第43話 浜辺の女神とつるつる温泉
「さあ、やってきました臨海学校。美しい海! 白い砂浜! 雲ひとつない青空! そして、眩しい浜辺の天使たち!」
「男どもよ、美少女たちの水着姿を拝みなさい!」
「カロリーナのテンションは相変わらず変だね。でも確かに水着は可愛いわ」
ララが一人で騒ぐカロリーナを見ながら、水着の感想を言う。
カロリーナは白地に青いチェック柄のフリルが付いたスカートタイプのワンピース。胸の部分には大きなリボンが付いて、かわいくまとめてある。
一方、ララは深緑色の首からわきの下を大きく回って背中が開いているワンピースで、首回りにフリルが付いて、とても良く似合っている。
「どうよ、男ども」
カロリーナは自慢の水着をクラスメイトに見せびらかすが、「ああ」、「うんかわいいよ」とか今ひとつな反応にがっかりする。
それに対してララはアルに褒められて、とても嬉しそうだ。顔を赤くしてはしゃいでいる。
「ララめ…。ここに来てまでイチャイチャしやがって…」
カロリーナのつぶやきに、クラスの男子も同じ思いなのか、全員から暗黒闘気が溢れ出している。
「まあ、カロリーナさん。暗黒面がむき出しですわよ」
着替え終わったフィーアがやってきた。クラスの男子から「おお!」と、大きなどよめきが上がる。
フィーアの水着は、なんの飾り気もないが、かえって清純さを輝かせた白のビキニ。フィーアの美しい金髪が水着に良く似合い、水着も肢体の美しさを引き出している。
「さすがフィーア。しかし…」
カロリーナがそうつぶやいた時、浜辺にいる男子どもが、ざわ…ざわざわ...ざわと一斉に騒めいた。
「来た。やつらがついに来た。学園のサッキュバス。エロスの化身たちが…」
まずユーリカがやってきた。
ユーリカはホルターネックというタイプの黒ビキニ。トップは90cmを超える巨大なバストを優しく包み、それでいて溢れんばかりの大きさ、重量感をこれでもかというように主張させている。男たちはその迫力に声も出ないほど圧倒される。また、パンツの上にパレオを巻いているが、かえって大人の色香を醸し出している。
ユーリカの後に続いて、ユウキが恥ずかしそうに顔を赤くしながらやってきた。獣どものボルテージは最高潮だ。黒髪の美少女がどんな水着で来るのか。脳内をエロに支配された獣どもは、期待(股間)限界まで膨らませ、それは裏切られなかった。
ユウキはレモンイエローの生地に濃いブルーの縁が入ったかわいいトライアングルビキニ。正三角形のトップはユウキのたわわな胸にぴったりフィットし、歩くたびに揺れる巨乳が男たちの目を釘付けにする。また、パンツも布の部分がやや少なめ。脇の部分を紐で結ぶタイプで、超絶にセクシーだ。
(ま、マヤさん~。2人で選んだときはもっと大人しい水着だったのに、いつの間に入れ替えたの~。き、際どくて、は、恥ずかし~)
「うおおおおおおおおーーッ!!」
「素晴らしい!」
「神だ!女神が降臨された!」
「あの胸に抱かれてもみくちゃにされたい!」
獣どもの雄叫びと欲望全開の叫びが浜辺を支配し、2人の女神の前にひれ伏し、何度も何度も巨乳を拝み倒す。
「オマエら、恥ずかしいから止めんか! こっちにも天使がいるでしょ。こっちも見ろ!」
カロリーナの言葉は成熟した女体の虜になった獣
には届かない。他の女子生徒は軽蔑の眼差しで男たちを冷たく見つめている。
「あ、アルは私だけを見てればいいからね!」
ララはアルの目を両手で塞ぐことしかできなかった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「いや、凄まじかったわね。さすが学園のサッキュバス。乳牛」
「いやなあだ名付けないで! マヤさんに諮られた~。もう恥ずかしいったら…」
ララとアルは2人で遊んでいるので、ユウキたち4人は、腰までの深さのところで水をかけあって遊んでいる。
「いや、この3人といると、疎外感が半端ないわ。貧乳仲間のララはアルとどっか行っちゃったし。悲しい…」
「しかし、2人の乳力は凄まじいですね。仮にも侯爵令嬢の私がですよ、あっという間に忘却の彼方に置いて行かれたんですからね」
「乳力って…。また、新しい単語が出てきましたね」
ユーリカが感心したように言う。
「えい! 乳のお化けを退治してやる! えい! それ!」
「わあ、やったなカロリーナ! お返しだ、それ!」
美少女4人がきゃあきゃあ言いながら、水をかけあっている。それを遠巻きに見ていたクラスメイトの男子生徒達は、「あそこはパラダイスか…」と羨ましそうに見る。その時、大きな波が4人を襲うのが見えた。
「わっぷ…。ビックリしましたね、皆さん大丈夫ですか?」
「ふあ、私は大丈夫だよ」
「わ、私もです」
フィーアの声にカロリーナとユーリカが返事する。
「ユウキさん?」
「ユウキ?」
固まっていたユウキが突然悲鳴を上げた。
「きゃあああああああ! ボ、ボクの水着が…、水着が流されちゃったぁ。ど、どこ? ボクの水着、どこ行っちゃったのぉ」
強烈な波の一撃でビキニのトップが外れて流されてしまったらしい。ユウキは両手で胸を隠して涙目だ。
「わあ大変! えーと、どこに流されたんだろう」
「さすがユウキさん。お約束は外しませんね。フィーア感服です!」
「あっ! あそこでです」
ユーリカが指さした先に流された水着が浮かんでいた。100mほど先まで流されている。
「よし、私取ってくる!」
そう言って泳ぎだそうとしたカロリーナの目の前を、水しぶきを高々と上げながら男たちが凄まじい速さでユウキの水着に向かっていくのが見えた。その光景は正に獲物に群がり、貪りつくすピラニアの軍団! 男たちは今、獲物(水着)を狙う獰猛な獣と化したのだ。
「うおおお! 引け引けぃい皆の衆! あの水着は俺様のものだああ」
「俺だああ! 水着を渡して、はにかむユウキちゃんからハグしてもらうんだああ!」
「あの栄光(水着)をつかむのは俺だ! 唸れ、我がグローリーハンドッ!」
「ユウキちゃんの水着で股間を包たい!」
「あのみじゅぎを手に入れるまでは、退かぬ!媚びぬ!省みぬううう!」
「死して屍、拾う者無し!」
獣たちは目を血走らせ、水しぶきを上げてユウキの水着に殺到する。
「い、いやああああああ!」
男たちの狂宴にユウキは泣き出す。ユウキの涙を見て、獣どものボルテージがMAXになる。
「ボクの…、ボクの水着ぃいいい!」
「はい。取ってきたよ」
「ふえ、カ、カロリーナ」
「あいつらが暴れたおかげで、水着がこっちに流れてきたの。早く着けて、ホラ!」
ユウキが首まで海に浸かり、水着を着る。
「た、助かった~。ありがとうカロリーナぁ。良かったぁ」
「良かったですね。そろそろ上がりましょう」
ユウキたちが帰った後も男たちの戦いは果てしなく続いていた…。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「お風呂に行きましょう。この施設は温泉を引いているそうですよ。しょっぱくてお肌がつるつるになるとの話です。つるつる温泉楽しそうです」
夕食後、フィーアが楽しそうに誘ってきた。ユウキは「後から入る」と断ったが、結局連れてこられ、結局皆と入ることになった。
脱衣場で服を脱いで、胸から下をタオルで隠し、ユウキがおずおずと浴場に入って来ると、カロリーナが「なに恥ずかしがってんのよ! 女同士でしょ」と言って、タオルを強引にはぎとった。
「きゃあっ」
ユウキがかわいい悲鳴をあげた。皆がユウキの股間に注目する。
「つるつるだ…」
「つるつるね…」
「か、かわいい」
「ふ、ふえええん。だって、だってマヤさんの作った下着を付ける時、つるつるの方がしっとりしてていいんだもん。」
「ユウキさんは、温泉に入る前から、お肌もあそこもつるつるでしたね!」
「うまいっ! フィーアさん。ユーリカ感動です。」
「ホント、ユウキって楽しませてくれるわ~。」
カロリーナは、感心したようにしみじみ言うのであった。
温泉は、体が温まって気持ちよく、それだけがユウキの救いであった。ただ、温泉の浮力でぷかぷかしているユーリカのおっぱいを見るカロリーナの視線が怖かった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
マルムトは臨海学校に参加せず、学園の寮でひとり考え込んでいた。
「マクシミリアンのヤツ。ゴブリンとの戦闘で醜態を晒すと思ったが、うまく切り抜けやがって。くそ…」
「まあいい。俺に賛同する仲間を増やすことができた。一応、今回の目的は達せられたから良しとしよう。だが、まだまだ仲間が足りない。次の手に移るか…」
「そういえば、ネズミが1人いたな。まあ、せいぜい嗅ぎまわるがいいさ。ふふふ」
宿泊施設の貴族専用室いたクレスケンス・フォンスはすこぶる不機嫌であった。
ユウキを手に入れるチャンスがない。スラムの手駒は壊滅した。フレッドが顔を出さない。何もかも上手くいかない。それに、最近、悪夢を見るようになった。ミイラのような怪物に襲われる夢だ。その夢を見るたびに夜中に何度も飛び起きる羽目になり、疲労が蓄積している。
「くそっ! なんだってんだ! これも全部アイツのせいだ、ユウキを、あの女さえ手に入れれば上手くいくんだ! あの女さえ…。徹底的に調教してやる」
狂気を身に纏い、クレスケンは自ら動き始じめた。