番外編3 ユウキからの手紙
『拝啓、親愛なるカロリーナ様、お元気ですか。リハビリ頑張ってる? 体の回復には時間がかかるけど、焦っちゃだめだよ』
『わたしは今、ロディニア大陸とラミディア大陸との玄関口、スクルド共和国のマッサリア市に来ています。でもね、ここまで来るのに大変だったよー。荒れた海では船酔いでゲロ塗れになるし、変な男に付きまとわれておっぱい触られるし、海賊は襲ってくるしで心が休まる暇がありませんでした。ちなみに、海賊はわたし1人で叩きのめしたよ!』
『マッサリアはとても活気がある街で、何より、人間だけでなくエルフやドワーフさん、獣人の人たちも大勢普通に生活していて、人々もおおらかで、ロディニアと全然違う雰囲気に驚きました。髪の毛の色も様々で、濃いブラウンの人も多く、わたしの黒髪も全然目立たないので、変に指摘してくる人もいなくてホント助かります。ただ、この国にもロディニアで暴れた「暗黒の魔女」の話が広まっていたので、気をつけなければと思っています(ちなみに暗黒の魔女は、美人でおっぱいバインバインの露出狂というイメージらしいです…)』
『実は、南の大陸を旅するために船で知り合ったスケベ男から冒険者登録をしておくといいと教えられたので、登録をしたんだけど、早々にとんでもないことに巻き込まれちゃったのよー。思い出すと恥ずかしくて死にそうになる…』
『その内容はね、マッサリア市で開催された「大陸最強戦士決定戦に出場し、2年連続チャンピオンを倒して優勝すること」だったの! か弱い美少女になんちゅー依頼をさせるのよって感じ! 冒険者斡旋所のクソオヤジのやつ、受けないと違約金払えって言うし…。わたしが受けたわけじゃないのに違約金って、信じられないよ!』
『もちろん受けましたよ。でもね、依頼主は何と南の大陸最大の国「カルディア帝国宰相のお嬢様、エヴァリーナ様」だったの。しかも魔族とのハーフで、神秘的な紫色の瞳をしたすっごい美少女だったのよ! でも、おっぱいはわたしの方が圧倒的に大きかったけどね。エヴァ様のおっぱいはカロリーナより若干あるくらいかな? カロリーナといいお友達になれると思うよ。よかったね、自由貧乳同盟の仲間が出来て。にしし…』
『おっと、話が脱線してしまったね。エヴァ様が依頼した理由は、兄様のねじ曲がった根性を元通りの優しい心に戻すため、兄様の手駒の2年連続チャンピオン(フランって名前の、クソ生意気なド貧乳女)を倒してほしいだったの。仕方ないよね、そういう理由なら』
『でもさー、エヴァ様がわたしの訓練のために連れて来たっていう帝国の兵士さんたち、みんなエッチな巨乳好きだったのよー、わたしのおっぱいをガン見してくるわ、ワザと胸に向かって倒れて来るわ、わたしが床に転がって息を整えていると、周りに集まってきて、おっぱいの鑑賞会を始めるしで最低最悪よ。エヴァ様もブチ切れてた。でもね、最後はユウキ親衛隊を結成してくれて、一生懸命応援してくれたから許しちゃったよ』
『しかし、ロディニアにいた頃よりおっぱいおっぱい言われてるような気がする。何なの、この大陸の人たち…あ、ごめんね、カロリーナには縁のない話だったよね。うぷぷ…』
『そうそう、大陸最強戦士決定戦だったね。エヴァ様が参加衣装を用意してくれたんだけどね、このお嬢様がフィーア並みにポンコツで、とんでもなかった…。わたしのバトルドレスは、青がベースの色鮮やかな花柄があしらわれたセクシーチャイナドレスだったのよ! 胸元は大きく開いておっぱいの谷間が丸見えだったし、超ミニスカートは腰から下の部分がスリットになってて、歩くたびに下着が見えちゃってさー、痴女だよ痴女。今時の風俗店の女だってこんな格好しないよ、恥ずかしいたらありゃしない!』
『しかもさ、リングネームを「魅惑の体の狂戦士(エロボディバーサーカー)」って登録しやがってさ、エロボディって何よ! わたしは清純派だっての!』
『対戦相手も酷くて「世界の女の敵、痴漢者トム」「サディスティッククイーン・黒バラローズ」「獣人剣士マキシマム」「殺人ピエロ・ハーメルン」ってイロモノのオンパレード。対戦内容も酷かったので教えたくない…。あまりにも恥ずかしすぎて…。ちなみに、ローズとの戦いではスケスケパンツでM字開脚させられました…。ハハ…、会場に来ていた子供連れのお母さんが、わたしを指さして「教育に悪い!」って言ってた…』
『まあ、こいつらを倒して、決勝戦では2年連続チャンピオンの「疾風フラン」と対戦しました。詳細は省くけど、結果はわたしの勝ち。フランは気持ちも強く、実力もあった。勝負は紙一重だったよ、でも、私だってエヴァ様の気持ちに応えるため頑張ったよ』
『来て早々に大陸チャンピオンって…、わたしの居場所探しに全く不必要なイベントで、有難くない称号を頂きましたよ。はあ、悲しい』
『でもね、わたし、まだスクルド共和国しか体験していないけどホントにロディニアと違うの。魔物の影は少ないし、何より人や亜人、獣人の差別がほとんどないの。街の中を見ても黒い髪の子は見かけないけど、わたしの髪を見て変に指摘する人もいない。普通に受け入れてくれるの』
『良い言い方が思いつかないけど、ラミディア大陸の方が「社会的・文化的に成熟している」っていうのかな。凄く居心地がいいの。人々の活気もあるし。もちろん、こっちにも嫌な奴はいるし、犯罪もあるよ。でも、この大陸なら、わたしの居場所を見つけることが出来るかもしれない』
『わたし、頑張ってみるね。応援しててね、カロリーナ』
『なんかとりとめがなかったね。もっと、色々とこっちの社会的な事を書ければ良かったんだけど、それは、もう少しこっちの世界を見てからにするね。とりあえず、無事ラミディアに着いた事を報告をしたくて書いてみました』
『こっちはこれから夏に向かうけど、ロディニアは冬になるね。寒さで体を壊さないようにね。無理せずリハビリ頑張ってね。また、何か面白いことがあったら手紙書くから』
『貴女の心の友 ユウキ・タカシナより』
手紙を読んだ主は封書の宛名を見て再度中身を読み、ため息をつくと机に手紙を置いて部屋の窓際に立ち、外を眺めて呟いた。
「ユウキ君、宛名は間違いなく私宛だが、手紙の中身は間違っているよ」
フォンス伯爵はユウキの顔を思い出し、クックッと笑うのであった。