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第455話 第8ダンジョンの秘宝

 魔人たちとの戦いを制したレオンハルトとマーガレット、エドモンズ三世にラーメラは隠し階段を終りた先の広間に入り、エヴァリーナたちと合流した。


「レオンハルトさん!」

「ぐおっ!」


 レオンハルトの無事な姿を見たエヴァリーナが感激して飛び込んできたが、姿勢が低かったため股間の袋に頭突きを喰らわせる格好となった。衝撃で息が詰まり、膝から崩れ落ちるレオンハルト。悲鳴を上げて慌てて抱き起こすエヴァリーナ。しかし、レオンハルト股間を押さえてビクンビクンと痙攣している。


「きゃーっ! レオンハルトさーん!」


「何をやってんだか…」(ルゥルゥ)

「…………」(ラサラス)


「姫様、元気を出して。姫様がそうだとシン君も浮かばれないよ」

「そう…ですね…。はい…」


「それはそうと、ここは一体なにかしら。リューリィ君、何かわかったの?」

「いえ、これといって特には…」


「そう…」

『フム…。だがここは古代魔法文明の遺跡であることは確かじゃ。邪龍に関するモノあるいは何か有用なモノがあるやも知れぬ。手分けして探してみようではないか』


「そうね。エヴァちゃん、みんな、部屋の探索をお願い」


 マーガレットの命令で全員が部屋の中を調べるため移動し始めた。金的への打撃から何とか回復したレオンハルトもエヴァリーナに支えられ、よろよろと立ち上がった。しかし、エヴァリーナたちがいる部屋は20m四方、高さ5m程の何もない部屋で、一番奥の壁に女神が祈りを捧げている姿をモチーフにした絵画が飾られている。


 皆が壁や床を調べる中、リューリィとルゥルゥは絵画に何かあるのではと考え、絵をずっと眺めていた。


「この絵、とても上手に描かれているけど、何かありそうな雰囲気はないね」

「そうですね…。よっと、ルゥルゥさんそっちを持ってください。どうやら外れそうです」

「うん、わかったよ」


 2人で額に手をかけ、ガタガタと動かしていると、ガコンと音がして絵が壁から外れた。


「やった!」


 絵を床に置いて壁を見ると、30cm四方のタイルが1枚埋め込まれている。リューリィは他のメンバーに声をかけて集めると、タイルに手を置いて力いっぱい押し込んだ。


 ガタン!


 タイルが壁に押し込まれると、部屋の中央付近の床、約5m四方が下開きに開いて、何かを載せた金属製の棚がせり上ってきた。棚は2段になっており、一番上の1段目には透明ケースに入った1冊の本。2段目には同じく透明ケースに入った何かの図面と小型の機械装置が置いてあった。


「これは…」(エヴァリーナ)

「これがこのダンジョンの秘密ね。調べてみましょう」(マーガレット)

「一番上の棚は…、1冊の本が納められていますね」(リューリィ)

「では、私が調べてみましょう」(バルトホルト教授)


 教授は透明なクリスタルケースを固定している金具を外し、蓋を開けて本を取り出してぺらぺらとめくってみる。本には古代文字と何か機械装置らしきものといくつかの魔法陣が書かれていた。


「ふむ…、これはアースガルドから持ち帰ったプレートと同じ系統の文字ですな。ここでの翻訳は難しそうです。大学で調べてみましょう。ただ…」

『何か気になることがあるのかの?』

「ええ、これは何かのマニュアルのような気がしますね。何かは判りませんが」

「…気になるわね」


『まあよい、ここで議論しても始まらぬ。次の宝物を調べるのじゃ』

「では引き続き私が…」


 教授は本をケースに戻すとエヴァリーナに渡し、マジックバッグに収容するようにお願いすると、リューリィに手伝ってもらって真ん中の段のクリスタルケースを開いた。この段のケースは1m四方もあり、中には丁寧に折りたたまれた厚手の紙が数枚入っている。教授はその中の1枚を丁寧に開いた。


「これは一体何でしょう?」

「随分と複雑な絵ね。それに注釈の書き込みがすごいわ」


「そうでしょうね…。ここにある図面のタイトルは私にも読めます」

「何て書いてあるんですの?」

「対邪龍決戦兵器「魔導式超電磁投射砲」設計図とあります」

「邪龍との決戦兵器…」


「こっちはどうなの? なんか別の絵が書いてるよ」


 ルゥルゥが教授に別の図面を見せる。


「こちらは「戦術用高出力光増幅放射砲」とありますね」

「何がどういうものか、全く理解できないわ。でも…」

「これは大きな収穫です。帝都に持って帰るべきですわ」


「私は魔導機械工学の専門家ではありませんので確かな事は言えませんが、この設計図の復元は無理と考えます。これほど複雑で高密度な機械装置は我々の技術水準では再現不可能です」


「…それでも」

「それでも、持ち帰りましょう。もし、邪龍が復活して私たちが為す術なく滅ぼされる事になったとしても、希望は残して置いてあげたい。生き残った人々が縋る何かを残しておいてあげたいと思うんです。それが、再現不可能な技術であっても…」


「エヴァちゃん…」

「なるほど。分りました、この図面は他の大学の協力も得て総力を挙げて分析してもらうよう、理事会に諮ってみます」

「よろしくお願いいたしますわ。教授」


『さすがエヴァリーナじゃな、しっかりしとる。ユウキが認める訳じゃわい。確かに世界が滅んだら好いた男と子作りするのもままならんしのう。ちなみに、エヴァリーナはどんな体位が好きなのじゃ? ハッハッハ…あべしっ!』


「余計な事は言わんでよろしい」(マーガレット)

『本当にドスケベですね。このおじさんは』(ラーメラ)


 とりあえず手に入れたものは持ち帰ることにしてマジックバッグに収容した。全ての作業を終えたエヴァリーナは全員を自分の周りに集めた。


「皆さん、第8ダンジョンの調査はここで終了とします。残念ながら邪龍の起動システムは見つかりませんでしたが、邪龍に対抗できそうな資料を手に入れたのは大きな成果だと思います。まあ、モノになるか分からないですが…」


「起動システムはユウキさんたちが発見してくれる事を期待しましょう」

「それにガルガ復活を狙う魔人もヘルゲストは逃がしたが、後の2人は倒した。これも成果だぜ。ただ、シンだけは残念だったが…」


「シン…」

「ラサラス姫、シン君は姫を守れて本望だったと思うよ。元気出して。じゃないとシン君悲しむよ」

「ルゥルゥさん…。はい、そうですね。私、シンの分まで頑張ります! 絶対に兄の野望を阻止して見せます!」

「うん! あたしも手伝うから頑張ろうね」


「では、転移の腕輪で地上に戻ります。皆さん、手を繋いでください」


 エヴァリーナは全員が手を繋いだ事を確認すると、自分もレオンハルトとラーメラの手を握った…ところではたと気づいた。


「えっと…、ラーメラさん?」

『ハイです!』

「なんで自然に手をつないでいるのです?」


『えっ?』

「えっ?」


『だって、私はエヴァリーナたちの仲間になるって言ったじゃないですかぁ』

「そういえば、そう言ってましたわね。ダンジョンを出ても問題ないのですか?」

『ぜんっぜん問題ないのですよ!』


「クスクスクス…。連れてってあげましょうよ。ラーメラちゃんはもう立派な仲間よ」


『仕方ないのう。ラーメラ、お主エヴァリーナと従魔契約を結ぶがよい。それが条件じゃ』

『はいはーい。でも、どうせ結ぶならマーガレットがいいなっ!』

『なぜじゃ?』

『なんか、マーガレットの方が気が合うっていうか…よくわかんないですけど、マーガレットと従魔契約を結びたいです!』


「あら、嬉しい。私なら喜んで」

『わーい!』

『仕方ないのう。ま、エヴァリーナにはレオンハルトがいるから良しとするか』


 エドモンズ三世によってマーガレットと従魔契約を結んだラーメラは嬉しそうだ。エヴァリーナは全員手を繋ぎなおしたのを見て転移の腕輪に魔力を通した。腕輪が魔力に反応し、床に大きな魔法陣が浮かび上がる。


「脱出!」


 その瞬間、魔法陣が大きく光輝き、全員の姿は一瞬で消えた。

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