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第200話 大陸最強戦士決定戦(前編①)

 大陸最強戦士決定戦が開催される日がとうとうやって来た。グランデ・ホテルの貴賓室ではエヴァリーナと2人の女性兵士ソフィとティラが、別室で着替えをしているユウキが来るのを待っている。


 エヴァリーナたちが大会のしおりを見ながら話をしていると「準備が出来ました」と本日の主役、準備を整えたユウキが入って来た。


 3人は、ユウキの姿を見て「ほお~」とため息をつく。ユウキのバトルドレスは、魔力で防御力を高めた青をベースに色鮮やかな花柄があしらわれたセクシーチャイナドレス。胸元は大きく開き、大きな胸の谷間が色っぽく覗いていて、超ミニスカートの脇は腰から下の部分がスリットになっていて、歩くたびに薄紫色のエロい下着がちらちらと見えている。靴は黒のハイヒールで武器は鉄製のスピア。


「エヴァリーナ様、何ですかこの衣装は! これじゃあただの痴女ですよ! なんでラミディアまで来てエッチな格好をしなきゃならないの。(かつてのマヤさんと同じカッコ…、エロさはこっちの方が何倍も上だよ~。トホホ…)」


「い、いやー、ここまでエロいとは…。すみませんユウキ様。ユウキ様と我が帝国兵との訓練を見ていたら、私の妄想が炸裂してしまって特注をしてしまいました。でも、大丈夫です。襟に装着されている魔法石の力で、防御力は並の鎧以上との話ですよ」


「こ、このポンコツ令嬢…。全然大丈夫じゃないよ、コレ!」


「ユウキ様って、私と同い年なのに凄くエロい体していますね…。おっぱいは大きいし、腰も細くてお尻も程よい大きさで形もいい。正にぼっきゅんぼんって体形で羨ましすぎます」


「でも、こんな衣装じゃ、男の人前かがみになって戦えなくなるんじゃない?」

 エヴァリーナの護衛に着くソフィとティラがユウキをまじまじと見て言う。


「ソフィさん、素面でそんなこと言わないで。もお、恥ずかしい…」


「ふっふっふ~、それも狙いの一つです」

 エヴァリーナが胸を張って戦略自慢をする。しかし、胸を張ってもユウキに遠く及ばないのが寂しいところ。


「それから、ユウキ様のリングネームは「エロボディバーサーカーユウキ」で登録していますので!」

「何てことしてくれるのよ! あの星空を見て悲しそうに思い出を語っていたエヴァリーナ様はどこ行ったの! 幻だったの!」


「あ、エヴァリーナ様、時間です。会場に向かいましょう」

「ちょっと…、ちょっと待って。エヴァリーナ様、わたしこの格好で行くの? ヤ、ヤダよ、これじゃ露出狂だよ。何か羽織る物ないの?」


「ユウキ様、マントです。これを羽織って下さい。じゃあ行きますわよ」


「そう言えば、我が宰相家の恥ずべき兵士たちはどこに行ったのですか? 姿が見えないようですけど」

「さあ、そう言えば姿が見えませんね…」


 エヴァリーナと2人の女性兵士が首を傾げるが、ユウキは何となく予想がついてしまっていた。


(絶対会場にいるハズ…)


 闘技場に着くと既に大勢の来場者で賑わっていた。周辺には何軒もの飲食店や土産物屋が出店していて、親子連れや観光客の姿も多く見える。


「ユウキ様、手続きは済ませておきましたわ。後は時間が来るまで女性用選手控室で待機していてください。私たちは貴賓室で応援しています。頑張って下さいね」


「……わかりました。最善を尽くします」


 ユウキはエヴァリーナたち3人を見送り、闘技場内に入って控室の扉を開けた。室内には5人の女性出場者がいて、その中に2年連続チャンピオン「フラン」もいる。フランはユウキをちらと見たが、直ぐに興味を失ったようで窓辺の椅子に座って外を見ている。


(フラン…、あなたを倒してヴァルター様の目を覚まさせる。それがエヴァリーナ様の願いだから。覚悟しておくことね…)


 ユウキは控室の片隅に立って、静かに闘志を滾らせる。衣装の事は考えないことにした。自慢の体を大勢の観客に見せつける覚悟も出来た。ゆっくりと瞑想しながら時間が来るのを待つ。ユウキは槍術は剣ほど得意ではないが、マヤの戦い振りを思い出し、頭の中でシミュレートする。ゲイボルグは決勝戦まで温存するつもりだ。それまでは訓練で愛用してきた鉄製のスピアを使うと決めている。


 ユウキが瞑想を始めて30分程度たった頃、控室の扉が開いて係員が呼びに来た。ユウキは頬を軽く「ぺしん」と叩いて気合を入れ、出場選手紹介場所に向かうのであった。


「間もなくですね、エヴァリーナ様」

「ええ、ソフィとティラも精一杯応援して下さいね」

 エヴァリーナたちがワクワクしながら待っていると、1人の男が近づいてきて声を掛けて来た。


「エヴァリーナ」

「お、お兄様…」


「以前忠告したはずだぞ。お前が誰を連れてこようが「疾風フラン」に敵うヤツがいる筈がないと。いいか、宰相家の跡取りに相応しいのはこの俺だ。身の程というものを思い知れ、穢れた血のクズ女が!」


「………お兄様、お兄様にお願いがあります。もし、私の連れて来た選手がフランに勝ったら、私の話を聞いてください」


「なに? フランが負けたらお前の言う事を聞けと言う事か?」

「いいえ、違います。私の話を聞いていただきたい。それだけです」


「ふむ…、いいだろう。万が一にもフランが負けるわけがない。無駄な約束だが、お前が条件を出してきたなら俺も出させてもらう」

「何でしょうか…」


「お前の選手が負けたら継承権を放棄して宰相家から出て行け。それだけだ。これを飲めないというなら、お前との約束も無しだ」

「……わかりました。その条件、お受けいたしますわ」

「ハーッハッハァ! これでようやく穢れた血の妹の顔を見なくて済む。ハーッハハ!」


「何あれ…、やな感じ」


 貴賓室の別ブロックに去っていくヴァルターを見送りながら、ソフィとティラが呆れたように言う。エヴァリーナは(ユウキ様、私はお兄様を立ち直らせたい。必ず勝って…。お願いします)と心の中でユウキに語り掛けるのであった。


 そうこうしているうちに、いよいよ選手の紹介が始まる時間となった。司会の男性が上がり、魔道具で光らせたスポットライトが試合会場を照らす。盛大なファンファーレが会場内に鳴り響いた。


「あ、選手紹介が始まりますわ。えーと、プログラムによると1人ずつリングネームで紹介されて入ってくるみたいですね」


「レディース&ジェントルメン! 只今より大陸最強戦士決定戦を開催します! さあ、今回、戦いに赴く最強の戦士たちを紹介しまーす!」

「1番目は筋肉を愛し、筋肉に情熱を注ぎ、筋肉の力で全てを破壊する。仮面の筋肉ファイター「マッスルマスク」ぅううーー!」


 うおおおお!という声とともに、身長2mを超えるボディビルダーが登場してきた。その暑苦しさに女性客はドン引きするが、子供たちには大人気。大きな声援が飛んでいる。

 マッスルマスク以降も次々と選手が呼び出されていき、エヴァリーナは1人1人チェックしている。


「マッスルマスク~!? やだなあ筋肉お化け、暑苦しそう…」

「ふふ、ソフィ、ティラ、私も同感です…。逞しい男性は女性の憧れですけど、限度というものがありますよね」


「2番目は殺人ピエロのハーメルン。3番目は全身タイツのデスゴッド。やだ、2人とも股間がもっこりしてますわ」


「4番目は女性ねっと…、黒バラの髪飾りに黒レザーの上下とガーターベルトの網タイツ、そしてハイヒールって女王様じゃない! リングネームは「クイーンローズ」。見た目そのまんま…」


「5番目は見た目ただのおじさんですね。えーと、いやだ「痴漢者トム」ですって! 何ですか「痴漢者」って、なになに、「女性のおっぱいをモミモミするのに命を懸ける男」って…、これ警備隊案件じゃないんですかー?」


「エヴァリーナ様、何かイロモノばっかりですね、想像していたのと違う…」

「ええ、せっかくユウキ様にインパクトのある衣装を用意したのに、強烈な出場者ばっかりで埋もれてしまいそうですわ」


「でもでも、ユウキちゃんの衣装はインパクトあり過ぎだと思いますよ。あれは流石にないと思いますもん。わたしは絶対無理です。アレを着られるユウキちゃんは凄いと思う」

「ソフィ…、そうですね。私たちもユウキ様を信じましょう」

「(何か、目的が違ってきているような…)あ、次はユウキさんみたいですよ!」


「15番! 男を殺す悩殺ボディ! 全身エロの狂戦士、エロボディバーサーカーユウキィイイイ!」


 司会者がステージ袖を指して、高々とコールする。スポットライトに照らされた袖口からマントを羽織ったユウキが顔を真っ赤にしながら入場してくる。そして、試合場の中央に立つと、ゆっくりと首辺りのボタンを外し、ブワッとマントを上に放り上げた!


 マントの下から現れたのは、セクシーチャイナドレス姿のエロボディ。開いた胸の部分からビッグなおっぱいの谷間が色っぽく覗き、超ミニのスカートからは薄紫色のエロい下着がちらちらと見え、脇のスリットから美しい腰の曲線がこれでもかと色っぽさをアピールしている。


 会場からは「うぉおおおお!」という雄叫びと「見ちゃいけません!」と子供の目を塞ぐ母親の叫びが聞こえて来る。ユウキは開き直って、両手を後ろに回し、グッと胸を張る姿勢を取った。これでもかと強調されるビッグバストに会場の狂騒は一層大きくなる。


(くう~、恥ずかしい、恥ずかしすぎる。学園祭の美少女コンテストより恥ずかしいよぉ…。ん、あれ、あの人たちは…?)


 ユウキが気づいたのは、エヴァリーナが連れて来た帝国兵の皆さん。前列に陣取って、ユウキに向けて、「ウォオオオオ! ユウキちゃーん! ユウキちゃーん!」と叫んでいる。


(あはっ、やっぱりいた。応援に来てくれたんだ、帝国スケベ兵のみんな。よーし、サービスしちゃうか)


 ユウキは、両腕で胸を下から支え、彼らに向かって、少し前傾姿勢になり、胸の谷間を強調して見せつけ、投げキッスとウィンクをする。


「最高だよユウキちゃーん! おっぱい天使最高ー! おっぱい!おっぱい!うおおー!!」


 帝国兵の絶叫が会場を支配する中、ユウキは手をひらひらと振って、他の出場者の方へ去っていった。


「あの、ドスケベバカども…。朝から姿が見えないと思ったら、私の警備を放り投げて会場の場所取りをしてたんですね。もう、全員の給料3割カットの刑です!」

「エヴァリーナ様、完全に激おこね。しかし、ユウキちゃんエロいな~、とても年下とは思えないよ。それに完全に開き直ったみたいだね」

 ソフィーが感心したように言い、ティラも同意とばかりに頷く。


「さあ、32番、最後は2年連続チャンピオン!「疾風フラン」だー! 過去誰も成し得た事のない、前人未到の3連覇なるか、それとも誰がフランを倒すのか! 楽しみだぁあああっ!」


 司会者の絶叫コールがされると、舞台袖からフランがゆっくり出て来た。ユウキは改めてフランを見る。身長は150cm位でユウキより頭一つ小さく起伏の少ない細身の体形。姿はオーソドックスな軽戦士スタイルで魔物の皮を素材としたと思われる軽そうな鎧に金属の胸当てを装備している。武器はショートソード2本、いかにも速さと手数に優れたアタッカーという感じだ。


 フランがステージの中央に立ち、ショートソードを持った右手を高く上げる。その姿は流石チャンピオンと思わせ、威風堂々としている。そして会場からは凄まじい声援が送られる。大人も子供もフランが今年もチャンピオンを取ることを信じて疑わない。ファンにとって、フランはヒーローで他の出場者はフランの引き立て役なのだ。


(フラン…、わたしをただのイロモノ女と侮ると痛い目見るからね。エヴァリーナ様との約束、必ず守る。わたしはあなたに勝つ!)


「フラン、絶対優勝するんだ。お前が優勝すれば、誰もが俺を見てくれる…。必ず勝て」


 ユウキは大きな胸の奥に密かに闘志を燃やし、ヴァルターもまた、フランの勝利を信じて疑わなかった。

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