第435話 激熱! 脱衣ジャン拳!!
「なん…だと」
「脱衣…って、服を脱ぐ脱衣か?」
『いかにも。儂の指定する勝負とは「脱衣ジャン拳」だと言ったのだ』
マキシマムのサシ勝負方法にメンバー全員騒めく。「脱衣」の言葉に漢は敏感に反応し、女はイヤな予感でいっぱいになる。そんなメンバーを見たマキシマムはニヤリと満足げな笑みを浮かべると…、
『儂を倒したところで先には進めぬ。最下層に続く通路は特殊な結界で守られている。これを解除する方法は儂しかできぬからな』
「と、言うことはお前の勝負を受けるしかないってことか…」
『左様』
『貴様、確か「拳王」と抜かしたな。もしかして、拳王の拳は、ジャン拳の「拳」か?』
『いかにも。楽しみの中の真剣勝負…。それが儂のモットーよ』
「バトルじゃねーのかよ!?」
「脱衣ジャン拳…。脱衣か…」
ミュラーはマキシマムに軽蔑の眼差しを向ける女性陣の顔を見て色々と考えた。次いでレドモンドとエドワードを見ると「何を考えているかわかる」といった表情で頷く。ミュラーも頷き返すとマキシマムに向き合った。
「よし、その勝負、このオレが引き受けよう!」
その瞬間、ユウキたち女性陣から「いいぞー」「頑張れー」「チンチン見せろー」とホッとしたようで嬉しそうな声が飛ぶ。しかし…、
『バカ者! なぜ儂が男と脱衣勝負をせねばならぬのだ! 男2人が脱ぎ合ったところで喜ぶのはBL腐女子だけだ。胸毛すね毛を見せあったところで、面白くも何ともないわ! 儂の相手は女子限定!「限定脱衣ジャン拳」じゃい!!』
「く…くそ。オレじゃ役に立たねえってのかよ。(よし! 想定通りだ)」
ミュラーは心底がっかりした風に項垂れたが、漢たちに向かって小さくガッツポーズをして見せた。ヴォルフ始め護衛騎士たちからミュラーの演技と女子限定脱衣ジャン拳という言質に盛大に拍手が沸き起こる。
「サイテーだね。ったく」
『何とでも言うがよい。「女子限定脱衣ジャン拳」に勝たねば先へは進めぬぞ。ただ、儂は「拳王」簡単に勝てると思うな。と、言う訳で、栄誉ある対戦相手を決めようか』
「対戦相手か。ポポ、よろしく」
「絶対イヤなのです」
『ここに5本のくじがある。先が赤く塗られたものが「当たり」。儂と対戦できる栄誉が与えられる。さあ、引くがよい』
「5本ということは、私も入っているのね」(アンネマリー)
「確率は5分の1、20%か。微妙に高い…」(ユウキ)
「私はくじで末等以外当てたことがないんだが」(アンジェリカ)
「わたくし、運値はどうだったかしら…」
「ウンチ? ラピスは脱糞したいのですか?」
「違うわよ!!」
『どうした。早く引かぬか』
女性陣は誰も先に引こうとしないで、もじもじとするばかり。結局話し合って「せーの」で一斉に引くことにした。思い思いにくじを持ち、目を瞑って全員で掛け声をかけた。
『せーの!!』
「あ、私はハズレだ」
「わたくしも!」
「ポポもなのです」
「あら、私もだわ。残念」
アンジェリカ以下、ハズレくじを持った者と、ミュラー以下漢たちの視線が20%の賭けに負けた敗北者に集中する。その敗北者は当たりくじを見つめて呆然と立ち竦んでいた。漢たちは「ウォオオオーーッ!」と神殿ホールに響き渡る歓声(雄叫び?)を上げ、ユウキを囲んで手が真っ赤になるまで拍手をする。見るとマキシマムまで「よっしゃ!」とガッツポーズを取って拍手をしていた。しかし、当のユウキは早くも襲い来る羞恥心でプルプルと震えるのであった。
(わたし、エロの運命から逃れられないの!?)
ユウキの心の慟哭が空しく木霊し、耳には漢たちの歓喜の拍手がいつまでも鳴り響くのであった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
いつの間にか神殿の前に高さ1mの台に載せられた直径5mほどの円形特設リングが出来ており、拳王マキシマムとエロ天使ユウキが対峙している。リング下最前列にはミュラー始め漢たちが陣取って歓声を上げ、その漢たちにラピスやポポが軽蔑の眼差しを向けている。
「しかし、帝国第1皇子は自由な人だなあ」
「皇子って偉そうで尊大なイメージがあるけど、彼はそんなところが全然ないわね」
「ああ、そうだな…。(ジュリアス殿下も万人にお優しい方だった。今頃クラリスと幸せにしているのだろうか…)」
先頭になって騒ぐミュラーに、アンジェリカはもう想いも届かないジュリアスを重ね合わせた。ふと、アンネマリーを見ると何故だか少し悲しそうな表情をしている。アンジェリカは「?」となって声をかけようとしたが、マキシマムの声が聞こえたのでそちらに気が行ってしまった。
『それでは、ルールについて説明する』
『ルールは単純。最初はグー、次いでジャン拳により勝敗をつける』
『負けた方が1枚ずつ着衣を脱ぎ、先に全裸になった方が負けだ』
「ウォオオオオオーーーッ!!」
漢たちの雄叫びが再びホールに木霊する。
『なお、靴下は2足で1着とみなす。ペア着衣も同様。よいな』
「わかったよ」
『よし! 最初の勝負だ。最初はグー!』
「絶対に負けない! アイツらにわたしの裸を見せてなるものか。ジャーンケーン…」
『ポン!』
『グー』
「チョキ」
ホールに割れんばかりの歓声が響く。ユウキは悔しそうな表情のまま、髪のリボンをしゅるりと外し、リングに落とした。
『フフ…、そう来たか。続けていくぞ』
『最初はグー!』
「ジャーンケーン…」
『ポン』
『チョキ!』
「パー…。なぜ!?」
今度は首に巻いた親愛のチョーカーを外した。リング下からブーイングが沸き起こる。
「うるさい!」
『ハーッハハハハ! 拳王の名は伊達ではないぞ』
「負けないから! 最初はグー」
『ジャーンケーン、ポン!』
「チョキ」
『パー。あれ?』
「よし! まずは1勝」
「いいぞー、ユウキーッ」
「頑張るのです!」
最初の勝ちを得たユウキにアンジェリカやポポが声援を送る。一方、漢たちは…。
「マキシマム! 情けねえぞ!」
「気合が足らん! 精神注入棒で根性を入れてやる!」
「ブッ殺すぞ、テメェ。ユウキ殿の乳とケツを俺たちに拝ませんかい!」
『ラピスちゃんの素っ裸が見たいぞ!』
いつの間にか、目を血走らせてマキシマムを応援していたのだった。兄たちの情けない姿にラピスが非難の声を上げる。
「ちょっと、兄様! どっちの味方なのよ!」
『マキシマム!!』
「こ、こいつら…」
『さあ、勝負はこれからだ!』
「絶対に負けない!」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「ぜえ、ぜえ、ぜえ…」
『はあ、はあ、はあ…』
『フフフ…、中々やるな。だが、もう儂の勝ちは決まったようなものだ』
「まだよ。まだ負けたわけじゃないから」
『だが、お前の着衣はあと1枚!』
「アンタだって似たようなモンでしょ!」
死闘は続き、すでにユウキの着衣は薄いライムグリーンの紐パン1枚。ブラを失った大きなお胸を左腕で隠し、右手で額の汗を拭う。一方のマキシマムは白のランニングシャツと白のブリーフ。ブリーフの前がモッコリしているのが生々しい。
ユウキは深呼吸して息を整え、リング下を見た。アンジェリカやポポ、ラピスが心配そうに見つめている。視線をずらすと、ユウキのでっかいブラを頭にかぶったミュラーが大声で叫び、レドモンドとエドワードはかぶりつくようにリング下ギリギリからユウキの尻のラインを舐める様に見上げている。ヴォルフもまたユウキの靴下を手に取って、クンクンと匂いを嗅ぎ、恍惚の表情を浮かべていた。ユウキはマキシマムよりミュラーたちに対しての怒りが増す。
「ユウキちゃーん、左腕、左腕がじゃまだぁーっ! おっぱい見せてーっ」
「ミュラー、後で殺す!!」
「うひょーっ、そのジト目最高ーっ」
「ラピス姫、あれが君のお兄さんだぞ」
「情けなくて涙が出ちゃう。女の子だモン」
「レグルスの爪の垢でも飲ませたいのです」
漢たちの狂態に女子たちは完全にドン引きし、軽蔑の視線を送るが、漢たちはユウキの裸体に夢中で誰も気づかない。アンジェリカとラピスはため息しかでないのであった。
「アイツらはもう駄目だ。なら、私たちに出来ることは唯一つ、精一杯ユウキを応援することだけだ」
「そうね。アンジェのいう通りだわ」
『ユウキーーッ。頑張れーっ!!』
『さあ勝負だ。ユウキとやら』
「絶対に勝つ。わたしは、わたしの直感に賭ける!」
『最初はグー』
「ジャーンケーン…、見えた! ポン!」
『グー』
「パー。よし!」
『くッ…やるな』
マキシマムはランニングシャツを脱ぎ捨てた。これでお互いパンツ1枚同士。次で勝負が決まる。ユウキとマキシマム、2人の間に鋭い緊張が走る。ユウキの体が汗でうっすらと上気し、肌が桜色になって輝く。また、紐パンが汗でぴったりと肌に張り付き、美しいヒップラインをくっきりと浮かび上がらせ、ミュラー始め漢たちの視線を釘付けにする。
内股になって大事な部分を見せないように隠し、フリーの右手を背中に回したユウキは、次の手をどうするか考えていた。マキシマムは悠然と腕組みをしてユウキを見下すようにみつめている。
(もう、恥ずかしくて死にそう。でも負けたらもっと恥ずかしい目に…。絶対に勝つよ、先に進むためにも。えっと、マキシマムは3連続グーで来た。なら次は…? チョキかパーが順当だけどどっちなの? でも意表をついてグーもありうる…ここはグーを出すと読んだ!)
『さあ、決着をつけようぞ。フフフ、敗者は全裸のまま万歳三唱をするのだ。貴様の乳と股をじっくり堪能してやるぞ』
「ウォオオオーーッ! マキシマム、絶対に負けるんじゃねぇぞーッ!」
「ユウキ殿ーッ、貴女の乳首は何色だァーッ!!」
「ユウキ殿ーッ、貴女のアソコの締まりはどうですかぁーッ」
「こ、このエロ助ども…。終わったら見てなさいよ…」
『フハハハハハ! 漢という生き物は正直よ。さあ、行くぞ!!』
「来い。マキシマム!」
『ジャーンケーン…、ポン!』
『パー』
「パー。ってハズレ!?」
『あいこでポン!』→引き分け
「ポン!」→引き分け
『ポン』「ポン」『ポン』「ポン」『ポン』「ポン」…
「ぜえ、ぜえ、ぜえ…」
『はあ、はあ、はあ…』
12回連続であいこが続き…、
「これで決める! あいこで…」
『こっちのセリフだ! ポン!』
「グー!」
『グー!』
「くそ、きりがない」
13回目もあいことなった。ユウキの体が汗で上気してしっとりしてくる。唯一残ったビキニパンツが汗を吸って濡れ、割れ目のラインをくっきりと浮かび上がらせた。先ほどまで絶叫し、リングをバンバン叩いて騒いでいた漢たちは急に静まり返った。不審に思ったアンジェリカとラピスが漢たちの前に回ってみると、山のようにいきり立たせた股間を苦しそうに押さえている。自分たちのために恥ずかしい思いまでして戦っている大切な友に節操もなく欲情したケダモノ共に、アンジェリカの怒りのブリザードが襲い掛かった。
「この不埒者ども! 天誅!!」
「わーっ! だって、エロいんだモーン!!」
アソコをいきり立たせたままカチンコチンに凍った男たち。しかし、漢たちの滾るドスケベ心は熱く、アンジェリカのマジックアイテムで増強された魔法をも上回った。その熱い想いとギンギンに勃ったイチモツは、あっという間に体の氷を溶かして復活し、アンジェリカの腰を砕けさせた。。
「ふっかーつ! ウォオオオオッ! ユウキちゃーん、あと1枚、あと1枚を脱いでくれーっ!」(ミュラー)
「マキシマム、拳王を名乗るなら勝て、勝つんだーっ。そして乳を、偉大なる乳を俺たちに拝ませてくれぇええええっ!」(レドモンド&エドワード)
『おっぱい、おっぱい、ふぉおおおおっ!』
「こ、こいつら…。バケモノか…」(アンジェ)
リング下の狂騒もこの2人は気づかない。羞恥心を賭けた1本勝負。ついに決着を付ける時が来た。
『さて、このままではキリがない。次が最後の勝負としようではないか』
「望むところよ。早く終わりにして服を着るんだから」
『勝負は1度きり。あいこもお前の負けとする。勝つ確率は3分の1。どうする?』
「…いいよ」
『ククク…、貴様の運命が見える…。「全裸M字開脚」という運命がな!』
「自分こそ、その貧相なイチモツをさらけ出して恥をかかないようにね!」
『行くぞ、巨乳娘!!』
「来い、エロ拳王!!」
『さぁーいしょはグーッ!』
(確率は3分の1。ヤツが一番多く出したのはグー。常套ならパーで勝負。しかし、それを読んでチョキで来るかもしれない。ここはグーで勝負か…)
「じゃーん、けーん…」
拳王マキシマムが大きく振りかぶった。ユウキは右手を後ろ手に構える。勝負の時は来た!
『ポン!』
静まり返る神殿フロア。2人の戦士は勝負手を出したまま微動だにしない。そして2人の勝負手は、
マキシマムは「パー」
ユウキは「チョキ」
『ま…、負けた』
「やった…。やった、やった! 勝ったよ勝ったーー!!」
勝負の女神は、最後にユウキに微笑んだのであった。




