第22話 ユウキ再び武器屋に行く
学園の入学式が間近に迫ったある日、ユウキは1人武器屋に来ていた。
「ホレ、借りていた魔法剣を返すぞ」
「うん。それで、何かわかったことあった?」
「いや、古代の魔法技術で魔力を付与されていることは解った。多少の刃こぼれは自己修復しちまうとんでもねえ剣だ。刀身に刻まれている文字がその源のようだが、解読できん。試しに俺の作った剣に、同じ文字を刻んでみたが、何の反応もしなかった」
「あと、重さを軽減する魔法は、柄にはめてある宝玉の力のようだ。この宝玉は持ち主の防御力も上昇させる効果もある。まあ、多少だが」
「わかったのはこの位だ。再現はできなんだ。与えられた魔法技術が何なのかわかれば良いんだがな。暇なとき研究してみるぜ。職人の血がうずくからな。ガハハハ」
「そうなんだ(とんでもない剣じゃないの。おじさん…)」
「ああ、二度と手に入らない希少な剣だ。大切にしろよ」
「オヤジさん、少し相談があるんだけど」
「なんだ」
「ボク、防具がなくて。学園では魔物の討伐訓練もあるって聞いたから、防具がないと困るかも知れないんだ。学園に入学する女の子のほとんどは魔導士だからローブなんだけど、ボクは直接戦闘するから」
「ふむ…」
武器屋のオヤジはユウキの体を見回して首をひねった。
「確かに防具は必要だな。しかし、女の戦士は少なく、需要が少ないからな。既製品もあるが、体力が少ない女性用に防御力を犠牲にして、軽量化したものが中心だ。価格も高い」
「既製品で防御力がそこそこあるとしたら、チェインメイルくらいか。しかし、チェインメイルはプレートメイルの下に着る補助防具だからな。お前が着ても動きを阻害してしまうな」
「そう…。何とかできないかな」
「特注で作ってやろう」
「ホント!?」
「うむ。お前の体形に合わせて魔物の皮で作ってやろう。普通の皮よりは耐久性が勝るからな。急所の部分は皮を重ね合わせにして、間に薄い鉄を合わせれば、そこそこの防御力にはなるはずだ。お前の魔法剣の防御力上昇効果も合わせれば、なんとかいけるだろう」
「うん。それでお願いします」
「できるまで20日ほどかかるぞ。それと前金で金貨1枚。完成でもう2枚だ」
「た、高いね。でもわかった。はい金貨1枚」
「特別な皮で作るのだ。高いが我慢せい。それと、こっちに来い。サイズを測るぞ」
次の日、宿の受付で清算をすませたユウキは、荷物を持って学園の案内所で入寮の手続きをしていた。
「はい、これで手続きはお終い。私は寮長をしている3年生のアンジェリカよ。よろしくね。じゃ、お部屋に案内するわよ」
「寮は部屋は狭いけど個室よ。お部屋は卒業まで同じだから大切に使ってね。1階には談話室と食堂、大浴場、洗濯場があるわ。利用できる時間が決まっているから注意してね。あと、洗面所とトイレは各階にあります。共有なので汚さないようにね」
「はい、ここがあなたの部屋よ。これは鍵。なくさないでね。あと、部屋を出るときは必ず鍵をかけること。じゃあね、何かあったら遠慮なく相談して」
アンジェリカが去った後、部屋の中を見てみる。シングルベッドに机、本棚。クローゼット。広さは4畳半位か。
「確かに狭いね。でも、これから世話になるんだ。よろしくね」
ベッドを見ると、制服が用意され、置いてあった。
「これが制服か。ブレザータイプだね。ブラウスは白、リボンは赤、ジャケットは茶色、スカートはチェック柄か。スカート少し短くない?」
「上履きは白に赤。1年生は赤か。そういえばアンジェリカさんは緑だったな。学年で違っているんだ」
部屋のクローゼットに私服や下着などを収納し、明日の入学式の準備を終えたユウキは食堂に向かった。
「食堂、食堂っと。ここかな?」
「ユウキさん!」
声をかけられて振り向くとフィーアが手を振って近づいてきた。
「あっ、フィーア!」
「フィーアも寮なんだ」
「ええ、少しでもお父様から離れたくて。今から食事ですか。よかったらご一緒しましょう」
「うん、いいよ。」
食堂はバイキング形式なので、2人はめいめいにトレイに料理を載せ、テーブルに着いた。時間が早かったせいか、生徒はまばらだった。
「そういえば、ララさんやアルさんは一緒じゃないのですか?」
「うん、ララは王都のおじさんの家から通うって。アルもご厄介になるみたい」
「そうなんですか。お祝い会メンバーで寮に入るのはユウキさんと、私、フレッド君と筋肉お化けの4人ですね」
「あはは、筋肉お化けって酷いな。フィーアって口が悪いね」
「そういえば、クラス分け見ました?」
「うん。ボクはCクラス。ララとフレッドくん、筋肉くんと一緒。アルはBクラスだったよ。フィーアは?」
「私はSクラスです」
「Sクラスって…。凄いじゃない。特級クラスなんでしょ、成績優秀の」
「そんなんじゃありませんよ。Sなんて特級と言っておきながら、平民排除の貴族だけのクラスですし。あ~あ、私もユウキさんと一緒のクラスがよかったですわ」
(学園のクラスはSからEまで分かれているんだよね。クラス分けは入試の成績順で振り分けされていると聞いてたけど、そうじゃないのかな。貴族と平民か…。この世界は格差社会なんだな)
フィーアと食事をした後、一緒にお風呂に入る。
「結構大きいお風呂だね。ゆっくり入れそう」
浴槽は20人くらい入っても余裕があるほどで、洗い場も広い。ユウキとフィーアは並んで体と髪を洗い、ゆったりと湯船につかる。
「ユウキさんて…」
フィーアがまじまじとユウキの体を見てきた。
「凄くお肌がきれいですのね。それに、胸も大きくて形もいいです。うらやましいな」
「そ、そうかな。フィーアの肌も白くてきれいだと思うよ」
「はあ、この肌触り。つるつるで癖になりそう。どんなお手入れしてるのですか?」
「特別なことは何も…。きゃっ! おっぱい揉まないでよ。もおー」
「ユウキさんのおっぱい。ふかふかです!」
お風呂で、散々ふざけあった2人はすっかりのぼせてしまうのであった。
「ふう、ララもアルもいなくてどうなるかと思ったけど、フィーアが一緒にいてくれてよかった。さあ、明日から学園生活が始まるんだ。ボク、小学校4年生の途中までしか経験してないからドキドキするけど、何とかなるよね。準備は済ませたし、早く寝よう」
ユウキは期待に胸膨らませ、ベッドにもぐり込むのだった。
いよいよ、ユウキの本格的な活動が始まります。友人達との生活が中心となりますので、会話が多めです。
流れとしては、命の危険にさらされたり、悪人や魔獣との戦闘というハードな話と学園生活でのおふざけあり、エッチな展開ありのコメディタッチのソフトな話が交互に続きます。学園生活におけるユウキの活躍を楽しんでください。
※第2部から、主人公の名前をこの世界の呼び名である「ユウキ」と表記します。