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第432話 大天使アリエル

 一方、第10ダンジョンを進むラインハルトたちラファール組は、巨大な六角柱状のクリスタルが林立するフロアで出会った「大天使アリエル」と名乗る美少女の攻撃を受けていた。アリエルは魔力の翼を展開し、フロアの天井高く飛び上がり、ラインハルトたちの攻撃範囲外からの遠距離攻撃を仕掛けてくるため、防戦一方となっていた。唯一対抗できそうなのはメイメイとパールヴァティだが、2人は天使が持つ退魔力によって、体の動きを封じられている。


 アリエルの攻撃をラインハルトにサラ、ルツミの3人で防壁魔法を多重に掛けて防ぐものの、圧倒的な魔力パワーによって、都度粉砕され新たに掛け直すことの繰り返しをしている。その間にリザードを背に乗せたポチがクリスタルを足場にしてジャンプし、アリエルに接近しようとするが、あっさりと躱され…、


『ヘブンズ・バースト』


 掌から光系爆発魔法を放って迎撃してきた。リザードが氷系防壁魔法を展開し、直撃はかろうじて防いだが、強烈な爆圧によって地面に叩きつけられ、悲鳴を上げながら転がる。


「マズいな…。防戦一方で反撃の手がない」

「このままでは魔力切れになってしまいます。そうなったら…」

「でも王子、サラ様、攻撃魔法は全て躱され、頼みの綱のメイメイとパールがあの通りでは…」


 アリエルの攻撃を耐えながら、天使の退魔力によって地面に這いつくばっているメイメイたちを見る。あの無敵を誇ったアークデーモンのメイメイが、無様に地面に這いつくばる姿に、対悪魔用に生み出された天使のパワーに畏怖の念を抱くのだった。


「メイメイ、しっかりして!」

『く、くそが…、体が動かねえ』


「どうしたらいいのかしら…」

『あぶねぇ!』

「きゃっ…」


 アルヘナ目がけて光弾が飛んできた。メイメイはアルヘナを抱きかかえてゴロゴロと転がる。直後にアルヘナが今までいた場所に光弾が直撃し、爆発によって飛ばされた小石やクリスタルの破片がパラパラと降りかかってきた。再び上空から攻撃を加えようとするアリエルに、ポチとリザードがジャンプして飛び掛かり、躱した所にサラやルツミの攻撃魔法が飛んできて、メイメイたちへの攻撃が中断された。悔しそうな表情をするアリエル。


『アルヘナちゃん、下がってろ。ヤツは悪魔を敵視している。ここにいると危ない』

「で、でも…」

『頼む、下がっててくれ』

「わかった。メイメイちゃんは強いもんね。私、信じてるから、頑張って!」


 アルヘナは戦闘の範囲外に下がっていった。それからメイメイは四つん這いのままパールヴァティの側に行き、声をかけた。


『おい、パール。生きてるなら返事しろ』

『くっ…、馴れ馴れしくあたしの名を呼ぶな…』

『クソ生意気な口聞けるなら大丈夫だな。動けるか』

『何とか…ね。大分プレッシャーに体が慣れてきた』


『よし。いいか、今からオレ様の言う通りにしろ』

『なんでアンタの言う事聞かなきゃなんないのよ。イヤよ』

『聞かなくてもいいが、このままじゃあの天使野郎に全滅させられるぞ。アルヘナ兄ちゃんも殺されるな』

『はぁ! そんな事はさせない!!』

『なら、オレ様の話を聞け』


 不承不承といった感じで頷くと、パールはずりずりと近づいて来た。メイメイはパールの耳に口を寄せて、自分の案を話すのであった。


 ◇  ◇  ◇  ◇  ◇


「ひいひい…」

『はあはあ…、はひ…』

「大丈夫? 2人とも」


 メイメイとパールの最強コンビが無力化され、ラインハルトたちとポチ、リザードが大天使アリエルと激しいバトルを繰り広げている中、運動音痴で胸とお尻が重いクリスタ、胸と尻は軽いが運動神経0のアンゼリッテは中々クリスタルの林を乗り越えられず悪戦苦闘していて面倒見の良いカストルは2人の手助けをしていた。


「カストル君、申し訳ないけど、お…、お尻押してくれない」

「は、はい。クリスタ先輩。いいのかな…。でも、押してって言ってるし」


 クリスタルに手をかけ、なんとか大きなお胸をクリスタルの上面に載せたものの、お尻を上げるのに苦労しているクリスタは、カストルにお尻を押すようにお願いしてきた。一瞬躊躇したものの、ぐっとスカートの上からお尻を押した。女性特有の柔らかい感触にドキッとする。


「あん♡ ゆ、指…。カストル君、指が大事な所…に。ひゃあん♡」

「わ、わわわ、すみません!」

『カストル様…。ワザとじゃないでしょうね。もう、私ならいつでも触らせてあげるのに』


 ヤキモチを焼いてムスっとするアンゼリッテの嫉妬の視線を浴びながら、なんとかクリスタルの上面にクリスタを上げたカストルは、次に下に手を伸ばし、アンゼリッテを引き上げた。


「ふう、もう少しで皆に追い付けそうですね」

「ねえ、前方変じゃない? 戦いが起こってるみたいよ」

『あっ! アレ見てください!』


 アンゼリッテが指さした先を見ると、半透明の翼を展開した白いドレスを着た少女が、地面に向かって光弾を連続で放っていた。位置的にカストルたちからは見えないが、爆発音も連続で聞こえてくる。


「何だあれは…?」

「戦いが起こってるみたいね…」


 呆然と少女を見上げるカストルとクリスタ。我に返ったアンゼリッテがカストルに声を言かけた。


『カストル様、急ぎましょう! 怪我をした仲間がいるかもです』

「あ、ああ! クリスタ先輩!」

「うん!」


 カストルはクリスタの手を取ると、アンゼリッテとともに仲間たちが戦っているだろう場所に向かって駆け出した。


 ◇  ◇  ◇  ◇  ◇


「お兄ちゃん!」

「アルヘナ! 一体何が起こったんだ!」

「お兄ちゃん、危ない、逃げてー!」

 

『今度はなに? こいつらの仲間?』


 クリスタルの上を駆けて来た3人を視界に収めたアリエル。見ると人間が2人にアンデッドと同じ波動を示す女が1人。アンデッドとそれを引き連れる人間を敵と認知したアリエルは両手に持った剣をクロスさせ、その結合点から光のビームをアンデッドの女目がけて発射した。


『ヘブンズ・レイ』


「アンゼリッテ、避けて!」

『へ…?』

「アンゼリッテーー!!」


 超高熱のビームがアンゼリッテの薄い胸を貫いた! ビックリまなこで貫かれた胸を見て手を当てる。そして声を上げるカストルの顔を見た瞬間、高熱によって一気に全身が燃え上がり、瞬く間に灰になった。


『終り。次はあの人間…えっ!』


 アンゼリッテの灰が青白い炎となって燃え上がり、その中から元の姿で復活したアンゼリッテが現れた。


『ビックリした~。一体何が起こったの?』

「アンゼリッテちゃん、服、服」


 突然の事に呆然とするアンゼリッテ。その彼女にクリスタが指差しし、カストルは顔を赤くしてそっぽを向いている。「?」となりながら自分の体を見ると、服までは復活していなかったらしく、全裸のスッポンポンだった。


『うわぉ~う!』


 右腕で胸を、左手で股を隠し、片膝を上げてまいっちんぐポーズをとるアンゼリッテだった。苦笑いするクリスタは視界の先に、ポチと一緒に倒れているリザードを見つけた。


「あっ! リザードが…」


『く…っ。何で…』


 悔し気に顔を歪ませるアリエルは、再度アンゼリッテを攻撃しようとしたが、人間の女がリザードマンに向かって駆け出したの見て、今度はこっちを攻撃しようと決めた。人間なら倒せば終り。復活することはない。目標をアンゼリッテからクリスタに替えた事にカストルは気づいたが、クリスタは気づいていない。


(まずいっ!)


『死ね、ヘブンズ・バースト』


 クリスタルの上から飛び降りようとしているクリスタ目がけて高威力の光弾が迫った。やっと自分の危機に気づいたクリスタだったが、もう遅い。高速で自分目がけて飛んでくる光弾に死を覚悟した。


「クリスタ先輩!」

「きゃっ!」


 直撃の寸前、カストルがクリスタを抱きかかえて横っ飛びに飛んで光弾を避けた。目標を失った光弾はクリスタルに当たって爆発した。カストルはクリスタを抱えたまま爆風に吹き飛ばされ、別のクリスタルの柱に激突した。痛みで呻く2人の上にキラキラと破壊されたクリスタルの破片が降り注ぐ。アンゼリッテも爆発に巻き込まれ、木っ端みじんになったが、直ぐに復活して主を探した。そしてクリスタと一緒に倒れているカストルを見つけた。


『きゃあああっ! カストル様ぁーっ!』

「お、お兄ちゃーん!!」


 アンゼリッテとアルヘナの甲高い悲鳴によって爆風の衝撃で気を失っていたクリスタは気が付いた。見ると服はあちこち斬り裂かれ、大きなブラに包まれた胸も丸出しになっているが、怪我は無く、痛みもない。その理由は直ぐにわかった。カストルが盾になってクリスタを守ってくれていたからだった。そのカストルは青い顔をしてぐったりとしている。


「ヤ、ヤダ…。カストル君しっかりして!」


 クリスタがカストルを抱き起こすと背中に回した手に「ぬるっ」とした感触が伝わった。

その手を見ると真っ赤に染まっている。クリスタは慌ててカストルの背中を見ると、背中にクリスタルの鋭い破片がいくつも突き刺さり、傷口から血がどくどくと流れている。


「き、きゃああああっ! カストル君、しっかりして、目を開けて、カストルくーん!!」

「お兄ちゃん! お兄ちゃん! 死んじゃ、死んじゃイヤーっ!!」

『死なせません。絶対に!』


 アンゼリッテはクリスタにカストルを自分に背中を向けさせて支えるように言うと、突き刺さっているクリスタルを抜いた。もう痛みも感じないのかカストルは微動だにしない。アルヘナはぼろぼろと涙を流しながら兄の手を握っている。アンゼリッテは両手を背中に当てて治癒の力を発動させた。魔力の高まりにアンゼリッテの体(全裸)が淡い緑色に輝き、魔力がカストルに注がれ、やがて少しずつ傷口が塞がっていく。クリスタはギュッとカストルを抱き締め、「生きて」と願う。


『何あれ。何してるの? アンデッドとそれを従える人間…ムカつく。それにあれ、暗黒魔法だ。再生の力なんか使って…生意気』


『全員まとめて吹き飛ばす。シャイン・バース…』


『そうはいかないわ!』

『な…っ』


 カストルたちを攻撃しようとしたアリエルの不意を突いて、飛び上がって来たパールヴァティがブラッドソードを構えて飛び掛かった。

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