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第23話 入学式と新しいクラス

 朝食を済ませて、身支度を整えたユウキは改めて自分の姿を見た。サラサラの黒髪に黄色い花のアクセントが付いた水色のカチューシャ。制服を身にまとった姿は、いつもと違って、なんだか新鮮に感じる。部屋のスリッパから上履きに履き替えて、入学式会場の大講堂に向かった。


「あっ、ユ~ウ~キ~! おっはよ~」


 大講堂に向かう途中、中央玄関前を通ると、登校したララがドスンと抱き着いてきた。


「わっ! ララかぁ。ビックリした。おはよう」

「うす」

「アルもおはよう」


 ララは、ショートの髪をサイドテールにしてリボンでまとめてる。アルはなんだか制服に着られている感じだ。


「制服姿のララ、とってもかわいいよ」

「ユウキにそういわれると自信がつくな~」


 他愛もない話をしながら、大講堂に入る。


「私たちのCクラスの席は…、向こうだね。ユウキと同じクラスでよかった~」

「じゃ、俺はここで」と言ってアルはBクラスの席に向かった。


 ララとユウキが並んで着席して間もなくすると、入学式が始まった。


「わたしが、学園長のオーベルシュタインだ。今日、こうして皆と会えることを嬉しく思う」

 

 学園長は、西洋のおとぎ話に出てくる魔法使いに出てくるような白く長いひげを生やして、魔導士のローブを着た偉丈夫であった。

 学園長の長い話がやっと終り、ユウキはため息をつく。


(はあ~、なんで年寄りの話は長いんだろ…。ん?)


「次、在校生代表からの歓迎の言葉。在校生代表、生徒会長マクシミリアン様」

「ねえねえ、マクシミリアン様って、王国の第2王子様よね」

「輝くような金髪素敵ね。顔よし、頭よし、性格よしの3拍子揃ってるなんて素敵」

「お、お近づきになりたい…」


 急に周りの女子生徒が騒ぎ始めた。


(へえ~、生徒会長って第2王子様なんだ。確かに美形だし女の子が騒ぐの分かるな)


 その時、ユウキは新入生の中から鋭い殺気が放たれたのに気づいた。ララを始め、他の生徒は気づいていない。


(何、この殺気、どこから?)


 殺気はSクラスの方から感じる。しかし、ユウキの席からは誰が殺気を発しているか見えない。何とか探ろうとしていたが、そのうち歓迎の言葉が終了し、第2王子は壇上から下がった。それと同時に殺気も消えた。


(何だったの、一体?)


 入学式が終わり、新入生はそれぞれのクラスに向かう廊下で、ユウキはララに尋ねてみる。


「ねえ、ララ。入学式の最中に、何かおかしな気配感じなかった?」

「気配? 何も感じなかったよ。学園長の話が長くて半分眠ってた。何かあった?」

「え、いや、何でもないよ。気のせいだったかな(ララは何も感じなかったのか…)」

「あ、ここがCクラスの教室だよ」


 ユウキとララは隣同士に座る。他のクラスメイトも教室に入ってきた。


「おお、ユウキ殿! ララ殿!」

「このデカい声、筋肉君だ。フレッド君も」

「同じクラスとは目出度い! ひとつよろしくお頼み申そうぞ!」

「あ、うん。よろしくね」

「しかし、ヘラクリッド君の制服姿、見事にパッツンパッツンで痛ましいね」


 ララが率直な感想を言うと、ヘラクリッドはガハハと笑いとばして言った。


「何、吾輩は全く気にしておらん!」

「いや、少しは気にしようよ」


 こいつは、いつでもペースを崩さないな。と筋肉君をユウキが笑いながら見ていると、教壇側の入り口が開いて、先生が入ってきた。


「よーし! 皆そろっているな。これから1年間、このクラスを受け持つバルバネスだ。よろしくな」


(あっ、剣術試験の試験官の先生だ)


「ふむ、このクラスは40名か。それじゃ、自己紹介と行こうか。自分のアピールポイントも忘れるな。女子は胸の大きさもな。俺の心のメモ帳に記録する必要があるからな」

「やだ」「エロ教師」「ドスケベ」と女子の声が飛ぶ。

「はっはっは。冗談だ。ほれ、廊下側の一番前、お前からだ」


 順番に自己紹介が進み、筋肉とフレッド、ララも終わってユウキの番が来た。


「ユウキ・タカシナです。出身は王国の北方、イソマルト村の近くです。王都には学園に入学するため初めてきました。田舎から出て来たので友達がいません。なので、友達をたくさん作りたいです。どうぞよろしく。あ、アピールポイントですか。え、えと、む、胸?」


 自己紹介を終わらせ、ホッとしたユウキに「お前、剣はどこで習った」とバルバネスが急に質問してきた。


「え、えと、近所に住んでいる方から教えてもらいました」


 一瞬戸惑ったユウキは、なんとか誤魔化したが、バルバネスはユウキをじっと見つめて「ふむ、そうか。まあいい」と呟いた。


「自己紹介は終わったな。よし、次はクラス委員を決めるぞ。立候補する者はいないか」


 誰も手を上げない。


「んじゃ、推薦は」

「はい!」ユウキが手を上げ「女子はララがいいと思います」と発言した。

「え、ええ~。ユウキ、いきなりひどいよう」

「ララは明るいし、人当たりもいい。気配りもできるから適任だと思うよ」

「よし、女子はララだな。男子はどうだ。誰も推薦する奴がおらんのか」


「誰もいないなら、僭越ながら吾輩がやり申そう!」

「よし、筋肉ダルマ。お前に決まりだ」


「よーし、今日はこれで解散だ。明日から本格的に始まるからな。ヘラクレッド、号令!」


「起立! ありがとうございました!」


「おう、気をつけて帰れ」


 ユウキとララは食堂に来た。食堂に入るとフィーアやアルも来ていて、2人の近くに座った。


「もう、ユウキったらひどいんだよ。相談もなしにクラス委員に推薦しちゃってさ」


 ララが早速愚痴る。


「そうなんですか、私のところなんて、先生の指名でマルムト様と私に決められました」

「マルムト様って?」


 ユウキがフィーアに聞くと、王家の第3王子でマクシミリアンとは1歳年下になるのだという。第3王子と聞いて、何かユウキの心の奥に引っかかるものがあった。


(あの気配、まさかとは思うけど…)


「俺のクラスはくじ引きだったな。嬉しいことにハズレだ。残念だったな、ララ」

「ん~、悔しい~」

「もお、いつまで拗ねているの。機嫌直してよ。ボクのとっておきのリボンあげるから」

「わかった! わーい、お揃いにしてね!」


 一瞬で機嫌が直ったララを見て、ユウキや他のメンバーも可笑しくなるのであった。


ユウキについて(その1)

 ユウキは、この世界に来てからアンデッド達に鍛えられたので、同年代の男女より剣の腕は優れており、並の兵士なら十分圧倒できる力を持っています。とは言っても隊長クラスになると、やはり相手にはならないでしょう。その程度の力量に設定してます。

 ただ、ユウキは世界で唯一(保護者を除く)の暗黒魔法の使い手です。暗黒魔法の威力はこの世界で使われている四元魔法を圧倒しています。ユウキはこの力をどう使っていくのか。大切な人を守るために使うのか、それとも破壊と殺戮のために行使するのか、この点も物語のテーマの一つです。


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