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第27話 ユウキの休日と友人たち

 入学して1か月ほど経ったある休日、ユウキは自室で毛布に包まって寝ころんでいた。


「これだけはいつまで経っても慣れないな~。女の子って大変だよ。うう、キツイ…」

「オヤジさんにお願いしていた防具も取りに行きたいけど、この調子じゃ無理だ。次の休みにしよう。せっかくの休みなのにもったいないけど、今日は1日寝て過ごそう」

 

 部屋の窓から外の景色を眺めながらうとうとしていると、不意にノックの音がして誰かが入ってきた。


「こんにちは、ユウキさん」

「あっ、フィーア、ララも。いらっしゃい。どうしたの?」

「ええ、ユウキさんが朝食に見えられなかったので、どうされたのかと思いまして」

「私は暇だからユウキの所に遊びに来ただけ。ユウキ、具合悪いの?」

「うん、実はアノ日で…。調子悪くて寝ていたんだ」

「ああ~、そうでしたか。お邪魔しちゃって悪かったですかね」


 フィーアがシュンとした顔で言う。


「ううん、大丈夫。ホントは暇だったの。来てくれて嬉しいよ」

「よかった」


 フィーアがホッとした顔をして部屋に入って来た。するとまた、ドアをノックする音が聞こえた。


「こんにちは、お邪魔してもいいですか~」


 戸を開けて入ってきたのはクラスメイトのユーリカとカロリーナであった。身体測定以来、ユウキに話しかけてくる女子が増え、この2人とは特に仲良くなっていた。


「あれ、調子悪いの?」

「いや、実は女の子の日なの」


 ああ、アレは辛いわよね~と言いながら、2人は思い思いの場所に座る。


「ねえ、私、お菓子作ってきたの。みんなで食べようよ」


 ララが手作りクッキーを手提げ袋から取り出して全員に配る。ユウキは1枚手にとって口にいれた。ララの手作りクッキーはバターをたっぷり使ったバタークッキーで香りがよく、程よい甘みでとても美味しい。食欲のなかったユウキだったが、ララのクッキーは何枚でも食べられた。


「ララさん」

「何ですかカロリーナさん」

「アレを見てどう思います」

「けしからんですね。ええ、実にけしからん」

「全くもって同感です。なんですかあの乳は。ホントに私たちと同い年ですかね」


「フィーアさんは大きいですが巨乳って程ではないので、まあ、許すとして」

「クラスの男共の2人を見る視線のいやらしさといったら」

「その後に、私たちを見て憐れむような目つきをしてくる。全くもって腹が立ちます…」


「あの、いったい何の話…」

「すっとぼけおって! そんな奴にはこうしてやる!」


 ララとカロリーナはユウキとユーリカに抱き着き、豊満なバストに顔をうずめてうりうりした。


「こ、これは。何と言う悪魔的な柔らかさ! そして、いいにおい…。まさに天国」

「きゃあ! やめて、おっぱい揉まないで。何でフィーアも混ざって揉んでくるの~」


 ユウキが思わす悲鳴を上げる。見るとユーリカに抱き着いたカロリーナは部屋の隅に投げ飛ばされていて、ユウキは思わず笑ってしまった。


 ◇  ◇  ◇  ◇  ◇


 女の子が5人も集まれば、自然とコイバナになるものである。


「ねえ、皆は誰か気になる男の子はいるの?」

「全然」(ユウキ)

「全く」(ユーリカ)

「私には婚約者がいるらしいですけど、会ったこともありません」(フィーア)


 ちなみに、話を振ったカロリーナも好きな男子はおらず、フィーアも婚約者については全く知らないとの事でネタにならず、残るはララのみ。


「わ、私もいないかな~」

「ウソ、ボク知ってるよ。ララがアルのこと気になってるの。アルがボクと話をすると凄くヤキモチ焼くし、アルもララのこと気にかけているみたいだしね」


「おおーっ、幼馴染の恋ですか~。甘ったるいですね~」

「きゃあ、興味があります。お話をお聞かせください。ほら、早く!」


 ユーリカとフィーアは大盛り上がりだ。


「えっ、あわわわ…」

「ララの裏切り者~。貧乳のくせに、ペッタンコ同士の友情はどこいったの~。彼がいるなんてずるいよ~、私にも誰か紹介してよ~」


 カロリーナの悲痛な叫びがユウキの部屋に響き渡り、皆が大笑いする。

 ユウキは、自分を慕ってくれる友人たちが大好きだった。この楽しい時間がいつまでも続けばいいと思っている。異世界から流れて来た自分にも居場所がある。ユウキは楽しそうな友人たちを見て、自分も幸せな気分になった。


 ◇  ◇  ◇  ◇  ◇


 その男は煽情的な下着を着させた女を両脇に侍らせ、好色的な笑みを浮かべて報告を受けていた。


「ははは、面白いなその女は。美しいだけでなく腕も立つし、咄嗟の判断にも優れている。なんとしてもモノにしたい」

「この俺様のハーレムの一員に加え、徹底的に調教して、隷属させてやる。そのためにはどんな手でも使ってやる」

「お前は、引き続きそいつの監視を続けろ。チャンスがあればスラムの奴らを使え」


「はい…」

「おっと、ほら、今月分だ」


 男は銀貨を数枚投げてよこした。


 返事をした人物は、女を脇に抱えて満足そうに笑っている男や嬌声をあげている女を軽蔑の眼差しで見つめ、屈辱に耐えながら銀貨を拾って退室した。あの空間に長くいたくないと思った。しかし、従うしかない。妹の命がかかっているのだ。


「ふふふ、ユウキ・タカシナか。俺様の誘いを断ったこと後悔させてやるぞ。そして、必ずモノにしてやる。今から楽しみだ。はははは」


 フォンス伯爵家の一室で、クレスケンはいつまでも笑い続けた。

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