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第336話 リューベックの秋祭り

 スバルーバル連合諸王国の西に位置するリューベック。連合諸王国の中では最小でありながら背後に控える山地から採掘される宝石や魔鉱石の加工品製造、湧出する温泉による観光産業が盛んで活気のある国だ。ユウキたちが国名と同じ名の首都リューベックに到着したとき、国を挙げての秋祭りを翌々日に控え、準備をする大勢の市民や関係者、祭り見物に来た観光客で賑わっていた。気の早い屋台はもう商売をしている。ユウキたちも馬車を冒険者組合の貸し厩舎に預け、大通りに出て準備の様子を見物していた。


「わああ…、楽しそうだねぇ」

「ああ、リューベックは国こそ小さいが、経済力もあり、なによりお祭り事が大好きな国民性だからな。祭りの規模は大きいし、盛り上がるんだ」

「ユウキ、ユウキ、美味しそうな串焼き屋さんがあるのです。買ってほしいのです」


 串焼きを買って、広場の噴水の縁に並んで座り、もぐもぐと食べる。肉は適度に脂がのって美味しく、また、表面に塗られたタレがまた絶妙な味わいで、3人は無心に串焼きを頬張るのだった。


「とっても美味しいお肉なのです。美味しすぎて、串焼き屋の前でウロウロする美青年を探すのを忘れました」

「ポポ、止めなさいよ。そのネタ…」

「あはは、構わんよ。私も身なりのいい、美男子がいないかなって探してた」


「もう、2人とも…(実はわたしも探してたりして…。ヴァルター様と来たら楽しいだろうな~。でも無理だよね。フランがいるし…。でもな~)」


 追加で串焼きを購入し、道行く人々を眺めていると、大勢の作業員が細めの丸太を多数運んで組み立て始めた。ユウキは「何を作るんだろう」と見ていると、10m四方のリングを2つと観覧席を作っているようだ。


「何だろうね、歌謡ショーか何かかな?」


 3人が作業の様子を見ながら串焼きを頬張っていると、ユウキの足元にカサッと何かのチラシが飛んできた。拾って読んでみると…。


『年に1度の大激闘! ぬるぬるリングで美少女バトル! 熱き女の戦いに目が離せない! 豪華商品多数用意 先着順で参加者募集中!!』


「参加者は水着着用のこと!? 絶対にエッチなイベントだよこれ! 数々のイベントに強制参加させられた私の経験から言って、間違いない!」

「参加資格は24歳までの未婚女性で職業問わず。シングル部門とタッグマッチ部門か…。うん!? 優勝賞品は…結構凄いな」

「なになに…、共通で銀貨30枚。それに加えてシングルは魔鉱石の宝杖「マイン」、タッグマッチは魔鉱石の短剣2本「黎明と暁光」。魔鉱石の武器か…、ほうほう、結構凄そうだね」


「ユウキ…」

「なーに、ポポ」

「ポポ、その短剣欲しいです。一緒に出ましょうです」


「えっ! 絶対いや…、うっ!」


 ポポがウルウルした眼差しでユウキを見る。その純粋な瞳にユウキは贖えない。思わず「うん…」と頷いてしまった。しかし、いつもの如く、後でこの行為を激しく後悔するのであった。そして、2人がタッグマッチに出ると聞いたアンジェリカもシングルに出ると言い出した。


「私もこの「マイン」という杖が気になるな。ユウキから貰った腕輪と組み合わせてみたい。それに、失恋騒ぎで色々と鬱憤もたまってるし、ひと暴れしたいという気持ちもある」

「うう…、仕方ない。申し込みに行こうか。アンジェ、本当にいいんだね。あ~あ、もう締め切りになっていないかな~」


「もう、ユウキは後ろ向きでダメなのです」

「ポポ…、どうなっても知らないよ…」


 受付会場である商工会行くと、まだ受付可能であった。シングルはアンジェリカで丁度定員になり、タッグマッチはまだ余裕があったが…。


「え、3人?」

「はい、タッグマッチは1チーム3人の参加が条件です」


(あと1人か…。アンジェはシングルに登録してしまったし、どうしようか…。わたしとしては出ないに越したことはないんだけど…)


 ユウキはチラリとポポを見ると、見事なまでに落ち込んだ顔をしている。そういえばポポは魔法剣とか羨ましそうに見ていたっけ…。ユウキは胸のペンデレートに手を触れて、中にいる魔物に声をかけてみる。


「参加します。手続きをお願いします」

「ユウキ…。大丈夫なのですか? ポポたち出られるですか?」


 ユウキは力強く頷いてみせると、ポポはニパァーッといい笑顔になって抱きついてきた。アンジェリカがポポの頭を撫でて「良かったな」と言うと、


「みんなで優勝して、お宝ゲットなのです!!」


 と声を高くして宣言し、商工会の受付さんから「頑張ってね」と応援をもらったのであった。


 ◇  ◇  ◇  ◇  ◇


「ユウキ、3人目はどうするのです?」


 宿に戻って大浴場で汗を流し、夕食を食べた後、宿泊部屋で作戦会議をするため、めいめい寝間着に着替えてリラックスしている。


「3人目はどうするって…、なんか夫婦の会話みたいだね」

「あははは! 本当だ。今から子供を作るみたいだ」

「ユウキもアンジェもお尻が大きいから、子供をぽこぽこ生みそうなのです。ポポが言ってるのはチームの3人目のことなのです」


「私、そんなにお尻大きいかな…」

「うーん、胸に比したら大きいかも…」


 ユウキとアンジェリカがお尻を向けあってお尻談義を始めた。その様子を見ていたポポは話が進まないのでイライラしてきた。ベッドの上に立ち上がるとユウキに向かって大きな声で怒鳴った。


「ユウキッ! ポポの話を聞くです!」

「もう、わかってるよぅ。待ってて、3人目を出すから」

「出す?」


 小首を傾げたアンジェリカに、ユウキはパチッとウィンクして蒼く輝く「真理のペンデレート」にそっと手を触れる。すると部屋の中がパアッと緑色に光ると、1体の美しい姿をした魔物が現れた。


「ユ、ユウキ…。これは…」

「ふふ、驚いた? さ、挨拶して」

『初めまして。私はアルフィーネ。アルラウネのアルフィーネと申します』


「ア…、アルラウネだと…。伝説級の魔物ではないか。ワイトキングだけでなく、アルラウネも仲間にしていたのか。ユウキ、お前は一体…? いや、そんなことはどうでもいい。アルラウネか…、初めて見るがとても美しい魔物だな」

『うふふ、ありがとうございます。アンジェリカ様』


「ユウキ、アルフィーネが3人目なのですか? アルフィーネは上半身こそ人型ですが、下半身は植物体なのですよ」

「ムフフ、見てて。アルフィーネ、フォーム・チェーンジッ!」


『はーい!』


 アルフィーネが胸の前で手を組み、祈りを捧げると体全体が緑色に強く輝いた。全員眩しさに目を瞑る。光の洪水が収まり目を開けるとそこにはユウキにも負けない程の美しい女性体、アルフィーネの姿があった。身長はユウキよりやや大きく約170cm程。92cmの大きなバスト、キュッと締まったウェスト、大きくて形の良いヒップから伸びる美脚。肌はユウキと同じやや黄色みがかった白で、緑色の長い髪を三つ編みにして黄色のリボンで束ねている。見た目だけなら完全に人間だ。


『どうです。アルフィーネ、イケてますか』


「うん、イケてるイケてる! すっごい美人。お胸もバインバイン!」

「これは期待できるのです! でも、早くおっぱいとお股を隠すのです。恥ずかしいです」


「よし、メンバーがそろったな。ユウキ、明日はどうする?」

「勝負用水着を買いに行きましょう。もう、こうなりゃヤケクソ! 優勝目指して頑張るぞ。どうせなら水着でも思いっきり目立たなくてはね!」


「ユウキは遺跡で拾った超エロマイクロビキニか超絶極小貝殻水着でよいのです」

「絶対に着ない」

『アルフィーネが着ましょうか?』


 試しにと貝殻水着を着けてみるアルフィーネ。小さな貝殻が大事な部分のみ隠し、細いチェーンが胸やお股に食い込み、得も言われぬ刺激を与え、エロっぽい表情で身もだえる。


『い、いやぁ~ん』


「これはエロい。エロエロ過ぎる」

「今度はユウキの番です」

「え、わたしも!?」


 アルフィーネから貝殻水着を受け取り、装着してみるユウキ。超絶美少女が顔を赤らめてもじもじと豊満な体をよじる姿は物凄い破壊力だ。もしここに100人の男がいたら全てけだものに変身して襲いかかるだろう。それほどまでに色っぽい。


「お、お股に鎖が食い込んで…、ヤダ…変な気持ちになっちゃう…。うう…ん♥️」


 ユウキの悩まし気な表情と声に、ポポとアンジェリカも何だか体が熱くなってくる気がして、思わず股間を押さえてしまう。


「だ、だめだ! ユウキ、もうその水着を脱げ! 封印だ封印!」

「ポ、ポポも何だか変な気持ちになったです…。こんなの初めて…」


 アンジェリカとポポがユウキに襲い掛かって無理やり貝殻水着を脱がして、その場を収めた。


「ふう、全裸のほうがまだ大人しいし、安心する。これって何だかなー」

「一時はどうなるかと思ったです。ユウキ、恐ろしい子…」

『うう、さすがご主人様。アルフィーネ負けちゃったです』


 その後もエロい水着の試着大会が続いた。アルフィーネをぬるぬるメンバーに加え、益々姦しくなったユウキたち。夜遅くまできゃあきゃあ騒ぎ、宿のおかみさんから「静かにしなさい!」と怒られたのであった。


 ◇  ◇  ◇  ◇  ◇


「どうしたのアンジェ、もじもじして」

「い、いや…、昨夜の儀式というヤツが…、お股がツルツルで…、その…こう…、何というか、恥ずかしいのだが…」


「ふふふ、慣れるといいもんだよ。それに、あの魔道具で処理すると、二度と生えてこないから」

「そ、そうなのか!? ヤ、ヤダ~」

『アルフィーネは、もともとツルツルなので平気です!』


 翌日、4人は準備を整えると、リューベックで一番大きなデパートに行き、試合用の水着を買った。その際、各々が分かれて買ったため、大会当日までの秘密にしたのだった。


「ユウキはどういう水着を買ったのですか?」

「ふふ…、秘密だよ秘密」

「私は気にいったのが見つかったぞ」

『アルフィーネは初めて買い物というものをしました。ちょー嬉しいです』


 満足できる買い物をした4人は、オープンテラスのレストランでめいめいに昼食を取っていた。アンジェリカがパスタを口に運んでもぐもぐしていると、不意に声をかけられた。


「あら、アンジェリカじゃありませんこと?」

「ん、お前は…、リエレッタじゃないか」


「アンジェ、知り合い?」

「ああ、彼女はここ、リューベックのアーランド伯爵家の御令嬢でな、私の家とは交流があったんで、幼いころからの知り合い…、というより仲の悪い友人だ」

「それ、友人じゃないと思うのです」


「ところで貴女、婚約破棄された上に家を追い出されたんですって!? こんな場所で何してるのですか?」

「知っているのなら隠す必要もないか…。実家を追い出されて行く当てもないからな。今は冒険者として彼女ユウキのパーティに入れてもらって、旅をしていると言ったところか」


「リューベックには昨日到着したんだ。せっかくだからこれに出てみようと思ってる。優勝品は冒険者活動に有用な品みたいだから、頑張ってみようと思ってる」


 アンジェリカはぬるぬるバトルのチラシをリエレッタに見せると、彼女の目がきらりと輝いた。


「そう、冒険者ですか。野蛮な貴女にはピッタリですわね。それに貴女も「あれ」を狙っているのですね。ふふ、面白い。わたくしもそのイベントには出ようと思っていますの」


「貴族のお前がか?」

「ええ、優勝賞品の「マイン」と「黎明と暁光」はとても魔鉱石の中でも特に貴重な真魔蒼紅石で作られた一品。秘宝収集家としての私の腕が鳴るというものです。貴女なんかには負けませんことよ!」


 リエレッタは言うだけ言うと、オーホホホとお嬢様笑いを残して離れて行った。突然のライバル出現にユウキたちに「負けられない」という感情が沸き起こる。4人は明日からの試合に向けて全力で戦うことを誓うのであった。


(ユウキの辞書に敗北なんてないんだからね!)

今回の話はエロに全振りしてみました。

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