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第209話 強襲! ゴールデン・テンタクルズ

 アリスの話によると、丁度今の時期はヴェルト海峡に生息するプルプが産卵のため沿岸に寄って来て、陸からでも容易に捕まえられるとのこと。トゥルーズの沿岸にも大量に接岸するが、この国ではプルプを食べる風習がないので誰も取りに行かないため、取り放題だということだった。


「おじいちゃんによると、プルプの中には100万匹に1匹の確率で「幻の黄金プルプ」がいるんだそうです。その味は至高にして究極! あたしもそれを狙いたいです」


「おわ…、黄金プルプ食べてみたい。うん、益々やる気が出て来た。でも、準備があるから、獲りに行くのは明日にしない? そうだね…、明日の朝8時にここに集合ってことで」


「はい、了解です! ユウキさん、みなさん、よろしくお願いします!」


 元気一杯になったアリスを見送って、ユウキたちも斡旋所を後にする。


「フェリシア、逃げないでよ。逃げたらお駄賃あげないからね」

「あのですね…、子ども扱いしないでください。ちゃんと来ますよ。もう…」

「ふふっ、ゴメンゴメン。じゃあまた明日ね」



 翌日、準備を整えたユウキたちは、トゥルーズから乗り合い馬車で3時間ほど移動し、海岸に来ていた。丁度引き潮の時間であったため、岩礁地帯の海岸は小さな入り江や潮だまりが多数見られる。早速全員、周囲に誰もいないことを確認して岩場の陰で水着に着替え始めた。


「ところでアリス、プルプを捕まえても焼き器は大丈夫なの?」

「はい! 父の知り合いの鍛冶師さんにお願いして、もう出来てます」

「なるほど…、準備万端って訳ね」

「はい! あとはプルプだけです」


 などと話しながら着替えを済ます。ユウキは可愛いレモンイエローのビキニ。成長した胸の大きさに合わせて手直ししたもので体にぴったり合ってる。エヴァリーナは清楚な白、フェリシアは水玉模様のワンピース。アリスは赤の地に白の縞々が入ったビキニだ。エヴァリーナとフェリシアはユウキを見て、己との胸の差に絶望する。


「ユウキさんて私と同じ17歳のはず。なのに何故、あんなにスタイルいいのかしら? あの半分でいいから私にも分けてほしい…。何気に、アリスさんも胸が大きい」

「エヴァリーナさん、貧乳も個性です。希少価値なんです。自信を持ちましょう」


 フェリシアがエヴァリーナの手を握って励ます。ユウキは(どっかできいたセリフだ)と思いながら2人を見るのであった。


 準備を済ませた4人は岩で怪我をしないよう、滑り止めを付けた厚底サンダルを履き、ヤスを持って小さな入り江になった場所に移動して海中をのぞき見る。入り江の中は茶色や赤色の大小様々な海藻がゆらゆらし、その間を小魚が泳いでいる。ユウキは岩場の上からヤスを入れて、そっと海藻をかき分けてプルプを探す。


「中々見つからないね…。んん、あ、いた…」


 ユウキが大きな海藻をかき分けると、その下の石と石の隙間ににゅるにゅる動くプルプを見つけた。慎重にヤスを近づけて胴と足の間を一気に突き刺して海中から引き揚げた。


「獲ったどー!」

「わあ、やりましたねユウキさん! 結構大物ですよ。凄い凄い!」


 アリスがパチパチと拍手してくれ、嬉しくなったユウキはプルプを掴むとグイッとエヴァリーナの目の前に突き出した。


「ほら、エヴァ、プルプ(たこ)捕まえたよ!」

「ひいっ…」


 目の前でぐにょぐにょ動くプルプを見てエヴァリーナが短く悲鳴を上げた時、プルプがぷしゅーっと墨を吐き出し、顔から胸にかけて真っ黒に染め上げた。


「…………あの」

「さーて、次の獲物はどこかなー」

「待てや、乳お化け」

「ご、ごめんなさいぃ!」


「全く何をやっているのやら…」


 エヴァリーナにべしべし叩かれているユウキを横目に、フェリシアは淡々とプルプを探している。


「あ、プルプ見っけ。そーっと、そーっとヤスを近づけて…。えいっ、やった!」

「フェリシアさん、お見事です! えっ、ぶっ…、ぶはははは!」


 プルプを捕まえたフェリシアを見たアリスがへそ下辺りを指さして大笑いし始めた。怪訝な表情をして下を向いたフェリシアが見たものは、捕まえた拍子に吐いたと思われる墨で、お股の部分が黒くなった下半身(水着)だった。


「ひゃあああああ! とんでもない所がとんでもないことにい!」


 女の子たちはきゃあきゃあ騒ぎながら、プルプを探し、捕まえて行く。捕まえる度に誰か1人は黒く染め上げられるのであった。


「10匹位は捕まえたね。プルプ焼き用の数としては十分だけど、至高にして究極の美味しさと言われる黄金プルプを何とか見つけたいな」

「うーん、あたしも見つけたいですけど、十分捕まえられたし、帰りませんか? 新鮮なうちに下ごしらえしたいし」

「賛成、賛成。プルプの黒い水で、お股の部分が黒くなって嫌なのよ。早く着替えたい」

「ぷくく、毛がボーボー生えたように見える…、あははははっ」



 ユウキは黄金プルプを捕まえたいが、アリスが帰ろうと言い、危険な部分を汚したフェリシアが泣きそうな顔で賛同し、エヴァリーナが大笑いする。ユウキも(仕方ない、帰ろうかな)と思ったとき、不意に声がかけられた。


「よお、姉ちゃんたち、何やってんだ?」


 声のした方向を見ると半袖シャツに短パンを穿いた若い男が7、8人ユウキたちをニヤニヤしながら見ている。ユウキは3人を自分の背に隠すと、ヤスを構えて男たちを睨みつける。


「プルプを捕まえていただけよ。もう帰るところだから、そこを退けてくれない?」

「プルプゥ~。またけったいな物捕まえているな? 体に這わせて遊ぶのか? 欲求不満か? げひゃひゃひゃ!」


「食べるためよ」

「プルプを食べるだと、正気か…」


 男たちが騒めくが、リーダーと思わしき男が、ユウキに近付いて舐め回す様に体を見て下品に笑ってユウキを挑発する。


「プルプより俺たちを食べてみねえか。いい気持ちにしてやるぜぇ~、おっぱいちゃんよぉ」


 仲間の男らも「うひゃひゃ」と大笑いする。その姿にユウキは嫌悪感を露にし、表情が厳しくなる。ユウキの表情を見たエヴァリーナがサッと顔を青ざめさせ、ユウキの前に出て、男たちに向かって警告を発した。


「あ、貴方たち、早くここから離れた方が良いですわよ。この女性を怒らせたらいけません。このひとの名前は「ユウキ」。リングネーム「エロボディバーサーカー」と呼ばれた、今年の大陸最強戦士決定戦の優勝者です。見た目はこんなですけど。死にたくないなら手を出してはいけません!」


「なに?」「ホントかよ」と男たちが口々に言うが、その中の1人が「オレ知ってるぞ」と言い出した。


「確か、大勢の観客の前で堂々とM字開脚しながらおっぱいポロリして見せ、対戦相手の金玉を握り潰し、尻穴をヒールでぐりぐりしてクラッシュさせたって奴だろ。そう、名前はユウキって聞いたぜ」


「ちょっと、色々間違ってるよ! M字開脚はしたけど、おっぱいポロリは対戦相手だし、玉を潰したのは槍の柄でだし、尻穴はヒールの先でぐりぐり…した」

「大体、合ってましたね」

「ユウキさんって…、美人なのに残念……」


 フェリシアとアリスが軽蔑の眼差しを送る。その視線にユウキが泣きそうになる。


「ぎゃはは、面しれえ姉ちゃんだな。俺たちにもおっぱいポロリして見せてくれよ。お前ら、女たちを捕まえろ! たっぷり可愛がってやろうぜ!」


 男たちがニヤつきながらユウキたちに近付いてきた。その時、入江の水が急に泡立ち、金色に輝く太くて大きな触手が8本水面上に現れた!


 ◇  ◇  ◇  ◇  ◇


 水面上に現れた触手の長さはユウキの身長の3倍、太さは胴の2倍はある。しかも、表面は金色にぬめぬめ輝き、多数の吸盤が2列に並んでいる。その内の1本が鞭のようにしなり、男たちを薙ぎ払った。


「おわあーー!」


 4人の女の子は悲鳴を上げてドボンドボンと海に落ちて行く男たちを呆然と見る。触手はうねうねと海面上をうねっている。胴体は海面下にあり見えないが、相当の大きさであることが想像でき、ユウキは青ざめる。


「ね、ねえ…、アリス…」

「なんでしょうか、ユウキさん」

「黄金のプルプ…って、大きい?」

「おじいちゃんは、普通のプルプより小さいって言ってました!」


「どう見てもデカいよ! あれ、プルプじゃないよ、魔物だよ。触手のお化け「テンタクルズ」だよ!」


 ユウキが触手のお化けを指さしてあわあわしていると、1本の触手が凄いスピードで迫り先端で器用にアリスのブラを外し、おっぱいを露にすると、ぎゅるぎゅると体を巻き取って高々と持ち上げる。


「ひゃあああ! あっ、やだっ! ヌメヌメ動かないでぇ…、おっぱいの先が擦れて…、やだ…、あぁああああんんっ! あっはあぁんんん…」


 触手の動きで色っぽい声を上げるアリスを呆然と見るユウキたち。その油断を突いてもう1本の触手がフェリシアの足を絡めとると、これまた高々と持ち上げ、股の間に触手を挟み入れて縦に絡まる。丁度、丸太を挟んだ格好と同じだが、異なるのは丸太と違って触手はヌメヌメと動くことだ。


「はああああ! あはぁああ…、ダメ、ダメ、動かないでぇ…。お股が…擦れて、ああっ、ヤダ、感じちゃう…。ふわああああ…んん、あんっ…、はう!」


「…………」

 アリスとフェリシアの痴態にユウキとエヴァリーナは真っ赤になりながらも目が離せない。


「はっ! いけない、いけない見とれている場合じゃない。2人を助けなきゃ!」

「エイッ!」とユウキが手に持ったヤスを触手目掛けて投げつけるが、弾力性が強くはじき返されてしまった。


「これはどうです! ウィンド・カッター!」

 エヴァリーナが何十もの風の刃を放つが、触手の一振りではじき返されてしまった。


「ああっ! はあああんん、た、たすけてぇ…。うふん、ふあぁああんん…っつ!」


 フェリシアとアリスの嬌声が響き渡る。海に落ちた男たちは股間がビンビンになり、陸に上がることもできず、2人の痴態に目が釘付けになっている。


「くっ…、このエロ触手! 喰らえ、高熱爆発魔法フレア!」


 ユウキの腕の先に形成された超高温高圧の塊が高速で打ち出され、凄まじいスピードで触手に向かうが、触手は金色の光を纏うと、ユウキの放ったフレアを弾き飛ばした。超高熱の塊は海面に落ち、その瞬間強大な衝撃波を発生させ、凄まじい爆発が起こり、周囲にいた男たちを巻き込んで激しい水柱を上げた。


「おわあああ!」


 空中に撥ね上げられた男たちは再び海中にドボン、ドボンと落ちて行く。


「な、なんですと! フレアが効かない? そんなバカな…」

「ユウキさん。あの触手、魔力で魔法防御を高めてますわ。魔法はあまり効果がないかも」

「ぐぬぬ……」


 捕まったフェリシアとアリスは顔を真っ赤にして嬉しそうに苦しんでいる。魔法が効かないなら物理攻撃しかないが…、場所は海、剣が錆びる危険がある。


「ええい、迷ってる暇はない! エヴァ、あのバケモノの注意を引いてて。わたし、剣を取って来る!」

「えっ、1人でですか。は、はい、わかりました! ウィンド・カッター!」


 エヴァリーナが魔法で触手の怪物を攻撃し始めた。今の内にとユウキは着替えをした岩場の陰に走り、服と一緒に置いていたマジックポーチから鋼の剣を取り出し、急いで怪物の元に戻った。


「エヴァリーナお待たせ!」

「ひううっ、はぁあああんん、あひぃっ、ふあああ…あん…」


 ユウキが戻るとエヴァリーナは2本の触手に捕まり体中を撫でまわされており、色っぽい悲鳴を上げている。よく見ると水着のあちこちが破られ、その隙間から触手が入り込んでいる。あまりの痴態とエヴァリーナの表情の色っぽさにユウキはガン見してしまう。


「はっ、いけない。帝国宰相のお姫様が何て事に! エヴァ、今助ける!」


 ユウキは鋼の剣を鋭く一閃させ、エヴァリーナに巻き付いていた2本の触手を切断して解放した。斬られた触手は岩場の上でグネグネと動いていたが、しばらくすると動きを止めた。


「ハア、ハア、ありがとうございますユウキさん。でも、もう少し絡みつかれてても良かったかな……」


「エ、エヴァ、変な性癖に目覚めないでね。あっ、きゃああああ!」


 ユウキの死角から這い寄って来た触手がユウキの足首を掴み、上空に持ち上げた。


「くっ、こんのおーー!」

 上半身を振って反動をつけ、その勢いで足首を掴んでいる触手を切断したユウキはドボンと海に落ちた。海中に沈んだユウキの目に、金色に光る大きな胴体と真っ赤に輝く大きな眼が映った。


(ゴボゴボ…、これが怪物の本体だ…。タコだ、大ダコの怪物だ…)


「ぷはあっ! エヴァ、みんな! この怪物の本体を見つけた。今から攻撃するから、触手が私に来ないよう注意を引いて。お願いね!」


 ユウキは、スウウ~ッと大きく息を吸い込むと、再び海中に潜り、赤く光る眼を目指し、泳ぎ出した。


(そういえば、優季だった頃、タコの弱点は目と目の間の神経叢と図鑑で読んだ記憶がある…。狙うならそこだ!)


 大ダコの弱点を目掛けて剣を構えたユウキに、大ダコの目がギラリと怪しく光った。その瞬間、強烈な渦が襲ってきた!


「ゴボッ、ゴボゴボ~(目が回るぅうう~、魔法を使うなんて反則だよぉ~)」


 竜巻のように渦巻く水流に海面上に高く持ち上げられたユウキは、くるくる回りながら落下に転じ、べシャンと大の字になって海面に叩きつけられた。


「ぐはあっ、痛たたた…。胸が潰れるかと思った」

「ユウキさん、大丈夫ですか!」


 何とか陸に上がったユウキに、ボロボロの水着のままエヴァリーナが駆け寄って来た。あちこち見えているが本人は気づいていない。


「うぐぐぐ…、おっぱいが痛いよ。もう」

「無駄におっきいからですよーだ。でも、厄介ですね、魔法まで使えるなんて。早くフェリシアさんとアリスさんを助けないと、新しい世界に目覚めてしまいそうです。何かいい手はありませんか?」


「それなんだけど、エヴァに手伝ってもらいたいの。ヤツの弱点はわかった。でも、普通に泳いで行ったんじゃ、速度が遅くて魔法で迎撃されて近づくことが出来ないのよ」

「だからね、わたしが海に潜ったら、水魔法で押してほしいの。ヤツに迎撃させる間を与えずに近づき、弱点を攻撃する。それしかないわ」


「わかりました! 私の全魔力最大威力でユウキさんを押しますわね。ユウキさんは凹凸の大きい体をしているので、水の抵抗を受けやすいと思います。きっと、速度が出ますわよ!」


「悪かったね、凹凸の大きい体で…。どうせ、乳も尻も大きいですよーだ」

「あとね、最大威力じゃなくていいから。わたしが壊れちゃうよ。ほどほどでお願いします」

「だ~いじょ~ぉぶです! さあ、準備してください! 行きますわよぉ~」


 エヴァリーナがにひひと笑みを浮かべ、手をワキワキさせている。


「ダメだ、人の話を聞いてないよ。このポンコツ令嬢……」

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