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第40話 ゴブリンとの戦い(後編)

 マクシミリアンの秘めたる力「カリスマ」によって力を取り戻したユウキ達がゴブリンとの最後の戦いに向かう。


「ぬおおおおっ! ゴブリンども、真のチャンピオンとは誰か教えてやろうぞ! オラオラオラァ! 俺の名をいってみろぉおおおおお!!!」


 ヘラクリッドが猛烈な勢いで1体のゴブリンチャンピオンにパンチを浴びせかける。たまらず後ろにたたらを踏んだチャンピオンに、ヘラクリッドの必殺技が炸裂する!


「ハァアアアーーー!行くぞ!ショルダアアアア・チャアアアジッ!」

 

 右肩に気を纏わせ、全力で巨体を叩きつける!この技にさしものゴブリンチャンピオンも全身の骨を砕かれ、内臓を潰されて盛大に血を吐き出して倒れた。


「ウラアアアアア! もう1体はどこだ!」

「こっちだ。いま土壁で囲んでいる。あまり長くは持たない。早く頼むよ!」

「おお、今行くぞ。わが友!」


「フィーア殿!右の5体は任せてくれ。左の5体を頼む!」

「(もうすっかり吹っ切れたようですわね)わかりました! お任せください」


 長剣を抜いたマクシミリアンに先ほどまでの弱気は見られない。もともと、小さい頃から騎士団に混じって剣技の訓練を受けているため、並の騎士よりも強いのだ。


「はあああ!」


 剣先をホブゴブリンの顔先に近づけ、意識を逸らしてから切りつける。ゴブリンは何が起こったかわからずに首を飛ばされた。もう2体が同時にこん棒を振り下ろしてくるが、剣と体捌きで躱すと、体を半回転させて、その勢いでゴブリンの胴を切り裂く。マクシミリアンは戦いを通じて少しずつ自信をつけて行った。


 フィーアは、この世界でも数少ない攻撃魔法の使い手だ。彼女が腕を振りかざす度に、強力な稲妻を纏った竜巻がゴブリンを襲い、体を切り刻んでいく。


「まだまだいけますわよ!それ、ウインド・ボルテッカー!!」

「むう、物足りないですね。骨のある敵はいませんの?」


 その時、全身に金属鎧を装着し、大型の戦斧バトルアックスを持ったホブゴブリンがニヤつきながらフィーアに近づいてきて、戦斧をフィーアの頭めがけて振り下ろした。大きく後ろに飛んで、一撃を躱したフィーアは、


「そう来なくっちゃ! よくも私のお友達をいたぶってくれましたね。さあ、行きますわよ!」   

 そう叫んで、腕に魔力を纏うのであった。


 ユウキは、ゴブリンキングと対峙している。力勝負では絶対にかなわない。魔法で片を付けるつもりだ。


「さあ、最後の戦いだ。キング! お前の相手はボクだ!」

『小娘が、お前に俺が倒せるか! ひねり潰してやる!』


(ゴブリンが喋った!)


『驚いたようだな、下等な奴らと俺様を一緒にするなよ。俺様はお前らよりも力も! 頭も! 全てにおいて優れているのだ。ハアッハッハッハア』


「何が全てよ。知性はどこかに置き忘れてきたようだね」


『ふん、ちびっこい小娘ごときに何ができる。いくぞ!』


 ゴブリンキングが長さ2mはありそうな曲剣を振り下ろしてきた。ユウキは魔法に集中しているため避けることができない。剣がユウキを引き裂こうとする直前、ガキインと大きな音がしてキングの剣がはじかれた。


『むお、何だ、何が起こった』

「へへ~ん。氷の防壁「アイス・フィールド」だよ。ユウキには指1本触れさせないんだから!」


 カロリーナは全ての魔力を使い、何重にも氷の壁を重ね合わせて強固な防御壁を作り出していた。

 

『ふんぬ!』


 キングは何度も力任せに防御壁に剣を叩きつけるが、カロリーナの全魔力が込められた壁を破ることができない。

(ユウキ、防御壁の持続時間はあまり長くないよ。急いでね。お願い!)


 ゴブリンキングは氷の防御壁を破るのをあきらめ、カロリーナを狙ってきた。


『術者を殺せば魔法は消える。まずはお前からだ!』

「へえ、よく気づいたじゃん。バカじゃないんだね。(マズイ…。全魔力を使ったから、体力が続かない。ユウキ、まだなの!)」


 魔法剣を構えたカロリーナに、ゴブリンキングが剣を振り下ろそうとしたその瞬間、キングの後ろから防御壁の気配が消えた。


「キング、こっちだ!」


 ゴブリンキングが振り向くと交差した腕に黒い炎を纏わせたユウキが睨みつけてきた。


『ほう、面白い技を使う。そんなもの怖くもなんともないわ! ぶち殺してやる!』

「ゴブリン、お前たちは自分の欲望のために人を殺す。ボクはお前らの仲間に大切な人を…、たった一人の姉を、大好きだった望お姉ちゃんを殺されたんだ。ボクはお前たちだけは絶対に許さない!」


『そんなこと、俺様が知ったことか! 死ね!』

「くらえ、超高熱の怒りの炎を!フレア!」


 黒い超高熱の塊がユウキの腕から放たれ、凄まじいスピードでキングに向かった。超高熱の塊に速度の威力が上乗せされ、摩擦熱でプラズマ化した空気が強大な衝撃派を発生させた。凄まじい爆発音が鳴り響き、キングは熱と衝撃波によって何も理解できないうちに粉々に粉砕され、塵となって四散した。


「す…、すごい…」


 カロリーナはユウキが放った魔法を見て、そう呟くのが精一杯だった。それほどまでにユウキの魔法、暗黒魔法の威力が凄まじかったから。

 ふと、ユウキをみると、キングが散った方向を見て立ち尽くしている。


 ユウキの周りに他のみんなが集まってきた。無事チャンピオンやホブゴブリンを片付けたらしい。カロリーナが見ると下流の営巣地に火が放たれ、盛大に燃えていた。


「あの煙が狼煙がわりになって、救助に来る大人たちも見つけやすくなるだろう」

 マクシミリアンが、燃え盛る営巣地を見て言った。


「ユウキ、どうしたの? 何か心配事?」

 カロリーナが気になって訊ねる。


「カロリーナ…。ボク、もう皆の側に居られない。秘密がバレてしまったからには、皆に迷惑がかかっちゃう。ここでサヨナラしようと思ってる」


「え、そんなことないよ。第一、どこに行くって言うのよ」


「王都にくる前に住んでた所。そこなら、誰にも迷惑がかからないから…」


「ダメよ、ダメダメ。そんな泣きそうな顔して! 寂しがりやのくせに! 私は嫌よ、ユウキには助けてもらってばっかりなのに。魔法だって、私がドジ踏まなければ使うことがなかった。私のせいなのに…、私のせいなのに…、どうしてユウキがいなくならなきゃいけないのよ。せっかく友達になったのに! 別れるなんて嫌だよぉ!」


「カロリーナ…。ホントはボクも同じ。皆と別れたくない。でも、この世界にない魔法は世の中の混乱の元になる。きっと利用しようとする大人たちが出てくる。ただでさえ、ボクを狙う何者かがいる。ララやアル、ダスティンさん。もう、いろんな人に迷惑をかけてる。これ以上は無理。ボクが耐えられない。」


「いやだよ、いや~。ユウキぃ、行かないで~。ふえええん」


「私もカロリーナさんと同じですわ。何もユウキさんが責任を感じることはありません。私たちが黙っていればいいのです。幸い、このことを知っているの私達だけ。私たちが黙っていれば誰もわからないじゃありませんか」


「それに、カロリーナの言う通り私たちはユウキさんに命を助けてもらいました。ユウキさんがいなければみんな死んでいました。ユウキさんの大切な人を守りたいという気持ち…、その気持ちの中に私たちがいる。こんな嬉しいことはありません。だから、私、フィーア・オプティムスは、全力を持ってユウキさんをお守りいたします!」


「だから…、だから、どこかに行くなんて言わないでください…。寂しいです」

 フィーアまで泣き出してしまった。ユウキはその気持ちが嬉しかった。


「拙者、何も見てなかった。だから、皆が何を話しているのかさっぱりわからん。ただ、言えることは、今回、ユウキ殿と肩を並べて戦った。これは中々良い経験だった。次もあったらまた、一緒に戦いたいものだ」


「ふふ、ヘラクリッドくんらしいね。でも、ありがとう」


「私も何も見なかったな。私はここにいる皆に色々教えてもらった。ヘラクリッド君ととフレッド君には戦いに臨む勇気を、フィーア殿とカロリーナ君には私と言う存在の意味を、そしてユウキ君には大切な人を守るという想いを。お陰でいろいろ吹っ切れた。君たちの仲間に私もぜひ入れてほしい。友人になってほしい。だからユウキ君、何も心配することはない。これからも皆と一緒にいよう。もし、何かあったら我が王家が後ろ盾になってやる。誰にも何も言わせないさ。だから、もう泣くな」


 ユウキはマクシミリアン王子の話の途中で泣き出してしまっていた。ユウキとカロリーナとフィーアは、抱き合って大声を出して泣いた。

 男たちは、声をかけず、いつまでもその姿を見守っていた。


(リースのためと思ってきたが…。ユウキさんはあんな豚の餌食になる人ではない。僕がヤツの企みを潰す!)

 フレッドもまた、1人決意するのであった。


 3人が泣き疲れて寝てしまい、日が大分傾いてきたときに先生たちによる救援隊がやってきた。先生たちは、ここでゴブリン達と戦闘になったこと。全員で退治したこと(ユウキの魔法の部分は伏せて)の報告を聞くと大いに驚き、訓練を中止することに決定した。


この物語を読んでくださってありがとうございます。ここから暫くの間、平日は毎日投稿したいと思います。

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