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第212話 大盛況! グルメグランプリ!!

 アリスたちは大通りの一角に与えられたテントに器材を運び込み、タコ焼き販売の準備をしていた。アリスとエヴァリーナが材料や生地の準備をし、フェリシアはお釣り用の銅貨の確認をする。


「あと30分で始まりますね。最初はあまり人は来ないと思います。お昼時と午後のパレードの時が勝負です。皆さんよろしくお願いします」

「はい、お任せくださいアリスさん。そろそろ焼き始めましょうか」


 アリスが加熱用と保温用の魔道具を動かし、エヴァリーナは生地の仕込みを始めたが、ユウキの姿が見えない。


「あの、ユウキさんは?」


 フェリシアがユウキの姿が見えないのに気づいて聞くが、2人とも首を振る。探しに行こうかと迷っていると「準備して来たよ」と後ろから声がかかった。


「ユウキさん、遅かったじゃないですか? 心配しましたよ」

 そう言ってフェリシアが振り向くと、フード付きのコートを纏ったユウキがいた。


「ユウキさん?」


 フェリシアが訝し気に尋ねる。その時、パンパンと花火が討ち上り、「謝肉祭カーニバル」最終日のイベントがスタートした。


「タコ焼き、1回目焼けたよー」


 アリスの声を聞いたユウキはグッとコートの首元のボタンを外すと、一気に脱ぎ去った。その下から現れたユウキの姿にフェリシアは目を見張り、エヴァリーナとアリスは調理の手が止まる。


 ユウキは可愛いメイドのエロ水着。首には黒のフリフリリボン、ブラは白のフリルで縁取りされた黒のビキニ。大きな胸の谷間がはちきんばかりに存在を主張している。黒のパンツも脇を紐で結んだ際どいタイプで、頭には可愛いメイドのヘアバンド。


「ユウキさん、あなたって人は…。エロの化身ですか?」

「超絶美少女で、ぼっきゅんぼんのエロボディ。凄まじい破壊力ですね。あの恰好、あたしは恥ずかしくて無理だな…」


 エヴァリーナとフェリシアがユウキの姿を見てしみじみと感想を述べる。早くも恥ずかしさ全開のユウキの顔は真っ赤だ。

  

「アナタたちがこうしろって言うから頑張ったのに! わたしだって死ぬほど恥ずかしいんだからね! もう、呼び込み始めるよ!」


 時間が経つにつれて、段々人通りが多くなってきた。各出店や屋台の呼び込み競争も過熱してきている。その中でも特に異彩を放っている屋台がひとつ。


「トゥルーズの新しい名物「タコ焼き」ですよー。どうですか、お兄さん食べてみて?」

 ユウキが、通りすがりの男性にすり寄り、一口たこ焼きを食べさせる。


「どお、美味しい?」

「ん、結構美味い。この食感もいいな。ついでに姉ちゃんも美味そうだな」

「もうエッチね。でも美味しいって言ってくれて良かった。ねえ、たくさん買ってくれるとうれしいなっ!」


 ユウキは殊更胸の谷間を強調して見せると、男性の目はその部分に釘付けになり、ふらふらとユウキの後に付いてきて、テントの前まで誘導されて来た。


「お買い上げありがとうございましたー。お知り合いにも紹介してねぇー」


 ユウキが声を掛けると大概の男性は立ち止まり、話を聞いて試食をする。すると、今まで食べたことのないタコ焼きの新しい美味しさに驚き、買い求めていく。そして、タコ焼きを美味しそうに食べる人たちを見た親子連れや、女性客も立ち寄るようになり、いつしか行列が出来るようになっていた。


「さすがですユウキさん。男たちが誘蛾灯に惹かれる虫のように集まってきます。その効果で親子連れや女性客も増えて来ました。正に女蟻地獄、いや女郎蜘蛛か…」


「フェリシアさん。感心してないで調理を手伝ってくださいな! アリスさんだけでは追いつかなくなりましたので、私も焼きに入ります。フェリシアさんは生地作りをお願いします」


「り、了解です。エヴァリーナ様!」


 昼を過ぎると口コミで「タコ焼き」の噂が広がり、どんどんお客が集まって来た。3人は調理で手一杯になり、ユウキも呼び込みをする余裕がなくなって、お客の対応に忙殺されるようになった。


「うわわ…。あれ、アリス、ヤバいよお皿が足りなくなってきた!」

「ええっ、回収したお皿を洗わなきゃですね、フェリシアさん、水魔法でお願いできますか。ユウキさんは生地作りと販売をお願いします!」


 フェリシアは「どっせーい!」と若い神官少女とはとても思えないような掛け声を上げて、使用済みの皿が入った入れ物を抱えて、洗い場に下がって行った。


 エヴァリーナは必死にタコ焼きを焼いていた。焼き器の熱さから服を脱ぎ、上半身はシャツ1枚になっている。金髪紫眼の美少女がねじり鉢巻きをし、塩を舐め舐め水をがぶ飲みして、踊るようにタコ焼きを焼いている姿は壮絶で美しい。また、汗で濡れたシャツが肌にぴったりくっつき、ささやかな胸を包むブラを浮き上がらせていて、ユウキの様なストレートなエロスとは異なる色気が全身から溢れ出ている。


 エヴァリーナのダンシングタコ焼きは親子連れに大人気だ。我先にエヴァリーナの焼いたタコ焼きを買い求めていく。アリスもいつの間にか上半身はビキニ、下半身は切れ込みの深いホットパンツに着替え、汗を滝の様に流しながら、タコ焼きを焼いている。大きく腕を振って生地にプルプを放つたびに揺れる胸に、客の男たちから歓声が飛ぶ。


 美少女たちが必死にタコ焼きを作り、お客さんを捌いていると、突然「退きなさい!」と大声がして、ざわ…ざわ…とお客さん達が騒めき、ユウキも何事かと声がした方を見た。


 すると、モーセの十戒のように人混みが綺麗に左右に別れ、その中を4人の上半身裸の屈強な男達に担がれた豪華な椅子に座っているゴージャスな衣装の少女が、これまた屈強そうな護衛を引き連れて屋台の方に向かってきた。


「そこのふしだらな格好をした女、妾に、そこの下賤な食べ物を持って参れ」

「えっ、は、はい…(誰が、誰がふしだらな女よ、失礼しちゃうね!)」


 ゴージャスな少女の命令に、ユウキがたこ焼きを1皿、「どうぞ」と差し出す。護衛がユウキから皿を受け取り、恭しく少女に差し出すと、少女は上品な所作でタコ焼きを1つ取り、一口食べると「ふん、こんなものか」と言って、護衛の手にある残りのタコ焼きを皿ごと払いのけた。少女たちが丹精込めて作ったタコ焼きは地面に散らばり、カシャンと乾いた音を立ててお皿が割れる音が響く。


「あっ…」


 ユウキや周囲の買い物客が一瞬静かになる。少女はユウキたちを一瞥すると「ふん」と言って護衛にこの場から移動するよう指示し、少女を担いでいる男たちが方向転換して歩き出そうとした。


「ちょっと待ちなさい!」

 ユウキが声をかけると、少女が面倒くさそうに振り向く。


「なんだ、妾は忙しいのじゃ。お前の様なふしだらな女と関わっている暇はない。去れ!」


「黙れバカ女! よく聞きなさい。まず、タコ焼きの対価を払いなさい。1皿銅貨5枚よ。それから、落としたタコ焼きを拾いなさい。そして作ってくれたあの子たちに謝りなさい!」


 そう言って、ユウキはエヴァリーナとアリスを指差す。2人は不安そうにこちらを見ている。少女はユウキに怒りに満ちた目を向ける。


「こんなもので、妾から対価を取るというのか? それに、あの者たちに謝罪せよと? 何故妾が謝らねばならぬ。妾を誰だと思っている。この不敬者が!」

「あんたが誰かなんてわたしが知る訳ない。でも、わたしたちが精魂込めて作ったタコ焼きをバカにしたクソ女ってことはわかるよ!」


「ク、クソ女とは…、貴様、何という不敬! この方はイザヴェル王国の王族に連なるマルドゥーク公爵家のナンナ公女様におらせられるぞ!」


 隊長と思われる騎士が気色ばんでユウキに詰め寄り、サッと手を上げると、数人の護衛騎士が抜剣してユウキを取り囲んだ。それを見た大勢の市民から悲鳴が上がる。


「女の子1人に剣を向けるとは…。自分の非も認められないバカ女に相応しい家来たちだね…。そっちがその気なら、こっちも考えがあるよ」


「来て、ゲイボルグ! わたしに力を貸して!」


 ユウキが右手を高く上げて、ゲイボルグを呼ぶと、空間を斬り裂いて黒の刀身を持つ大きな槍が飛んできた。ユウキは素早く頭の上でゲイボルグを掴み1回転させると、護衛騎士たちにゲイボルグを向けて構えた。虚空から突然現れた漆黒の槍に騎士たちは怯んでいる。


「ああっ、大変なことになった!」


 アリスとフェリシアが、突然の出来事に右往左往する一方で、エヴァリーナは顔を青ざめさせている。


「不味いですわ、ユウキさんを止めないと…」

「エ、エヴァリーナ様。どうしましょう、ユウキさんが危ないです」


「いいえ、危ないのはユウキさんを囲んでいる方々です! フェリシアさん、行きますよ! アリスさんはここにいて下さい!」



「この不埒者が…。ジェックス! このふしだらな女を殺せ! 妾に対する不敬の罪だ。不敬罪は死刑と決まっておる!」

 台車上の少女が叫ぶ。護衛隊長は「ハッ!」と返事をすると、配下の騎士に「この女を殺せ!」と命令した。


「ここはスクルド共和国だよ。他国の貴族が共和国で人を殺してもいいの? 国際問題になるよ。救いようのないバカだね!」


 ユウキは、迫って来る騎士たちの剣をゲイボルグの剣先で跳ね飛ばし、空いた頭や胴体に柄や石突を叩きつけ、次々に気絶させていく。

 1対1では勝てないと見た騎士は、数人同時にユウキに襲い掛かるが、ユウキはゲイボルグを一閃させ、まとめて叩きのめした。


 僅か数分で終わった一方的な戦いの結果に、護衛隊長とナンナは茫然とする。何せフル装備の騎士が水着姿で槍を持っただけの女の子に負けたのだ。また、周囲で見ていた市民からはユウキの強さと激しく揺れたおっぱいに大きな歓声と拍手が送られるのであった。


 ユウキは、ナンナの椅子を支えている男の1人に近付くと、いきなり膝裏をゲイボルグの柄で叩いた。叩かれた男はガクッとバランスを崩し、その拍子に椅子が地面に落ちてナンナが投げ出された。ユウキはゲイボルグの剣先をナンナの顔前に突きつける。


「さあ、落としたタコ焼きを拾え。そして土下座して謝れ」


「あっちゃー、やってしまいましたわね」


 ユウキを止めようとして飛び出したエヴァリーナたちだったが、間に合わなかった。

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