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第163話 フェーリス救出作戦

「みんな、準備はいい?」


 ユウキの確認の言葉に全員が頷く。今は深夜。王宮の警備が一番手薄になる時間帯だ。


「じゃあ最終確認をするよ。まず、ララがエクスプロージョンで王宮の門を破壊する。できるだけ派手にやってね。カロリーナはララの護衛。助さんと格さんは、破壊された門から王宮に突入して暴れまわって混乱させていって。フェーリス様を救出したら念話で話しかけるから、その合図で撤退ね。」


「ボクとマヤさんは裏口から王宮内に侵入し、地下牢を目指す。いい?」

「では、作戦開始!」


 ユウキの合図で、全員が持ち場に着く。まもなく助さんの頭の中にユウキが準備完了と呼び掛けて来た。


『ララ嬢、向こうは所定の位置に付いたようだ。始めてくれとさ』

「りょーかい!」


 ララは目立たない様に黒い服を着ている。周囲の安全を確認して立ち上がると、エクスプロ―ジョンの準備に入った。


「エクスプロージョン!」


 王宮の門の上に出現した巨大な魔法陣に警備兵が驚いていると、魔法陣が一気に収縮して大爆発が起こり、壮大で華麗な門が木端微塵に吹き飛んだ。爆発の轟音で、就寝していたマルムトと同衾していたアイリが飛び起きる。


「一体何事だ! 何が起こった!」

 マルムトが大声で叫ぶと、マグナが部屋に飛び込んできた。


「マルムト様、何者かが魔法で王宮の門を破壊したようです!」

「何だと! 門が破壊されただと! バカを言うな、この世にそれほどの威力がある魔法があるものか。本当なら一体誰の仕業だ!」


「マルムト様!」

「今度はなんだ!」

「破壊された門から魔物が侵入してきました! 数は2体、スケルトンです」


「スケルトンごとき、さっさと排除しろ!」

「ですが、そのスケルトンは普通ではなく、騎士団兵では相手になりません。しかも魔剣を持っていて、掠り傷を負っただけで死ぬ兵士もいるんです!」

「マルムト様、私が行ってまいります。アイリ、マルムト様を頼むぞ」


 そう言うとマグナは、配下の兵を連れて、マルムトの部屋から出て行った。


「マルムト様、お召し替えを…」

 アイリがマルムトを着替えさせるため、別室に案内する。マルムトは、怒りに顔を震わせ、絶対に首謀者を逃がすなと兵士たちに厳命した。


「向こうは上手くいったみたいだね。ボクたちも行こう!」


 ユウキとマヤは正門の混乱で手薄になった裏口から、王宮内に侵入した。


「マヤさん、闇雲に走り回っても時間の無駄だと思う。誰か捕まえて聞き出そう。」

『はい。私もそれがいいと思います』


 ユウキたちは見つからない様に慎重に進むと、1人の警備兵を見つけた。幸い周りに他の兵はいない。ユウキとマヤは頷き合うと、ユウキは気づかれないようにゆっくりと兵士に近付き、身体拘束の魔法をかけた。


「ぐうっ! 一体なんだ、急に体が動かなくなったぞ」


 兵士が、顔を上げると目の前に黒いセクシーチャイナドレスの装いに黒のハイヒールを履いた美女が自分に大きく鋭い槍を向けていた。


『大きな声を出したら、この槍で突き殺します。私たちの言うことを聞けば命までは取りません。どうします?』

「わ、わかった。い、言うことを、聞く…」


 兵士がやっとのことで返事をすると、目の前に黒い髪をした美少女が現れ、白銀に輝く剣を向けてきた。


「く、黒い髪。ま、魔女…」

「地下牢はどこ? 場所を教えて」

「ち、地下牢は、この廊下を真っ直ぐ進み、2つ目の交差通路を左に行くと、外の警備区域に出る。その中にある拘置所の地下だ。は、話したんだから助けてくれるんだろ」


 マヤは、槍の石突で兵士の腹を思いっきり突いて気絶させた。2人はその兵士を人目に付かない場所に隠すと、教えられたとおりに進み、外の警備区域に出た。よく見ると2階から3階建ての建物がいくつか並んでいる。


「拘置所はどこだろう。似たような建物で分からないな」

『ユウキ様、あの建物ではないですか。あの建物だけ窓に鉄格子がはめ込まれています』


「うん! きっとそうだ、急いで行ってみよう。兵士がいたら片っ端から拘束魔法で動けなくしよう」

『りょーかいです!』



「どうしたんだろう? 外が騒がしいな…」


 フェーリスが、外の喧騒に気づき、訝し気に明り取りの窓の下に行く。その時、鉄格子の扉が開く音がして、振り返ると2人の牢番がニヤニヤ笑いながら入って来た。フェーリスは身を固くして牢の隅に移動する。


「何なんですか、あなたたち。処刑は明日のはずでしょう。私に何用なのです!」

「グフフフ、気の強いお姫様だ。確かアンタは明日処刑されるんだったな。たから可哀そうだと思ってね」


「可哀そうって何がです」

「ハハハ、お姫さん、まだ男を知らないだろう。処女のまま死ぬなんて可哀そうだと思ってねぇ、俺たちが男の味を教えてやろうって訳さ」


「ひっ…! い、嫌です。止めて…、来ないで…、誰か、誰か助けて!」

「ハハハ、誰もこんな所に来ねえよ。俺たちが無知なお姫様にお慈悲を与えてやろうってんだ。有難く受け取りな」


 牢番の1人が剣を抜き、フェーリスの制服を切り裂いた。下着姿になったフェーリスを値踏みするように見る。


「へえ、お姫様はおっぱいが小さいですなあ。仕方ない、アソコとお口で楽しませてもらいましょうか。お姫様の味ってのはどんなでしょうなあ」

 兵士たちが卑下た笑いを浮かべて近づいてきた。


「イヤ…、止めて、近づかないで…、ひうっ…」

 フェーリスが恐怖に立ち竦み、目から大粒の涙を流す。その姿に興奮した1人がフェーリスに手を伸ばした時、「ドスッ!」と音がして、牢番の体を槍が貫いた。


「ぐ、ぐふっ…」

「何だ! どうした!」

 槍に貫かれて倒れた同僚に、もう1人が目を向けた瞬間「この外道!」と女の声が聞こえたが、既に牢番の首は斬り飛ばされていて、その目は声の主を捕らえることはなかった。


「フェーリス様。助けに来ました!」

「ゆ、ユウキ様? ユウキ様! ユウキ様ぁ~、あ、ああ…、うぁああああああん」

「もう大丈夫、泣かないでフェーリス様。さあ、早くここから逃げましょう」


 フェーリスにシーツを巻いて身体を隠すと、マヤが先行して地上へ続く階段を駆け上がり、その後をユウキとフェーリスが手を繋いで追って拘置所内から外に出た。


『ユウキ様! 裏門に急ぎましょう』

「うん! フェーリス様、大丈夫ですか」

「は、はい、何とか」


 裏門の手前まで来た3人の前に、白装束に槍を構えた男たちが大勢立ち塞がった。その中から2人の男が進み出て来た。


「いけませんなぁ、罪人を連れ出してもらっては…」


「誰? 貴方たち」

 ユウキはフェーリスを背中に庇い、相手に尋ねる。マヤもユウキの隣に来てゲイボルグを相手に向けた。


「人に名前を尋ねる時は自分から先に名乗るのが礼儀ではありませんか? まあ、いいでしょう。私は「新世界の福音」の大司教イズルードと申します。お見知りおきを」

「この者は私の部下、司教のゲラドです。あなたとは一度会ったことがお有りでしょう」


 イズルードの言葉にユウキは訝し気にゲラドを見て、ハッと気が付いた。


「思い出した。中央広場でボクを異端者呼ばわりしたヤツ!」

「お前たちだな! マルムトと結託して、王都を混乱に陥れた教団というのは」


「本当ですか! この男たちがお父様とお母様を…」

 フェーリスが憎しみを込めた目で、イズルードたちを見る。


「ははは、そんな目で睨まれても困ります。私たちはこの国に、いや、この大陸に新たな秩序による新たな世界を構築しようとしているのです」


「新たな世界を作るというのは大変でしてねぇ。まずは愚かな民衆たちから支持を得る必要があるのですよ。そのために国を混乱させ、民衆を苦しめた悪となる存在が必要でしてね。少し噂を流させていただきました。いや、効果は絶大でしたよ。民衆は愚かにも、王家が悪の存在を擁護していたと信じ、国王夫妻の処刑は大いに盛り上がりましたからね」


 イズルードの話にフェーリスは耳を塞いでしゃがみ込んでしまった。ユウキはフェーリスを立たせて、イズルードを睨む。


「さあ、その悪とは誰の事でしょうか。ゲラド、教えて差し上げなさい」

「はい大司教様。その悪とは……、黒い髪をした魔女、そこにいる女です!」


「黙れ! ボクは魔女じゃない!」


「グハハハハ、黙るのはお前だ、魔女め! お前は死人を生き返らせたではないか。魔女でなければ悪魔だ! 異端者め!」

「王宮の正門付近で暴れているスケルトンもお前の手下だろう。そこの女も普通ではないな。生者の気を感じない…。お前、不死者ゾンビだな」


『!』

「……。ボクは魔女じゃない。ただの女の子だ…」


「誰が信じるか! 黒髪の魔女め、アンデットを使役していることが何よりの証拠! 王家を操って国を荒らした罪は重いぞ。その罪、万死に値する!」

 ゲラドがユウキを大声で糾弾し、信者たちに向かって命令した。


「信者たちよ、あの魔女とフェーリス王女を捕らえろ」

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