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第352話 ポポとアンジェリカ 2人の想い

「ユウキのバカァーー!!」

「ポポ、アンジェ…?」


 突然大声で罵られ、ビックリして2人の顔を見る。ポポもアンジェも大粒の涙を流し、ユウキを睨みつけている。


「何が人殺しです! 何が暗黒の魔女です! ユウキはそんなんじゃありません。ユウキは、ユウキは…、ポポにとってユウキはいつも温かく見守ってくれる心優しいお姉さんなのです!」

「ユウキは病気で死にかかったポポのため、命がけで薬の材料を取ってきてくれました。命の恩人です。そんな優しいユウキが人殺しの訳ありません。ロディニア? で暴れたのは同名の別人です! 絶対にそうです!」


「ユウキはとっても美人でお胸も大きくてスタイルが良くて非の打ちどころが無いように見えますが、本当はドジでおっちょこちょいで泣き虫で、アベックを見ると嫉妬心を全開にする残念なお姉さんです。でも…、でも本当は心優しく、大切な人を守るためならどんな困難にも立ち向かう勇気をもった人で…、うう…グスグスッ…」

「ポポにとって…この世界でただ1人のお姉さんと呼べる大切な人なのです…。ううっ、うわあああああん! 別れたくない! 別れたくないよぉーーー!」


「ポポ…」


 地面にペタンと座り込んで泣くポポ。そこにつかつかとアンジェリカが近寄ってきて、ユウキの頬を平手打ちした。パシーン!と乾いた音が響き、思わず打たれた頬を押さえる。


「ア、アンジェ…」


「ひぐっ…ひぐっ…。ば、ばかユウキ…。わ、私たちは親友じゃなかったのか! そう思っていたのは私だけだったのか! この薄情者。薄情者の大馬鹿者め…。暗黒の魔女がなんだというんだ。ユウキはユウキだ、魔女なんかじゃない。私の…、私の大切な友人だ!」

「そうだ、思い出した! 暗黒の魔女はロディニア王国で死んだと聞いたぞ。だから、私の目の前にいるのは、その名を騙るニセモノだ! きっとそうだ! そうだろうエド!」


『あ…、ああ。うむ…そうじゃ…』


「そら見ろ…グスッ…。やっぱりユウキは、ユウキはウソをついていたんだ…。私はユウキともっともっと旅をしたい…。ユウキはこの大陸で自分の居場所を探すのだろう。私と一緒だ。私も家も家族も国も…、愛する人も失った。私も自分の居場所を見つけたい…。居場所探しを一緒に…、ユウキと一緒にしたい。いっぱい楽しい思いもしたいんだよぉ」


「別れたくない…グス…、アレシアで私を心から心配してくれたのはユウキが初めてだった。嬉しかった…。見ず知らずの私に共感してくれたことが…。私にとってユウキは初めての心を許せる大切な友人なのよぉ~。ひぐっ…、だからサヨナラなんて言わないでよぉ…」


 頬を押さえたまま俯くユウキ。そのユウキにエドモンズ三世が優しく語りかける。


『ユウキ、2人の想いに応えてやれ。それにな、今だから言うがヴィルヘルムも皇帝もマーガレットもお主の正体を知っておる。知っていてお主を優しく見守ってくれている。恐らくフォルトゥーナもその娘も気づいておるじゃろう』


「…………」


『知っていても彼奴らはお主と友情を永遠に刻み続けるハズじゃ。断言できる』

『それに、お主の心優しい性格は万人の知るところじゃ。何せアンデッドの儂や魔法生物のアース君、魔物のアルフィーネを家族のように慕ってくれるのじゃからな。こんな嬉しいことはないぞ。だからな、儂はずっとお主の傍にいたいと思うとる。アース君やアルフィーネも同じ想いのはずじゃ』


『お主は暗黒の魔女ではない。ユウキという名の心優しき少女じゃ』


「うう…、ふぐっ…、ぐずっ…、ううう…、うぇええええん」


 ユウキもまた、手で顔を覆って泣き出した。ポポとアンジェリカがユウキに抱き着いて来る。3人がおいおい泣く姿を、友情という名の魔法で輝く姿をエドモンズ三世とアース君は、いつまでもいつまでも優しく見守るのであった…。


 ◇  ◇  ◇  ◇  ◇


 やがて日が暮れた。ユウキたちはアンゼリッテと馬車の待つ場所まで移動し、ありったけの薪材を出して作ったキャンプファイヤーを囲んで温かい食事を摂っている。


「どうしたんだユウキ、ニヤニヤして…」

「不気味なのです」


「不気味は酷いよ。えっとね、先ほどのこと思い出してね…。ポポとアンジェの気持ちが嬉しくて、思わず顔に出ちゃったの」


「思い出すと、かなり恥ずかしいな」

「ポポもなのです。でも、ユウキと一緒にいられるのが嬉しいのです」


『儂もポポたんと一緒で嬉しいのじゃ。どうじゃ、そろそろ儂にデレる頃ではないか』

「ウザいのです。自然に会話に入ってくるな、カス野郎なのです」


『ククク…、きつい言葉の裏でポポたんの思春期度数が急上昇じゃ。儂にデレるのは時間の問題。愉悦愉悦』

「もうヤダ、この骸骨…。なのです」


「あははははは」


 ユウキとアンジェリカが大きな声で笑う。アンゼリッテは2人を不思議そうに見て、皆の食器を片づけ始めた。キャンプファイヤーの炎は、いつまでもユウキとポポ、アンジェリカや眷属たちを明るく、温かく照らすのであった。


 ◇  ◇  ◇  ◇  ◇


「良かったですねユウキ。貴女の周りには貴女を大切に思っている友がたくさんいます。これからも友人たちを頼り、頑張って幸せの道を見つけるのですよ。でも、案外近くにそれはあるのかもしれませんよ。ただ、お互いそう認識するまではもう少し時間がかかるかな。うふふ…」


「結果オーライだったね!!」(フレイヤ)

「フレイヤさん、簡単にまとめましたね…」(アクア)


 ◇  ◇  ◇  ◇  ◇


「ユウキ、これからどうするのだ?」

「そうだね…。一度帝国に戻ろうかと思ったけど、魔族の国ラファールに行ってみようかな。冬をそこで過ごして、春に帝国に戻る。いいかな?」


「いいもなにも…、私たちはユウキと一緒にどこまでも行くと言ったではないか」

「なのです。ユウキは栄養が全てお胸に行くので、忘れっぽいのです」


「じゃあ決まりだね」

『クックック…。魔族の美少女たちとの邂逅…。楽しみじゃのう。楽しみ過ぎて恥骨がカタカタ震えとるわ』


「わははは、エドはブレないな」

「最低最悪なのです」


『主、ラファールに向かうなら、一度聖都オフィーリアまで戻る必要があるぞ。そこから西街道ルートを通るのが最短だ』

「そうか…。でもオフィーリアには行きたくないな。他に道はないかしら」


 マジックポーチからアレシア公国で購入した地図を開いてみる。今ユウキたちがいるのは大陸の南フェーゴ島。オフィーリアからは馬車でざっと2,3週間の距離だ。そこからラファールに向かうとさらに1週間はかかる。


「ん? 聖都から少し離れた場所に村がある」

『ああ、そこはロゼッタ村ね。放牧が盛んな何の変哲もない村よ。ただ、いい温泉が湧いていて、それ目当ての観光客が多いわね』


 地図をのぞき込んだアンゼリッテが教えてくれる。


「なるほど、一時逗留場所にはもってこいだね。とりあえず、ここを目的地にしよう」


 全員が頷いて問題ないことを確認をすると、火の番と見張りを眷属たちに任せてユウキとポポ、アンジェリカは馬車の荷台に寝袋を敷いて横になるのであった。


(移動方法、どうしようか…。馬車だと時間がかかるし、3週間もすれば真冬になって移動も困難になる。なにより馬(ラスカル♂6歳)が保たないよ。仕方ない。転移魔法を連続で使うか…。ただな~、魔力回復薬も併用しなきゃなんだよね~。背に腹は替えられないとはいえ、また下痢ったらどうしよう…)


 翌朝、アンジェリカが目を覚ますと、隣に寝ていたはずのユウキの姿が見えない。幌を開けると、ユウキがキャンプ用の小道具を片づけていた。エドモンズ三世たち眷属もお手伝いをしている。


「おはよう、アンジェ」

「おはよう、ユウキ。早いな、何しているんだ?」

「うん、ここからオフィーリア近郊まで何百kmも離れているじゃない? 普通に移動したんじゃ時間が掛りすぎるから、転移魔法を連続発動しようかなって」


「大丈夫なのか…?」

「わかんないけど、帝都で手に入れた魔力回復薬を飲み飲みやれば、何とか…」


 ユウキはエドモンズ三世たち眷属とアンゼリッテを黒真珠の水晶や真理のペンデレートに戻し、可能な限り荷物をマジックポーチに収容して馬車を軽くする。アンジェリカはポポを起こして準備をさせた。


「準備はできたね」

「ああ、いつでもいいぞ」

「バッチリなのです!」


 ユウキは御者台にアンジェリカとポポが並んで座るのを確認すると、馬(ラスカル♂6歳)の手綱を取り、魔力を高めると転移魔法を発動させた。馬車を中心に魔法陣が形成され、一瞬にして姿が消える。様々な出会いと出来事があったスバルーバル連合諸王国だったが、ポポとアンジェリカ、3人の眷属たちの絆を一層強めた旅になった。魔族の国では一体何が起こるのであろうか。3人娘は新たな冒険への期待に心躍らせるのであった。

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