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第202話 大陸最強戦士決定戦(中編)

 1日目は2回戦まで行われる。ユウキの次の相手は黒バラの髪飾りに黒レザーの上下とガーターベルトの網タイツ、黒ハイヒールを履いた女王様。またしてもイロモノ同士の戦いとなった。試合場の中央に出て来た司会者が2人の戦士をコールする。


「2回戦第2試合、男殺しの悩殺ボディ、揺れる巨乳に目が釘付けだ! エロボディバーサーカーユウキィイイイ! 対するは煽情的な全身黒の女王様! あの美脚に踏みつけられたい男多数! サディスティッククイーン、黒バラローズゥウウウ!」


 観客席から漢どもの熱い声援が送られる。自称ユウキファンクラブの帝国兵からは「おっぱい」コールが響き渡り、女王様の視線にハートを撃ち抜かれた男たちは股間を押さえて絶叫する。会場内は既にカオスだ。子供を連れた親子連れの母親は教育に悪いと席を立ち、子供と一緒に嫌がる父親も無理やり引きずって、会場から出て行く。


「ユウキちゃんの2回戦目ですね。巨乳美少女対Sの女王様とは、今大会最大のイロモノ同士の戦いですね」

「そうですわね…、確かに教育に悪い…。でも、あんな大きな胸。羨ましいな…」


「試合開始!」


 審判がコールする。ローズは腰に装着していた鞭を取り出し、ビシッと鳴らす。ユウキは少し距離を取り、スピアを相手に向けて構える。


「さあいくわよぉ、乳デカの子猫ちゃん。女王様の鞭を受けてみなさい!」

 ローズの振り上げた腕から鞭が唸りを上げて飛んで来る!


「わあっ!」


 ユウキが鞭を避けるために横に飛んで避けようとするが、ローズの鞭はユウキの飛んだ方向に打ち込まれてくる。このため、ユウキは着地と同時に、また反対側に飛んで避けるが、鞭はユウキを追いかけてくる。


「くっそ! 鞭の動きが早くて避けるのが精いっぱい。反復横跳びしてるだけだよ、どうにかして近づかないと…」


「ふふ、お遊びはここまでよ。子猫ちゃん! はあっ!」

「ああっ!」


 ローズの放った鞭の一撃がユウキの右足首を絡めとると、ローズはグイッと鞭を引っ張った。ユウキは急に足を持って行かれたことによりバランスを崩して、ステーンと両足を大きく広げて尻もちをついたが…、


「きゃあああああーーー! 見ないでぇえええ!」


 観客に向かって見事なM字開脚をしてしまっていた。転んだ拍子にドレスのスカートは捲れ、M字開脚によって股間とそれを包む薄紫色のエロパンツが丸見えになり、観客席の漢たちは絶叫する。


「いやったああああーーー!」

「ごちそうさまでしたぁー!」

「アソコに痺れる! 憧れるゥウウウ!」


「ユウキちゃんって凄い…、凄過ぎる…。色々な意味で」

「ユウキ様、エヴァリーナは貴女を選んだこと間違ってないですよね。そうですよね…」


 常軌を逸したユウキのドエロなポーズに、エヴァリーナたちは度肝を抜かれる。


「うう~っ、このスケベ女王! 許さないんだからぁ、目に物見せてあげるからねっ!」


 ユウキは怒りと恥ずかしさで涙目になりながら立ち上がる。バカにしたように笑うローズに向かってスピアの斬撃を見舞うが、鞭の一振りで弾かれてしまい、有効打にならない。


「これならどお!」


 弾かれた勢いでスピアを頭上に掲げて一気に振り下ろす。が、ローズは鞭をぴんと張り、この一撃も防いでしまう。


「今度はこっちから行くよ子猫ちゃん! ディザスターウィップ!」

「ううっ! あっ! わあっ!」


 ローズの鞭が嵐のように渦を巻いて飛んできて、ユウキのドレスを斬り裂き、白い肌が露になって行く。致命傷こそないが、打たれた痛みで目が霞んでくる。このままではじり貧になると考えたユウキは、鞭にスピアを合わせて巻き付かせて動きを止めた。


「むぐぐ…」

「こ、このエロ子猫。放しなさい!」


 お互い全ての力を使って、鞭を引っ張り合う。ユウキはローズが思いっきり鞭を引いたタイミングでスピアから手を離した。その結果、引っ張り力が解放されたローズは思いっきり後方にたたらを踏み、体勢を崩したところにユウキの手を離れたスピアが「バシーン」顔と体に直撃する。


「きゃあ! いったーい! 痛いじゃないのもう!」


 ローズが痛みに顔を押さえている隙にユウキが接近し、ドレスの内側、太ももに帯剣していたミスリルダガーを抜いてローズの衣装、編み上げホルターブラを真ん中からすっぱりと切り裂き、すすっと背後に回って観客に向け、がばっと観音開きにブラを開いてローズのおっぱいをさらけ出した! ブルンと揺れる形の良いおっぱいに会場の漢たちのボルテージは急上昇。


「うおおおお! うおおおお!」

「おっぱい! おっぱい!」

「我が生涯に一片の悔いなしッ!」


 会場全体が狂騒に包まれ、ローズは顔を真っ赤にして「ひぎゃああーーっ!」と叫んで手で胸を隠し、しゃがみこんで泣き出してしまう。審判がローズに近寄り、戦いを継続するか確認するがローズはふるふると首を横に振る。


「クイーンローズ戦闘不能! 勝者、エロボディバーサーカーユウキィ!」


「ざまあ見さらせ! M字開脚させられたお返しだよ! やったー、2回戦突破だよー、見てたぁみんなー!」


「いいぞー! ユウキちゃんさっすがー!」「ユウキちゃんマジ天使!」

 ユウキファンクラブの帝国兵はユウキにスタンディングオベーションを送る。


「ユウキ様、最低…。あのドスケベバカどもも最悪。あれが帝国兵とは情けない…」

「正に鬼畜の所業。女の敵は女か…」

「ティラもドン引き…。ユウキ、恐ろしい子…」

 女性陣は会場に向かって手を振って喜ぶユウキを冷ややかに見るのであった…。



 2回戦も順調に消化され、フランも相手を瞬殺して危なげなく勝利した。1日目の対戦がすべて終わり、控室で帰り支度をしていたユウキにフランが近寄ってきた。


「あの程度であたしに勝つつもり? 期待外れね」

「……勝負はやってみないとわからないよ。あまり自分を過信しないことだね」


 無表情でジッとユウキを見ていたフランは、興味がなさそうに「せいぜい楽しませてね」と言って、控え室を出て行った。


「なにあれ、感じ悪い…。はあ、帰るか…」


 闘技場の入り口でエヴァリーナと護衛兵のソフィとティラが待っていたが、3人ともユウキを見る目が冷たい。


「エヴァリーナ様、わたし勝ち抜きましたよ! あ、あれ、何かわたしを見る目が冷ややかなんですけど…、気のせいかな…」


「ユウキ様。ローズさんへの仕打、あれはあんまりだと思います」

「ユウキちゃんて、結構イヤな女だったんだね…。ローズさん可哀そう」


「ええ~、確かにアレは今思うと遣り過ぎだと思うけど、わたしもいっぱいいっぱいだったし、観客に向かってM字開脚でお股全開という辱めを受けたんだよ! しかも、パンツはスケスケだったし…。精神的ダメージはわたしだって同じだよ!」

「思い出したら猛烈に恥ずかしくなってきた…。まだ、嫁入り前の綺麗な体だってのに、エッチな仕打ちを一杯されて…」


 3人に責められてユウキは段々涙目になってきて、えぐえぐ泣き出した。


「ご、ごめんなさい。ユウキ様を責めるつもりはありませんのよ。そうですわね。ユウキ様も一杯恥ずかしい思いをされたんだし、ああ、泣き止んで」

「まあ、その恥ずかしい思いは9割方エヴァリーナ様のせいですけどね…」

 ソフィーがボソッと呟き、ティラが同意とばかりに頷く。この2人は息が合う。


 ユウキがめそめそ泣いていると、エヴァリーナの護衛をほっぽり出して前列で応援をしていた宰相家所属帝国兵の精鋭たち8人がやってきて、ビシッと2列4人ずつに分かれ、ユウキに最敬礼する。


「我々、帝国第11師団第7歩兵連隊第5大隊1中隊第3小隊所属、宰相家派遣部隊は、只今を持ってユウキちゃんファンクラブから親衛隊に組織を改変致します! 親衛隊長は不肖ハイデルンが務めさせていただきます! ジーク! おっぱい!」


 親衛隊がユウキにエールを送る。通りがかりの観客たちや出店の店員が何事かと奇異な目付きを向けて来るが、彼らは意に介さない。


 帝国兵もとい親衛隊の明るさとバカさ加減に、ユウキは元気を取り戻し「えへへ」と笑いかける。美少女の泣き顔からの笑顔に親衛隊の面々はハートを撃ち抜かれる。


「ちょっと! 貴方がたはそれでも栄光ある帝国兵士ですの! 私の護衛と言う任務を放っておいて、何を考えているのですか!」

「心配は無用ですお嬢様! お嬢様にはド貧乳仲間のソフィーとティラがいます。我々も本来の任務を忘れているわけではありません! きちんと護衛の任は果たします。たぶん!」


「こ、この、ポンコツども…。貴方たち、今年のボーナスは無しですからね!」



「何をしてるんだ、あいつらは…?」

「………」

 ヴァルターとフランも遠巻きにエヴァリーナやユウキ、親衛隊の面々を呆れたように眺めるが、直ぐに興味を失って帰途についた。


 ◇  ◇  ◇  ◇  ◇


その夜…

 宿泊しているホテルの部屋の明かりを消し、ベランダに椅子を出して、星空を眺めていたヴァルターの背後にフランが足音もなく近づいてきた。


「……ヴァルター様」

「フランか…」


「あたし、ヴァルター様のために必ず勝ちます」

「3年前、帝都のスラムでドブネズミのように生きていたあたしを…、ひったくりや置引き、スリをして日銭を稼いでいたあたしをヴァルター様は救い出してくれた…。あたしを日の光の下に連れ出してくれた。あたしはヴァルター様のために戦います。必ず、優勝してご恩をお返しします…」


「俺は、お前の才に惚れただけだ。俺の財布をすった手腕は見事だった。その才能を別な部分で活かそうと考えただけだ。お前はその期待に応えてくれている」

「……明日も頼むぞ、フラン」


「はい、失礼します」



 フランはヴァルターの部屋を出て自室に戻り、寝間着に着替えてベッドに横になる。


(ヴァルター様の財布を盗んだあたしは帝国兵に追われ、スラムの中に逃げ込んだけど、帝国によるスラムの掃討を恐れた住民たちに袋叩きにされ、半死半生の状態で帝国に突き出された…。あたしは仲間と思っていたスラムの住民に裏切られた。悲しくて、辛くて、死にたいと思った。そんな時、ヴァルター様があたしの前に現れて言ったの…)


「お前の才を俺に預けろ。お前はスラムにいるには惜しい存在だ。お前が俺のために働くなら、日の光の下で生活させてやる。ただし、お前は戦闘要員として鍛えることになるが…。どうする?」


「もし、断ったら…どうなるの?」

「俺は帝国宰相の息子だ。その財布をスッたんだ。極刑しかなかろう」


「お前の名前は?」

「フラン…」

「フランか…いい名だ。俺はヴァルター。さあ、ここから出してやろう。お前は日の下で生きるのが似合う。俺と一緒に来い。そして、人間として生きるんだ」


「ドブネズミじゃなく、人間として生きることが出来るの? 本当に? あたしを助けてくれるの?」

「助かるかどうかは、フラン次第だ」

「あたし、ヴァルター…さまと一緒に行きます」


「そうか、では来い。まず、体を洗って綺麗にしなければな。お前は女の子なんだから」

「女の子…」


(それから、あたしはヴァルター様の訓練を受けて戦士になった。誰もが一目置く「疾風フラン」の異名も貰った。ヴァルター様はあたしの命…。必ず恩を返す。だから誰にも負けない…)


 フランもまた、自分の想いを胸に秘め、明日に向かうのであった。

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