


「ダメに決まってるでしょ。私はアランさんとのお付き合いに人生の全てを賭けているの。邪魔する者は、それが神や悪魔であっても戦うわ。それが血が繋がる妹弟でも!」

「目が怖いよお姉ちゃん。大丈夫、デートの邪魔はしないから~。ねー、みんな~」

「はーい。邪魔はしないよー」

「もう、いつの間にみんな集まってるのよー」


 玄関で靴を履いていたリサの周りに、いつの間にか妹弟が集っていた。総勢5人。次女のハル、三女のリン(中学生3年生:D級乳)、長男のジョン(中学1年生)、四女のアリサ(小学5年生)、次男のミック(小学2年生)。全員がニコニコと笑ってお出かけの準備をしている。


「ダメよ。絶対に付いてきちゃダメ!」

「え~。いいでしょ、お姉。邪魔しないからさぁ」

「だ…ダメだよ」

「お姉ちゃん。アリサもプール行ってみたい。クラスの友達はみんな行ったことあって、アリサだけ行ってなくて話題についていけないの…。お姉ちゃん、アリサ行きたい」

「ボクも。スライダーで遊びたい。ダメ?」

「ミックまで…。うっ、その瞳…」


 妹弟たちがうるうるした瞳でリサを見つめる。基本、妹弟大好きなリサは「うっ」と怯み、後ずさりした。


「だ、ダメ…。そんな瞳で見てもダメよ…」

『お姉ちゃーん。お願いっ!』

「くっ…。わ、分かったわよ(仕方ない。これで振られてもそれまでの縁。諦めよう。結婚も大事だけど、妹弟の方がもっと大事だもの…。でもアランさんなら)」


 リサはがっくりと肩を落としたが、なるようになれと気持ちを入れ替えた。振られたらその時はその時、かわいい妹弟と楽しめばいいやと思ったのだった。


 ◇  ◇  ◇  ◇  ◇


「えーと、リサさん。これは…」

「えーと、私の妹弟です。出がけに捕まってしまいまして…その…。プールに行きたいって、どうしても聞かなくて…」


 ウォーターパーク施設の広い前庭の噴水広場の待ち合わせ場所でアレンと合流したリサ。ぞろぞろとリサの妹弟が現れた事でアランは戸惑い、リサは申し訳なさそうな顔をして俯いている。アランの前にテケテケとハルがやってきて、満面の笑みで礼をする。


「へえ~。この方がお姉の彼氏さんかぁ~。凄く優しそうな感じの人だね。初めまして、わたしはリサ姉の妹でハルと言います。今日はわたし達もプールに来たかっただけで、2人のデートは邪魔しませんから、しっぽり楽しんでくださいね!」

「あ、ああ。ありがとう」


「さあ、妹、弟たちよいっくわよーっ! リン、後ろをお願いねー」

「アイアイサー!」


 ハルとリンに連れられて妹、弟たちはウォーターパークの受付に走って行った。


「す、すみません! せっかくのデートなのに」

「はははは、確かに驚きましたが、全然気にしませんよ。ハルちゃんでしたか、リサさんそっくりですね。しっかりしているところも」

「あはは…、お恥ずかしい(胸がペッタンコなのもそっくりなのよ)」


 とりあえずビール…ではなく、とりあえずブール施設に行こうと2人並んでウォーターパークの受付で入場料金を払った後、それぞれ更衣室に移動した。


「よ…よし。着替え終了。うう…痛い女じゃないよね。毛、はみ出してないよね…ん、OKOK…」


 リサの水着は黒のトライアングルビキニ。身長168cmの高身長にスラリとした体形。82cmAカップの美乳はささやかながらも小山を主張しており、自分でも中々だと思う。


「さて、アランさんが待ってるかもだし、行こう」


 ◇  ◇  ◇  ◇  ◇


「お待たせしました…。えっと、私、どうですか…」

「……………。(素敵だ…)」

「あの…、アランさん?」

「…ああ!? す、すみません。見惚れてしまいました」

「へっ!? う、うそ。あ、あわわわ…」


 慌てるリサの尻がパーン!と叩かれる。


「ひゃうん♡」

「しっかりしなよ、お姉! ばっちりアピール頑張って。じゃーねー」


 カワイイワンピース姿のハルが笑顔で手を振りながら妹弟たちを連れてバタバタと走って行った。リサは頬を膨らませ、「もう!」と言って妹と弟を見送った。ハルたちが人ごみに消えると改めてアランを見た。アランは膝上までのショートパンツを着用しているが、均整の取れた筋肉質の体にぴったり似合っている。


「(うわ、かっこいい!)あの…アランさんも素敵、です」

「はは、ありがとう。では、せっかくですし、楽しみましょうか」

「え、えっと、はい!」


 アランはリサの手を取ると、プールサイドに移動した。人ごみをかき分け、到着したのは水の流れるプール。大勢の人が体を浮かせて楽しそうに遊んでる。筏型空気ボートに乗って遊んでいるハルたちがこちらに向かって手を振っているのも見えた。


「私達も泳ぎましょう」

「はい♡」


 流れるプールで浮き輪に乗って流されながら遊んでいると、日ごろのストレスが発散されるような気がする。それに隣で笑ってくれる男性が居てくれることも信じられない。


(こんな楽しくリラックスした気持ちになるの初めて…。そういえば、最近組合長にヒスる回数も減ったなぁ)


 流れるプールの次にウォータースライダーに移動した。ウォータースライダーのなだらかな上り階段の列に並んで少し待つと順番が来た。滑走面は結構な勢いで水が流れている。ここは2人まで横に並んで滑り落ちることが可能な施設で、係員から滑り落ちる際の姿勢や注意事項の説明を受けて、2人手を繋いで滑走面の縁に立つ。


「結構高いですね。ドキドキしちゃう。あの、大丈夫ですか、アランさん」

「いや、その。実は、高い所が苦手で。ははは…」

「意外です。軍人さんは怖いものなしだと思ってました」

「そんな事はないですよ。怖いものは怖いのです」

「うふふっ。じゃあ…、こうだっ!」

「うお!」


 リサはアランの腕を取ってしっかりと抱き着くと、ぴょんと飛んで滑走面にお尻を着いて滑り出した。水の流れが摩擦係数をほぼ0にしてるため、結構な速度が出る。とぐろを巻いたコースの曲線で思いっきり遠心力で振られ、「きゃあああ!」とリサがアランの胸に自分の体を押し付けた。想像以上に柔らかい体にアランは年甲斐もなく慌ててしまう。


「りっ、リサさん!」

「ゴメンなさーい。わあああー早い早い、あはははっ!」


 1週半のとぐろコースを回り直線に戻った。間もなくスライダーの終点だが、そこは軽いスキージャンプ状になっていて2人は抱き合ったまま、ぴょーんと上空に飛ばされる。


「きゃー!!」

「うわわーっ!!」


 ドボーンとプールに落ちて浮かび上がる2人。アランの驚いた表情が可笑しくてリサは大笑いする。その様子を遠目で見ていたハルとリンはうんうんと頷き合った。


「ハル姉、リサ姉ちゃん。結構いい雰囲気じゃない?」

「うん、今度こそ上手くいってほしいよね」

「リサ姉ちゃん、いつもあたしたち妹弟の面倒を優先させるから、いつも男側が逃げちゃうんだよね。でも、今度の彼氏さんは大丈夫そう」

「だね。わたしたちを見ても嫌な顔をしなかった。絶対にいい人だよ」

「がんばれ、リサ姉」


 腕を組んで楽しそうにプールサイドを歩くリサとアランを、ハルとリサたちは何とか上手くいってほしいと応援するのであった。


 ◇  ◇  ◇  ◇  ◇


「うふふっ、結構遊びましたねー。少し疲れたかも」

「休憩しましょうか。丁度昼どきにもなりましたし」

「はい!」


 リサとアランが飲食スペースに足を運ぶと何だか騒がしい。スペースの一角でもめ事が起っているようで人が集まっている。


「なんでしょうね?」

「行ってみましょうか」


 2人が近寄ってみると、どうやら男性数人のグループと高校生から小学生までの男女のグループが言い合っているようだ。


「イテェ、イテェよぉ~。骨が折れたよぉ~」

「可哀そうに。どこが折れたんだ」

「股間の竿」

「ば、バッカじゃないの!? 股間の…、その…アレに骨なんてあるわけないでしょ!」

「そ、そうよ。弟にぶつかって来たのはあなたたちでしょ! 弟は転んでケガしたのよ。謝りなさいよ!」


「あ、あれ!?」

「リサさん、あそこにいるのは妹さんと弟さんじゃ…」


 リサの視線の先には男たちの前で通せんぼポーズで背中に妹と弟を庇うように立っていたハルとリンの2人。男たちは女子高生と中学生の成熟しかけの体を見て、ニヤニヤと気持ち悪い笑みを浮かべている。リサとリンは顔を青ざめさせながらも、気丈に弟たちを庇っていた。


「仕方ねぇな。許してやるよ」

「許すも許さないも、そっちが悪いんじゃないの!」

「ウルセェ!」

「ひっ…」

「ただ、条件がある。お前とお前がオレたちと付き合えよ。そうしたら、後ろのガキどもを許してやるぜぇ」

「な…、そんな事出来る訳無いでしょ。嫌よ! キャッ!!」


 男たちがハルとリンの手を取った。リーダーらしい小太りで脂ぎったニキビだらけの顔をした醜い男がブヒブヒと笑う。


「は、離せー!」

「姉の方は貧乳で肉が無えが、妹の方はいい体してるぜ。美味そう~」

「いやっ! やめてっ!」


「あっ、いけない!」

「リサさん!」


 妹のピンチに居ても立っても居られなくなったリサは、アレンの手を離すと、人ごみをかき分け、男たちに向かって駆け出していったのだった。

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