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第155話 カロリーナ家族との再会

 政変に伴い、第1騎士団は王都に戻ることが出来なくなり、第6騎士団の本拠地であるリーズリット市の近郊にあるアクーラ要塞に入ることになった。民兵隊と学園生徒たちもアクーラ要塞で待機するため、引き続き騎士団に同行している。ただし、混乱を防ぐため、政変の話は騎士団上層部以外には伏せられていた。

 なお、リーズリット市に家や別荘がある生徒は一時的に帰宅を許された。また、傭兵隊とダスティンたち一部の民兵もリーズリットの冒険者組合に向かった。


 ミザリィ平原からアクーラ要塞とリーズリット市まで徒歩で約3日。負傷兵も多いことから歩みは遅くなり、5日は掛かるだろうと第6騎士団司令部では見ていた。途中の町で休憩中、ゼクスとビッグスの元にマクシミリアンがやって来た。


「王都の様子について何かわかりましたか」


 心なしかマクシミリアンの顔色が悪い。ビッグスは、第6騎士団から偵察兵を派遣したこと、情報が集まるまで数日は掛かることを説明する。


「そうですか…」

「マクシミリアン様、そう気を落とさずに。王都にはルーテ率いる親衛隊もいます。きっと国王様ご一家をお守りしているはずです。情報を待ちましょう」

「ゼクス団長…。そうですね、焦っても仕方ない。ありがとうございました。では、失礼します」


 マクシミリアンが敬礼して、2人の元から退室すると、ゼクスとビッグスは騎士団として今後どのように対処していくのか全く考えが整理できず、深くため息をつくのであった。



 ユウキたちは、フィーアの提案により、リーズリット市にあるオプティムス家の別荘に投宿することにして本隊から離れて移動していた。周りを見ると同じように南へ向かう生徒が結構いる。リーズリット市まであと1日という所で思いがけないものに出会った。


「あれは何だろう? 凄い隊列だね。西に向かっているよ」

『ユウキ様、私が見てまいります』


 マヤが隊列まで駆けて行く。しばらくして戻って来ると、カロリーナとユーリカに向かって笑いかけた。


『カロリーナ様、ユーリカ様。あの隊列はハウメアーの方々です。魔物との戦争が終わったのでハウメアーに引き返す所だそうです。お二方のご家族のご無事も確認してきました』


「よかったね、2人とも。早速行ってみようよ!」

「う、うん」


 ユウキに手を引っ張られカロリーナが走り出す。ララとシャルロットが着いてきて、ユーリカにはフィーアとヒルデ、ルイーズが一緒に着いていった。


 先行したマヤが「こっちこっち」と言って大きく手を振っている。カロリーナがドキドキしながら行ってみると、父母に兄、可愛い弟、妹が無事な姿で迎えてくれた。


「ううっ、ふ、ふえ…、ふえぇんん!」


 カロリーナは家族全員の顔を見た瞬間、嬉しさで胸が一杯になり、母親に抱き付いて大声で泣き出してしまった。お父さんやお兄さんたちもカロリーナを優しく撫でて、再会を喜ぶ。それを見たユウキたちも思わずもらい泣きをしてしまった。


(カロリーナ、よかったね。ホントによかったね)


 カロリーナが泣き止んだ頃、ユウキたちの元に熊のような大男が3人「よお!」と言って近寄って来た。


「あ、三連星の人たち」

「ありがとう! あなたたちが家族の皆を守ってくれたんだってね。本当にありがとう」

 ユウキの声にカロリーナがガイアたちに走り寄り、しっかりと手を握ると、涙を浮かべて感謝の言葉を送った。


「やめてくれ、お嬢さん。俺たちはお嬢さんに恩がある。その恩に報いただけさ」

「でも、あなたたちの仲間は私の家族を逃がすため、ガルムと戦って死んだって…。恩に報いたってだけじゃ済まないよ…」

「いいんだ、カロリーナお嬢さん。俺たちはお嬢さんと旦那様たちを何としても会わせたかった。そのために頑張った。それだけだ」

「うん、ありがとう。ガイア、オルテガ、マッシュ。本当にありがとう。もう、あなたたちも私の家族だよ。これからもお父さんたちを助けてね」


 ガイアたちは「ああ」と言って照れ笑いをし、カロリーナも「えへへ」と笑顔を返した。


「ね、ユウキ。アレが「体の絆」の人たち? いい人じゃない」

「うん、根はいい人なんだよね。でもボク、男同士だけは嫌だな…。あ、でも、ガイアさんは貧乳女子は大丈夫っぽいよ。シャルなら受け入れてくれるかも」

「や~め~て~よ~。あたし、毛深い人苦手なんよ」


 カロリーナはガイアたちと再び家族の元に行って話し始めた。楽しそうに話すカロリーナを見るユウキたち。ユウキはこの世界に転移して両親と別れ、姉とも死別したため、血の繋がった家族はいない。


(カロリーナ楽しそう。家族っていいな…。でも、ボクにはマヤさんがいる。助さん格さんもバルコムさんやダスティンさんもいる。みんなこの世界の大切な家族。寂しくなんてない)

 ユウキは側に立つマヤの手をそっと握るのであった。


 家族と話し終えたカロリーナは両親に手を振って戻って来た。


「お父さんたち、家と畑を早く復旧させるため急いで戻るんだって。私たちもユーリカたちと合流してリーズリットに行こう」


 カロリーナが元気いっぱいに言う。ユウキたちも「おー!」と手を上げてユーリカたちの元に向かった。ユーリカもまた、家族の無事が確認できて嬉しそうだった。



「そう言えば、どうして王都に帰らないでリーズリットに行くことになったのかな? フィーア、何か聞いてる?」


「それが私にも良く分からないんです。普通に考えれば第1騎士団は王都に凱旋するはず何ですけどね。第6騎士団と一緒にアクーラ要塞に行くなんて、王都で何かあったんでしょうか…」

「うーん、何だろうね。リーズリットに行けば何か分かるかな」

 ユウキたちは、何が何だか良く分からないまま、フィーアの別荘へ向かうのであった。


 リーズリットはロディニア王国の最南端にある人口8万人ほどの市だ。海に向かって開けており、漁業と南方大陸との交易が主要な産業となっている。高等学園が臨海学校を行う海岸もリーズリットの市域に入っており、ユウキたちにはなじみが深い場所だった。ちなみに、この地域は温泉の源泉があちこちにあり、温泉目当ての観光業も盛んである。


「ふう…、やっと着いたね。フィーアの別荘はどこなの?」

「あの高台の所です。もう見えてますよ、あと少しです。実はですね、別荘には温泉が引いてあるんですのよ。しょっぱいつるつる温泉ほどではないですけど、いいお湯です。楽しみにしてくださいね」

「おおー、着いたら早速みんなで入ろうよ。温泉大好き!」

 ララのテンションが爆上がりだ。


 急な坂道をヒイヒイ言いながら登り、フィーアの別荘に着いた。メイドさんたちに荷物を預け、早速お風呂にに入ることにした。女9人、ワイワイと賑やかに浴室で体を洗って湯船に浸かる。


「ふああああ…、いいお湯。疲れが溶けだして行く感じ…」

「ホントに、これはこれでいいですねぇ」

「温度も丁度良くて、温まるぅ~」

「……………」


「カロリーナ、どうしたの?」

「マヤさんの爆乳は、いつ見ても凄いわね…」

『108cmありますよ』

「ぐはっ! ついに100cm超えが現れた…。ユーリカ、アンタは?」

「残念ながら98cmで100cmにあと一歩届かずです。ユウキさんは?」

「んと、少し前に測ったら89cmだった。ちなみにヒルデは88cmだよ」


「あ、アンタらは牛か? なんで大きくなってんのよ、このメス牛ども。乳お化け!」

「さあ、ララ、シャルロット! 行くよ、私たちのサイズは…」

「78、78,77!」

「3人合わせて、絶壁シスターズ! あ~っはっは! 去年から全く成長していない!」

 カロリーナの悲しい叫びが浴場に響き渡る。


「ルイーズさん、私たちは大きさよりも胸の美しさで勝負です。美乳こそ女の全て」

「はい! フィーア先輩。大きさこそ80前半台の私たちですが、形と乳輪の美しさならだれにも負けません! 大きいだけ、小さいだけの方々には負けませんよ」

「その意気です! ユウキさんは大きさも形も最高ですが、乳輪の色がやや濃い目です。マイナスポイントですね」


(うう…、仕方ないよ。ボクとお姉ちゃんは異世界から来た日本人だもん。肌の色が白いって言っても、日本人の中ではの話だし、どうしてもメラニン色素は、白人系のこの世界の人たちより多いもん…。でも、フィーアたちとそんなに変わらないと思うけどな)


 ユウキは顔半分まで温泉に浸かり、ブクブクと息を出しながら心の中で呟く。


 ユウキはフィーアやユーリカたちからそっと距離を取って、自分と彼女たちの肌や胸の先の色を見比べていると、マヤがスッと寄ってきて優しく囁いた。


『ユウキ様、何も気にすることはありませんよ。ユウキ様はこの中で一番お美しいお方です。自信を持ってください。それに、ユウキ様は皆様より肌が物凄く綺麗ですよ。張りがあって、若々しく、すべすべもちもちです。小さい頃からそうでしたけど、今も全然変わりませんね。不思議です』


「そ、そう? マヤさんに褒められると自信が出るなあ(日本人の女性の肌の美しさは元の世界的では有名だったからね)」

 機嫌の直ったユウキは、カロリーナに自慢の胸を見せつけ、悔し涙を流させて満足するとお風呂から上がるのであった。


「ふう、気が済んだ。えへへ」



 お風呂から上がって、魚介類を豊富に使った食事を頂いた後、寝室に案内された。寝室は4人部屋で、大きななベッドが2つずつ向かい合わせで並んでいる。ユウキはララ、カロリーナ、マヤと同じ部屋だった。


「さすがに貴族の別荘だね。何もかも庶民の私らとは格が違うわ」

「ホントだね。行軍続きでずっとシートを敷いた地面の上で寝てただけだったから、こんなふかふかのベッドで寝られるなんて嬉しいよ」


「さあ、もう寝よう。疲れちゃった」


 ララの一言で全員ベッドに潜り込み、早めに休むことにした。しかし、ユウキは中々寝付けず、何故騎士団が王都に行かないのか、自分たちもアクーラ要塞に行くように指示されたのか、ずっと考えていた。


(なんだかイヤな予感がするのは気のせい? ボクの予感、良く当たるから心配だな。フェーリス様に何事もなければいいけど…)

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