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第29話 スラム街での戦闘②

「どぉえへぇ!!」


 ダガ―を突き立てられた男は鋭く変な悲鳴を上げて倒れた。男たちが呆気にとられているうちに、ユウキはマジックポーチから魔法剣を取り出し、反撃もままならない男たちを2人、3人と切り伏せる。


「くっ! やってくれたなこのアマ! 優しい顔してれば、ただじゃおかねえ!」

「お前ら構わん。殺っちまえ! いや、動けなくして捕まえろ! 体に教え込んでやる」


「ララ! 今助ける!」

「ん~ん~(駄目よ、ユウキ! 早く逃げて!)」


 雄たけびを上げて斬り掛かってくる男たちの攻撃を剣で防ぎ、胴や胸を切り裂いて倒していく。防具を着けていたおかげで受けた傷もひどくはない。次第に息が上がってきて苦しくなるが、気力を振るって男たちに向かっていく。大切な友人を守りたい一心で。


 ユウキが配下の男たちを次々と倒していくのを見てリーダーの男は信じられないような目つきで見ていた。


(何なんだコイツは…。ただの小娘じゃねえぞ。しかも、何だあの剣は。防具すらやすやすと切り裂いているじゃねえか…。くそっ、聞いてねえぞあの野郎。あんな金じゃ割が合わねえ)


「これを見ろ!」


 リーダーの男がララの首筋にナイフを当てて立っていた。


「剣を捨てろ、でないとこの娘を殺すぞ!」

「ララ!」

「ん~ん~(ユウキ!)」


 ユウキは、リーダーを睨みつける。


(剣を捨ててもこいつらはララを見逃さないだろう。何とか隙を見つけなければ…。魔法を使う? でも、ボクの魔法はこの世界では禁忌。いや、ララを守るためなら!)


 ユウキが魔法を使おうと身構えたその時、突然、2人の男が頭を掴まれ持ち上げられた。


「よってたかって、女の子をいじめるとは男の風上にも置けんですなあ」


「ヘラクリッドくん!」

「ユウキ殿、大丈夫ですかな」


「な、なんだお前ら、どこから入ってきた」


 リーダーが一瞬、周囲から目をそらしたとき「ララを離せ!」という掛け声とともに、ハルバードが振り下ろされ、ララを押さえていたリーダーの腕が斬り飛ばされた。


「ぎゃああああっ、腕が、俺の腕があ!」

「ユウキはララを! 後は俺たちに任せろ!」

「アルくん!」


 アルとヘラクリッドが残された男たちを切り伏せ、殴り倒していく。ユウキはララに駆け寄ると、ララを縛り付けていた拘束をダガ―を使って解く。


「ララ、大丈夫? ゴメン、ゴメンね。ボクのせいで……」


 拘束が解かれたララがユウキに抱き着いてワンワン泣き出した。


「ユウキ~、怖かった。怖かったよ~、ふぇええん」

「ララ…、ゴメンね」


 ララがユウキに抱き付いて泣いていると、突然、教会跡の扉が開いて、大勢がなだれ込んできた。


「王国憲兵隊だ! 全員そのまま動くな!」



 ユウキは憲兵隊の事務所で捜査官と話をしている。


「ふむ、何者かが君を確保するために、友人を人質にしておびき出したというのだね」


「はい、あのリーダーの男がそんなことを言ってました」


「アイツらはスラムの中でも有数のごろつきでね。我々も手を焼いていたんだよ」


「それを3人で壊滅させるなんて。リーダー含め重傷8人、死亡3人か…」

「あの…、ボクたち罪に問われますか?」

「いや、大丈夫だろう。正当防衛が認められると思う。後で正式に連絡が来ると思うよ」


「あの、ララやアル達は?」

「3人はもう帰ってもらったよ。ララくんは買い物に出た所を拉致されたようだね。最初からララくん狙いだったみたいだ。君をおびき出すエサと言うところかな」


「男の子2人は、たまたま町中で君を見つけて追いかけて行ったと話していたよ」


「そうだったんですか。あの、ボクを狙っていたのは誰でしょうか」


「う~ん、それはこれからの捜査になるけど、見つけるのは難しいかな。たぶん、貴族が関わっていると思う。スラムのごろつきと貴族が結託しているという話はずいぶん前からあるからね。君は美人だからね、性奴隷にでもしようと思ったんじゃないかな。ただ、これで終わらないと思う。十分気を付けることだね」


「性奴隷…」

 その言葉を聞いてユウキは身震いするのであった。


 憲兵隊事務所を出たらもう暗くなっていた。

 ユウキは疲れ果てていたが学園に帰る前に武器店に寄った。武器店は開いていてオヤジさんが待っていてくれた。


「オヤジさん、オヤジさんが憲兵隊に伝えてくれたんだってね。ありがとう」

「なに、当たり前のことだ。ホレ、お前の剣だ。手入れもしておいた」

「ありがとう…、オヤジさん…」


「ん、元気がないな。どうした?」


「オヤジさん、あのね…。あの、実はこの事件、ボクが原因なんだって…」

「待て、何も食ってないんだろう? 飯を食いながら話そう。そして、今日は泊っていけ」


「いいの? うん、お願いします。ありがとう…。ぐすっ」


 ユウキはオヤジさんの優しさに胸が熱くなり、泣き出してしまった。

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