第272話 激闘! ビューティファイター!
「とうりゃあああ! ダブルキィーック!」
3号馬車の上からバトルメイド・アメリアが空高くジャンプし、空中で1回転してラピスをいたぶっていたモヒカン男ととさか頭に強烈なキックを喰らわした。顔面にキックを受けた2人の男は盛大に吹っ飛び、地面に叩きつけられた…が、ラピスもまたモヒカンと一緒に地面を転がっていった。
「モヒカン!」
男たちが吹き飛んだモヒカン男に視線を移した。その隙を衝いてサディスティック・クイーンが忍び寄る。
「オーッホッホ! どこを見てるのかしらぁん! ラピス様に仇成す者ども。女王様の鞭を受けなさい! クイーン・スネーク・ショット!」
スズネが鞭を振るうと獲物に飛びかかる蛇のようにうねり、一瞬で複数の男を縛り上げると、鞭を引き寄せ、男たちを引きずり倒した。そして、地面に這いつくばらせた男たちの頭をガシッと踏みつけ、ロウソクから熱々のロウをポタポタと男たちの体に垂らしていく。
「あちっ、あちちっ。ウホッ、オホッ、やめっ…やめてっ…あふう」
「オーホホホ! オーホホホ! 女王様にひれ伏しなさい。ああ~ん、快っ感…」
「アーッハッハア! この世に砕けぬ関節などない! メイド膝十字固め!」
「ギャアアアア!」
「クロスアームロックからロメロスペシャル!」
「のわああああ!」
「ヘビーヘッドロック・アメリアスペシャル!」
「ぐおおおお…。顔がおっぱいに押し付けられて苦しい…。だが、ああ…何という柔かさ。それに、しっとり汗ばんだ谷間がいい匂い…幸せ…。ガクッ」
幸せそうに気を失った男を見て、自分にもその技をかけてくれとアメリアに殺到する男たち。そんな邪な心を持つ男に容赦なく関節技を掛けて行くアメリア。倒れ行く男たちの顔は皆満足感に満ちていた。
一方、エロリアン・スズネの前に四つん這いになってケツを向け、鞭とロウソク攻めにされている男たち。ビシン、ビシンと肉を叩く音がする度に打たれた男の嬌声が響き渡る。
「オーッホッホ! このイヤらしい醜い豚ども。そのうす汚い尻穴をこうしてやるわ! ほ~ら、ぐりぐりぐぅ~り」
「ひょおおおおおお。女王様、もっと…もっと強く…。あっふう~ん…」
「女王様、わたしにも…わたくしめにも、お慈悲を下さい。早くぅ~ん、ふりふり」
女王の奴隷と化した男たちはアナルクラッシュを求めて、獣のように必死に尻を振る。その浅ましくもおぞましい光景に、連絡馬車の乗務員や乗客たち、護衛の冒険者は言葉を失い、呆然と見ているしかできない。
「き…君は行かなくてもいいのかい…」
護衛の冒険者の脇で立ち尽くす、どう見てもコスプレ酒場の店員にしか見えないユウキに、ロダンが話しかける。
「え? やっぱり、行かなきゃダメですかね…」
「一応、ビューティファイターチームなんだろ…」
「ですよね~。とりあえず、あそこで棒立ちしているリーダーを何とかしますか…」
「あ、あの…、リーダーさん。もう降参した方がいいのではないですか?」
ユウキが恐る恐るといった感じで降伏を申し入れるが、なすが儘の配下たちを呆然と見ていたリーダーは、ハッと意識を取り戻し、ギロリとユウキを睨む。
「ぐぬぬ…、正義の味方か何だか知らねえが、あっという間にオレの配下を骨抜きにしやがって…。だが、オレ様はそうはいかんぞ。女と言えど容赦しねえ。ぶっ殺してやる! オレは男女平等主義者なんでな!」
リーダーはグレートソードを鞘から抜き去ると、思いっきり振り下ろして来た。ユウキはバックステップで間一髪躱すと、マジックポーチから魔法剣を取り出して構える。
「仕方ない…。お相手するよ!」
ユウキはリーダーに向かって一気に踏み込み、袈裟懸けから切り上げの連続攻撃を行うが、リーダーも流石元Aクラス冒険者、ユウキの攻撃を剣で防ぐと、横からの斬撃を放ってくる。グレートソードの重い一撃を受け止め、力を込めて剣を撥ね上げると鋭く突きを入れる。しかし、リーダーはこの攻撃も剣を振って跳ね返す。その隙にユウキは体を半回転させ、遠心力を上乗せした斬撃を放ったが、これも剣を立てて防がれてしまった。
「やるね…」
「お前もな。ただのイロモノ女ではないって事か」
「くっくっく…、どうだ、提案があるのだが」
「何よ」
「お前が動くたびに、その…、おっぱいがプルンプルン揺れて、気が散るというか…、触ってみたい衝動に襲われるのだが…。いや…、その乳は素晴らしい。もし、揉ませてくれたら、撤収しようと思うがどうか」
「どうかって…、このドスケベ! 少し見直したわたしがバカだった。わたしはおっぱいを安売りしない女よ! ドスケベ死すべし!」
「もう怒った! 身体拘束魔法を喰らいなさい。たありゃあ!」
「うごぉ! 身体が、身体が動かん。股間が張ったまま固まっちまった!」
ユウキは魔法剣をマジックポーチに仕舞うと、代わりに鉄の槍を取り出した。そして、リーダーから少し離れて助走を始め、槍の石突を地面に突き立てると棒高跳びの要領で大きく飛び上がる。放物線の頂点に立ったユウキが美しい両足を揃えてリーダーに向かって急降下した。風圧でスカートが捲れ、黒い紐パンの結び目が風にあおられ、緩む。
「お…おお…、おおおおお。スカートの中…腰回りの何と美しいことよ…」
「ジャンピング・美少女・キラキラキィーック!」
「どひゃべばぶっ!」
ユウキのキックがどてっ腹に命中したリーダーは、変な悲鳴を上げてぶっ飛び、地面に叩きつけられて動かなくなった。
「リーダー!」
「このアマ! リーダーの弔い合戦だ! 生き残った奴ぁ続けぇ!」
ユウキに向かって5,6人の男たちが武器を振り上げて向かって来た。ユウキはグッと槍を握り締めると、男たちを迎撃するため突撃した。
「いやああああ! 烈風槍! 脳天唐竹割! スプリットSからの美少女キック!」
百戦錬磨の男たちが1分もかからずに全員倒される。その圧倒的な戦い振りは正に狂戦士。大きな胸を揺らしながら槍で美脚で敵を屠る姿に、護衛の冒険者はぼそっと呟いた。
「俺たち、何の役にも立ってねえ…」
武装集団をあらかた倒し、捕縛し終えたビューティファイターの面々が集合し、右手の人差し指を高々と掲げて「ウリィイイイイ!」と勝利の雄叫びを上げた。勝った3人の美女たちは頬を紅潮させ、勝利の満足感に酔いしれる。最初はドン引きしていたユウキも戦いの高揚感の中で、羞恥心を完全に忘れ去っていた。
「狂戦士のユウキさん。これ、落ちてましたよ」
バトルメイド・アメリアが差し出してきたのは、黒の紐パンツ。ユウキはパンツを手に取って可愛く小首を傾げ、少し考えた後、サーっと顔を青ざめさせてスカートの上からお股とお尻を確かめる。そして、そこにあるべきはずの布の感触が無いことに気付いた。
「うわあ! い、いつ脱げたの!? も、もしかしてわたし、ノーパンのままキックとか放ってた!? あの人たちに見られたかな。ひゃああ、恥ずかしい~。わああん、お嫁に行けなくっちゃうよう!」
ユウキの羞恥心がアッという間に戻って来た。
「しかし、アイツら最低でしたね。ヘッドロックばっかり希望してくるし、自ら胸の谷間に顔を埋めてクンカクンカしてくるんですよ…ったく。全員頭蓋骨のつなぎ目をずらしてあげました」
「わったし、だ~い満足よぅ。日頃のストレスがぜ~んぶ飛んじゃった!」
「スズネさんって…、Sの女王だったんですね。最低最悪」
「ユウキちゃんひどーい。自分だってノーパンのくせに。性癖はいい勝負だと思うな」
「わたしは変な性癖なんて持ってません!」
そこに、アメリアに蹴られたモヒカンと一緒に飛ばされたラピスがふらふらしながら戻って来た。
「うう、酷い目に遭った…。アメリア、スズネ、ユウキも助けてくれてありがとう」
「いえいえ、超絶バカな主人でも、それを守るのはメイドの務め」
「そうですよぉ。駄嬢様は大切な金づる…じゃなくて、大切なお方ですもの」
「何か腑に落ちないわね…」
「ねえ、ラピス…。その…、自分のカッコ見た?」
「お嬢さん、その…、言いにくいんだが胸が…、おっぱいが丸見えだぜ」
ユウキとロダンが言いにくそうに指摘する。ラピスが自分の姿を見ると、蹴とばされたショックでナイフがブラを斬り裂いており、大きなおっぱいがプルンとこんにちわしていたのだった。
「きゃああああ!」
ラピスの悲鳴が辺りに響き渡った。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
捕縛した野盗集団を1ヶ所に集め、着替えを終えて乗客たちと一緒に休憩をとっていると、通報を受けたビフレスト治安部隊がやっと来て、野盗たちを連行して行った。乗務員から話を聞いた治安部隊の隊長がユウキたちの元に近づいて、話かけてきた。
「君たちがあの野盗集団を捕まえてくれたんだってね。奴らは最近ここらを荒らしまわってた奴でらで、我々も手を焼いていたんだよ。ただ、どうやって捕まえたのか乗務員や護衛に聞いても口を濁してね。良かったら教えてもらえないだろうか」
隊長の疑問にラピスが意気揚々と3人の活躍を話し始めると隊長は顔を引きつらせてドン引きし、アメリアとスズネは照れたように身を捩らせ、ユウキは恥ずかしくて顔を上げられない。話を聞き終えた隊長は「ご苦労様でした」と言うと、微妙な表情のまま戻って行った。
このまま、各自昼食を取った後、乗務員の案内で乗車を始め、マレダに向けて出発した。余計な時間を取ったので到着は夜遅くになるという。
(は~あ、なんでこうもトラブルに巻き込まれるんだろ…。しかも、毎回エッチなハプニングはついて回るし…。誰もわたしのお股見てないよね。もう、恥ずかしいなあ)
『運命じゃな』




