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第42話 ユウキと期末試験

 王家の一室で国王マグナスが執事長のギルバートから報告を受けている。


「娘のからの報告では、マルムト様は野外訓練で一緒になった貴族や成績優秀者を集めて、現王政打倒、新たな体制の構築とゆくゆくは大陸に覇を唱えたいという自分の想いを打ち明けたそうです。そのためには、自分と志を同じくする仲間を、友人を増やしたいと」


「……こんなに早く野心をむき出しにするとはな。予想外だ」

「ええ、マルムト様は野心家ですが同時に慎重なお方。急いでことを成すより、準備に時間をかけ、その時が来るのをじっと待つおつもりのようです。だから、早いうちから仲間集めを始めたのではないでしょうか。実際、集めた彼らにもそのように話していたとか」


「うむ…」


「学園に通う貴族の子弟や成績優秀者は、いずれ王国の主要な役職に就くでしょう。その時が最大のチャンスと考えているのではないでしょうか」


「恐らくそうであろうな。今できることはマルムトの動向を探りつつ、ヤツの考えに同調したものが政府の重要な部署に就くのを妨げることだけだ」


「はっ、これは娘が確認した同調者の名簿です」

「うむ。引き続き監視を頼むぞ」

「はっ!」


「それと、マクシミリアン様ですが…」

「ああ、仲間たちとゴブリンキング率いる群れに立ち向かったそうだな。あの、戦いを逃げていたマクシミリアンがな…。しかも王家だけに伝わる、真の王だけが持つといわれる力が発現したとか」


「はい。また、1人でホブゴブリン5体を切り伏せたそうです。何の心境の変化があったのかわかりませんが、事実です」

「うむ、余は嬉しく思う。これで次期継承の道も開くであろう。人間的な成長か…。その仲間たちに一度会いたいものだな」


「はっ、手配するといたしましょう」


 ◇  ◇  ◇  ◇  ◇


 ユウキがユーリカの件について、ダスティンに相談したら、「今更1人増えても同じだ」と言って、2階の物置に使っていた部屋を貸してくれた。ユウキたちはその部屋をきれいに片づけて、ユーリカを迎え入れた。


 暗黒魔法を使うというユウキの秘密を聞いたユーリカは、びっくりした顔をしたものの、何も言わずにユウキの手を握って笑顔を向けてくれた。また、女の子が増えたことで、ダスティンが風呂場を改築して広めのお風呂にしてくれた。ユウキがダスティンに抱き着いて感謝の言葉を述べた時、ダスティンは娘がいたらこんな感じなのかと、少し胸に来るものがあった。


 そして、期末試験が間近に迫った休日、ユウキは友人たちと図書館に来て勉強をしている。


「うむむ、文学や算術はともかく、歴史は難しすぎる…。全く覚えられない」


 ユウキが泣き言を言うと、ララやフィーア、ユーリカは「暗記しかない」と言って、ポイントを教えてくれる。


「プププ、ユウキ様は栄養がぜ~んぶ「お胸」に行ってるので、頭に回る分が足りないんじゃないですか~」

「むっ! 胸もないのに頭の栄養が足りない方に言われたくない」

「にゃんだとう、このでか乳女!」

「言ったわね、まな板娘!」

「ぐぬぬ…」


 睨み合うユウキとカロリーナに、フィーアは「まーた始まった」と呟く。


「ユウキ、勝負よ! 試験の結果が良かった方が、私たち全員にスイーツを奢る!」

「よし、その勝負受けて立つ!」


「カロリーナ、絶対負けてはだめよ!」

「貧乳が巨乳より優れていることを教え込んであげなさい!」


 ララがカロリーナを応援するが、フィーアとユーリカは(なんの戦いしてんのよ…、このおバカたちは)と呆れるしかなかった。


 試験が終わって数日後、結果発表の日がきた。ユウキたちは廊下に張り出された成績表の前にきて、自分の名前を探している。


「さあ、やってきました試験結果発表の日!」

「やたら、カロリーナが張り切っているのがうざい」


 ララが心底嫌そうに呟いた。


「うるさいわい。どれどれ…。フィーアは4位か、相変わらず凄いねえ。さすが貴族のお嬢様、頭の出来が違うわね。ユーリカとララも100番以内に入っているね」


「私とユウキはっと…」

「ん? おお、やった! 合計点数で1点差だけど、私が勝ったあ! 総合順位は113番と114番だけどね」


 カロリーナがちらと隣にいるユウキ見ると、呆然とした様子で掲示板を見て固まっている。カロリーナは、ユウキを肘で小突いてにま~っと笑った。


「おんやぁ、ユウキ様、どうされましたかぁ。木偶の坊のように立っていては通行の邪魔ですよお。ぷくく、やっぱりお胸に栄養を取られすぎたようですねぇ。ほ~っほほほ。あ~っはははは。今日は何て素晴らしい日なの!」


「な、なんて嫌味な女…、く、悔しい…」


 ユウキは涙目になって、カロリーナを睨みつけるが、カロリーナはどこ吹く風で、「スイーツごちそうさま~」とにこやかに言い、結局、ユウキはカロリーナ、ララ、フィーア、ユーリカにスイーツをごちそうする羽目になったのであった。


 ダスティンの武器屋に戻ってもカロリーナはユウキをからかっていてユーリカに「いい加減にしなさい」怒られた。



 夕食後の団欒の時間、臨海学校のしおりを開いて予定を確認することにした。


「来週だね、臨海学校。しおりによると、移動日を除いて、リーズリット近郊にある学園の宿泊施設に2泊するみたいだね。1日目は自由行動。海水浴か。2日目は課外学習と自由行動。夜にキャンプファイヤーだね。楽しそう」


「ふ~ん、意外と自由に遊ばせてくれるんですね」

「たぶん、ゴブリン退治した私たちの慰労もあるんじゃない?」

「ところで、みんなは水着どうするの? ボクはマヤさんが作ってくれるからいいけど」


「そういえば、ユウキの服や下着は全部マヤさんが作ってくれるんだってね。凄いね」

「じゃあ、私たちは、明日でも学園の帰り道に服屋さん寄ってみませんか」


 結局、ユウキを除く3人は、学園帰りに水着を買うことにしたのだった。

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