表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
377/620

第366話 従魔大戦②

「最初は私が行くね」


 カストルにきゅっと抱き着いてから離れ、広場の中央に進むアルヘナ。カストルの笑顔を見て嫉妬の炎を燃やすライザだったが、敢えて表情には出さない。


「ルツミ、クリスタ!」


 ライザに名指しされて出てきたのは、前髪が長く突き出ている特徴的な髪形をしたイキリ系っぽい男子生徒。サアッと前髪をかき上げるその仕草がまたキザっぽい。


「ククク…。オレは魔道学園の孤独な狼、ルツミ・タガナハ…。見事なまでに貧乳な少女よ覚悟してもらおう…」

「貧乳言うな。気にしてるんだから!」


 続いて進み出てきたのは橙色系の髪色をしたショートカットの巨乳系少女。胸の大きさで人だとわかる。


「クリスタ・クリス2年生。全力で行くわよ」

「クリトリス先輩…。強い魔物を従えてるって聞いたことある」


「クリトリスじゃないわ。クリスタ! エッチな部位で呼ばないで!」

「クリトリスってエッチなんですか? 何がエッチなの?」

「え、お股のアソコの敏感なアレで、寂しいときに刺激するとゾクッ…って、何を言わせるのよ!」

「うわ、クリ先輩、エッチ」

「クリって呼ぶな! 余計エロいでしょーが!」


「ルツミ、クリスタ。バカ話はそれまでにして。さっさとそのチビを叩きのめすのよ!」

「ハッ! 私とした事が…、すみませんライザ様」


「アハハハハ! 中々面白い漫才だったぞ。ではオレから呼ばせてもらおう。さあこい! オレの従魔、灰色の死神シルバーウルフ!」


 ルツミが小型のランタン状の魔道具を高く掲げ、魔力を集中させると銀色の大きな狼が現れた。獲物を狙う鋭い目は金色に輝き、大きな口には人の指ほどの長さの牙が何本も生えている。また、筋肉質の体を美しい銀色の毛が包み、長い尾はふさふさだ。何より体高はルツミと同じほど、体長は3m位はある。その威容は正に灰色の死神にふさわしい。


 次にクリスタが従魔を封じている魔道具を手に持って高く掲げた。魔道具から青い光の洪水が溢れ出し、その中からヌウッと1体の魔物が現れた。その魔物は大きさが2m以上あり、全身が赤茶色の鱗で覆われ、強靭そうな四肢と太くて長い尾、トカゲのような顔をしていた。また、左手に青龍刀、右手にラウンドシールドを持ち、胸には金属製の胸当てを装備していた。強力な魔物の出現にユウキとアンジェリカから大きなどよめきが起こる。


「どう、私のリザードマンは。近接戦闘だけでなく、水系の魔術も使えるのよ。それに見て、この赤銅色に輝く美しい鱗を。ああ、強くて硬くてステキ…」


 リザードマンに寄りかかってうっとりした表情を浮かべるクリスタにドン引きしつつ、予想外の強敵の出現に自分の従魔だって負けないと言い聞かせるアルヘナ。


(シルバーウルフにリザードマン。どちらも希少な種で高い戦闘能力を有する魔物って聞いたことがある。あの2人、相当な使い手だわ。ライザが自慢する仲間だけある。でも、私のメイメイだって凄い。この勝負絶対に負けないんだから)


 アルヘナもランタン型の魔道具を頭上に掲げ、ユウキたちの協力で得た従魔を大きな声で呼び出した。


「メイメイ! 私の大切な従魔。力を貸してちょうだい。さあ、姿を見せて」


「なにメイメイって。可愛い名前だこと。子羊でも呼び出すのかしら。それとも子ヤギさん? あははは! やっぱりアルヘナじゃその程度よね。あーはははは!」


 森の広場にライザの笑い声が響き渡る中、アルヘナの声に呼応して魔道具が真っ赤な光に包まれる。そして、その中から現れ出たのは身長約2m、浅黒い肌をして筋骨隆々の体躯をし、筋肉ではち切れんばかりの太い腕と足。また、頭には水牛のような2本の角、背中には蝙蝠のような大きな翼を生やした精悍な顔つきの悪魔だった。


『ウワーッハハハハハハハ! 俺様はアークデーモン、名は「メイメイ」。俺様は貧乳をこよなく愛する戦士であり、究極の貧乳美少女アルヘナちゃんを主と仰ぐ貧乳の守護者! 貧乳天使アルヘナちゃんに仇名す輩は、俺様の手で地獄に叩き込んでやる! さあ、死にたい奴はどこかしらぁ~』


「はい、すとーっぷメイメイちゃん」

『おう、少し興奮してしまったか。悪かったマイ・スモールバスト・エンジェル』


 メイメイはアルヘナを抱きかかえると肩に乗せた。そして2人一緒にニヤッと笑う。ルツミとクリスタは想定外の上級悪魔の出現に驚いた。従魔のシルバーウルフとリザードマンも動揺して落ち着きを失っている。

 ライザもまた唖然とし上級悪魔を見つめている。何せアークデーモンはAクラス冒険者のパーティが複数あっても勝てるかどうかという強力な魔物なのだ。性格も残虐で人間だろうが他の魔物であろうが手当たり次第に殺戮する「殺戮者」でもある。それがどういう訳か、アルヘナの従魔となって目の前に立っている。


 カストルも誘ってシートに腰かけ、暖かいお茶を飲みながら従魔戦を今か今かと待ち構えているユウキとアンジェリカ。流石のシルバーウルフとリザードマンもアークデーモン相手じゃ分が悪い。


「こりゃ勝負あったかな」

「うーん、あの貧乳フェチの実力は未知数だからねぇ。ルツミとクリ先輩が上手く連携して戦えば面白いと思うな。2対1だし、格下のシルバーウルフとリザードマンでもいい戦いするんじゃない」

「ほう、狂戦士ユウキの見たてなら期待できるな」

「アルヘナは勝ちますよ。絶対に」


 カストルが妹をみつめて力強く言う。ユウキとアンジェリカは顔を見合わせて「ふふっ」と笑うのであった。

 一方、ユウキたちの反対側でアルヘナとアークデーモンを歯を食いしばり、厳しい視線で見つめるライザ。


(な、なに…あれ。どうやったら悪魔を従魔にできるのよ。誰よ、ダンゴ虫なんて言ったのは。あ、私か。しかし、信じられないことをしてくれる…。でも、負けられない。私はどうしてもカストルを手に入れたいのよ!)


「ルツミ、クリスタ、正気に戻りなさい! アークデーモンといっても相手は1体。連携して戦えば勝機はある!」


(ふーん、僅かな勝ち目である連携に気づいて、ちゃんと指示できるなんて。ただの生意気女ではないんだ。アルヘナちゃん、油断して足元掬われないようにね)


 ユウキはライザに少し感心すると同時に、アルヘナの指揮能力は如何ほどのものかと考えた。考え事をしてよそ見をしたユウキの手が疎かになって、持っていたカップから熱々のお茶が零れ、スカートを濡らしエロパンツまで染みる。


「うわっ、あっちい! ヤダ、パンツがぐっしょり」

「大変だ。え、うわあ!」


 ユウキの声にカストルが反応し、ハンカチを差し出そうとした所に、同じく声に慌てたアンジェリカがぶつかり、背中を押してしまった、つんのめったカストルの顔がユウキのスカートの中に突っ込み、ぐっしょり濡れたお股に当たる。パンツ越しに感じるユウキのアソコの柔らかな感触に心臓がドキリとする。当のユウキはいきなり男子の顔がスカートの中に突っ込んできたことで恥かしさメーターが振り切れ、大きな悲鳴を上げた。


「ふぎゃあああああ! カストル君のエッチィイイイ!」

「うわあああ、ごめんなさいー!」


 ユウキの悲鳴に驚いて反応したカストルはスカートを捲り上げながら急に立ち上がってしまい、スカートの抵抗でつんのめり、ユウキの体の上に圧し掛かって押し倒してしまった。カストルの顔と手に「むにゅん」とした大きくて柔らかくていい匂いがする何かが当たる。恐る恐る顔を上げると、真っ赤な顔で涙目になってるユウキと目が合った。そして自分の手がユウキのおっぱいをモミモミしているのに気づくのだった。


「昼間から何やっているんだ、お前たちは」

「お兄ちゃんのエッチー!」

「カストルめ、そんなにでかいパイオツがいいってか…。絶対許さない」


 アンジェリカが呆れ、アルヘナとライザが怒りの視線を向けてくる。カストルは黙ってユウキに頭を下げるしかなかった。


(でも、ユウキさんのアソコ、いい匂いがしたな…。おっぱいも柔らかかった。感動)


 ◇  ◇  ◇  ◇  ◇


 外野の騒動も一段落し、その間に体勢を整えたルツミとクリスタ。メイメイから降りたアルヘナも離れた場所に立つ。両者の間には不敵に笑うメイメイとシルバーウルフ、リザードマンの2頭が対峙している。


「やっと始まるね」

「前置きが長かったな」


 ユウキとアンジェリカが疲れたように呟く。今、ようやく従魔によるバトルが始まった!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ