第48話 リース、マヤに気に入られる
朝起きて、日課の走り込みと素振りを済ませたユウキにダスティンが声をかけてきた。
「おい、ユウキ。今日は侯爵さんの所から武器を引き取りに来る。裏に出しておくので、手伝ってくれ。マヤ、その間店番を頼む」
「りょうかーい」
『わかりました』
ユウキがダスティンとロングソードやハルバード、ラウンドシールドといった武器防具を並べて準備していると、店からマヤがユウキを呼びに来た。
「ユウキ様、お友達が見えられましたよ」
「お友達? 誰だろ、わかった、いま行くよ。オヤジさん後はいい?」
「いいぞ、行ってこい。マヤ手伝ってくれ」
ユウキが店に行くと、フレッドが立っていた。
「あれ、フレッド君。どうしたの?」
「突然にごめん。どうしてもユウキさんにお礼が言いたくて。ユウキさん、リースを助けてくれてありがとう」
「なんのこと? ボクわからないな」
「はは、いいんだ。僕が言いたかったから。ほら、リース」
「ユウキさん、こんにちは…。あの、この間はお見舞いに来てくれてありがとう」
「リースちゃん、もう体は体丈夫なの? うん、顔色もいいし、元気になったみたいだね。そうだ、2人ともよかったら中に入って、お茶を入れるよ」
ユウキはフレッドとリースをリビングに案内すると、お茶の準備を始めた。そこにダスティンの手伝いを終えたマヤが『ユウキ様、私がやりますよ』と言いながら、リビングに入ってきた。そして、リースを見た瞬間、マヤが硬直してしまった。
「マヤさん?」
訝しげにユウキが声をかけると、マヤは、
『か、かわいい…。何ですか、何ですかこの可愛い生き物は! ああ、ユウキ様の小さい頃を思い出します! お名前は? そうですか、リース様と言うのですか。ああ…』
『ユウキ様! お兄様! ちょっとリース様をお借りします!』
そう言うが早いか、マヤはリースを抱きかかえると2階に駆け上がって行った。
「おにいちゃーん! わああああー!」
リースの悲鳴が家の中に響き渡る。
「ま、マヤさん! マヤさんがあんなに興奮しているの初めて見た…」
「リースーーーーっ!」
ユウキとフレッドが2階に上がって、マヤの部屋に行き、扉を少し開けて覗いてみると、マヤが子供用の服をたくさん出し、リースの着せ替えをやっていた。
「これって、昔ボクが散々されたヤツだ…。人呼んで着せ替え地獄」
「着せ替え地獄…」
「マヤさんはね、可愛い服を作るのが上手いんだ。多分あれはボクが小さいころ来ていた服だよ。ん? あ、あれは!」
ユウキは、バン!と大きく音を立ててマヤの部屋の扉を開けると、
「マヤさん、その下着はまさか!」
『あらユウキ様、ええ、あなた様が小さい頃、喜んでお召しになっていた極小ビキニショーツです。ユウキ様はこれを穿いて鏡の前でポーズを取るのが好きでしたね。リース様にも似合うと思うんです。ですから差し上げようと思って』
「凄い下着だ…。布の部分が少ない。ユウキさんって意外と…。でもリースに早いんじゃないかな。この下着」
「意外とって何! スケベ下着って思ってるでしょ! うわあああ、恥ずかしい~。忘れて、ボクの黒歴史」
『あああ、可愛い、可愛いです。ユウキ様のお古ですが、リース様にもよくお似合いです。どうですか、どうですか、お兄様、超プリティーでしょう』
「えっと、これ本当に私なのかな。自分じゃないみたい…」
「でも、下着はちょっと恥ずかしいかな」
『そんなことありません! よくお似合いです。ユウキ様を見てください。この下着を毎日着ることによって美しく成長されたのです。ユウキ様はもうこの布面積では物足りないと申す強者ですよ』
フレッドがユウキをジーっと見る。
「やめて、そんな目で見ないで。ボク、そんなこと言ってない」
『リース様も美しく成長されます。私が保証します!このお洋服と下着をお持ち帰りください。そして男共に可愛いリース様を見せつけてやるのです!』
「ありがとう、おねえさん。私楽しい! あの…、また遊びに来てもいいですか?」
『もちろんですとも。か・な・ら・ず来てくださいね!』
フレッドは「ここにリースを連れて来たのは失敗だった」と言いながらリースを連れて帰って行った。沢山のユウキのお古を持たされて。
『ああ、ユウキ様とリース様。マヤの心を揺さぶるお方が2人…。幸せです』
ユウキはそんなマヤを見ながら、(フレッド君、絶対ボクの事誤解したよね…)と落ち込むのであった。