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第149話 ミザリィ平原の戦い(中編)

「おい、戦況はどうなっている」

 第6騎士団長ビッグスが配下の兵に声をかけた。


「はっ、先行した偵察兵によると数に劣る第1騎士団は苦戦を強いられているようです。また、伝説級の魔物が複数現れ、大分被害が出ているようです。戦線崩壊の危険ありとの報告が入ってます」


「今の進軍速度だと、戦線到着はいつだ」

「あと1時間はかかるかと…」


「そんな悠長なことを言っている余裕はないな。よし、フローラ、お前は全ての騎馬連隊を率いて、敵右翼に突入しろ。敵の密集陣の一つ一つは数が少ない。各個撃破するんだ。それと、オレたちのとっておき、弓騎兵も連れて行け。騎射攻撃で一気に戦局を挽回する」


「わかりました。直ちに出撃します!」

「騎兵全体の指揮はお前に任す。ただし、無理はするな」

「わかってますよ、ビッグス団長。では、行ってきます」


「オレたちも急ぐぞ! 第1騎士団を救うのはオレたち第6騎士団だ! 魔物どもを1匹残らずブチ殺せ! 王国最強はオレたちだ! オレたちの国に侵攻したことを後悔させてやれ!」


 ミザリィ平原の戦場に第6騎士団1万3千5百が到着した。そして今、窮地の第1騎士団を救い、魔物を殲滅するため、鬨の声を上げ突入を開始した。


「おい、ダスティン、向こうから騎馬兵が来るぞ!」


 仲間のドワーフの声にダスティンが顔を上げてみると、多数の騎馬兵が土煙を上げて敵陣に突入し、魔物を蹴散らしている様子が見えた。


「第6騎士団が来たんだ。これで一気に戦局を挽回できる。落とし穴はどうだ?」

「おう、出来たぞ。あとはバレない様に蓋をするだけだ」

「ダスティン、仲間がバケモノ馬を誘導してきたぞ!」

「よし! 全員配置に着け。バケモノ馬め、皮を剥いで武具の材料にしてやるぞ。待ってろよ…」


「来たぞ、ダスティン!」

「よし、バケモノ馬と落とし穴と俺たちが一直線上になるようにするんだ!」


「グホオオオオオオ!」と巨大な人喰い馬ディーノスが唸りながら真っ赤な目を光らせて走って来る。見ると口に騎士団兵を咥えている。どうも若い女兵士の様だ。ダスティンは事切れている女兵士と自分の家に下宿している娘たちを重ね合わせ、ディーノスに対して怒りが沸々と湧き上がるのを感じた。


「投げ斧を放れ! バケモノ馬を俺たちの前に誘導するんだ!」


 ダスティンたちが投げ斧を投げ、何本かディーノスに当たる。ディーノスは咥えていた女兵士を離し、怒りに燃えた目をドワーフたちに向けて来た。

 ディーノスが大きな口を開けながら突進し、投げ斧を放るダスティンたちの目前まで迫った時、足元の地面が崩れ、前足が深い穴に落ちて身動きが取れなくなった。ディーノスは苦しそうに咆哮し、左右に首を振るが、暴れれば暴れるほど深みにはまって動けなくなる。ディーノスが動かなくなったのを確認したダスティンたちは一斉に攻撃を開始した。


「このクソ馬! 地獄に墜ちろ!」


 ダスティンは、ディーノスの背中に飛び乗ると、首にバトルアックスの一撃を加える。ディーノスの首から盛大に血が吹き出、凄まじい咆哮を上げるが、ダスティンはお構いなしに何度もバトルアックスを叩きつけた。そして、何度目かの斬撃でディーノスの首が叩き落される。また、他のドワーフたちも胴のあちこちに戦斧を叩きつけ、致命傷を与えていた。


「やったぞ! バケモノ馬を倒したぞ!」

 ダスティンがバトルアックスを高々と上げて勝鬨を上げる。仲間のドワーフも大声で喜びを露にする。


「よし、お前ら、傭兵隊を助けに行くぞ!」「オオーーー!」

 ドワーフたちは再び戦斧を持って、戦いの中に身を投じていった。


「弓騎兵! あそこにいるミノタウロスとゴブリンキングに矢を射かけなさい!」


 フローラが大きな声で命令し、弓騎兵が傭兵隊と戦っているミノタウロスとゴブリンキングに向けて多数の矢を放つ。2体の怪物は予期しない方向からの矢に全く対応することが出来ず、多数の矢を浴びて悲鳴を上げた。


「助かった! 野郎ども今だ、止めを刺すぞ!」


 オーウェンが傭兵隊に向かって叫び、矢を浴びて動きの止まったミノタウロスの胴体に大剣を突き立て、後に続いた傭兵たちも胴や胸に傷を負わせていく。ついにダメージに耐えられなくなったミノタウロスは、巨大な戦斧を持ったまま、前のめりに倒れた。


 一方、ゴブリンキングは多数の矢を浴びてもまだ動いていた。巨大な偃月刀を振り回し、傭兵隊や民兵を攻撃している。その目は憎しみに満ち、流石の傭兵隊も怖気突く者が続出した。そして、そのような者からゴブリンキングに斬られていく。


「レオンハルト! 私が魔法でキングの動きを押さえる。その隙を狙って!」

「おお! エミリー頼む!」


「ソリッドエア!」


 エミリーが空気による不可視の壁を作って、ゴブリンキングの動きを阻害した。その隙にキングの後ろに回ったレオンハルトが、膝裏目掛けてバルバードを叩きつけた。膝を砕かれたキングは立っていることが出来なくなり、その場に倒れ込む。


『やってくれたな人間共…。しかし、俺が倒れてもフォボス様には勝てん。今生きていることを後悔するんだな。フハハハハハ!』


「うるせえ! 死ね!」

 レオンハルトがゴブリンキングの首を叩き落し、他の傭兵たちも胴体に剣を突き立てた。


「こっちも終わったようだな。傭兵隊で生き残ったのは7割ほどか。だが、まだ戦いは終わっていない。民兵隊と合流するぞ」

 オーウェンの指示で、傭兵隊は集合し、再びゴブリン達との戦いに向かった。



「フローラよくやった! 敵の陣形は大幅に崩れた。敵の主力も第1師団にかかりきりだ。この機は逃さんぞ。オレたちは手薄になった敵本隊前面に攻め入る。魔物ども覚悟しろ!」

 第6騎士団長ビッグスは恐ろしい笑顔を浮かべると麾下全軍に突撃を命じた。


「ビッグス団長、我々も行きます。同行させていただきありがとうございました」

「マクシミリアン、行くのか」


「はい、私もこの国の王子。国を、民を守る責があります。傍観者ではいられません」

「わかった。行け、行ってお前の責任を果たしてこい。そして、この戦いが終わったらここに戻って来るんだ。いいな。必ずだぞ」

「ありがとうございます団長、ご武運を!」


(はう~、か、カッコいいです、マクシミリアン様。イングリッドはもうマクシミリアン様の事しか考えられません…。やっぱり、お嫁さんになりたいよ~。マクシミリアン様はおっぱい小さくても大丈夫かな。噂では大きい子が好みって聞いたけど…)


 マクシミリアンの前に副官イングリッドと6人の兵士がいる。


「私は敵本隊に突入し、敵の指揮官を倒す。生きて帰れる保証はない。君たちは無理に着いてこなくても責めはしない。ここからは君たちの自由にしてよい」


「私たちの隊長はマクシミリアン様です。私たち全員、隊長に付いて行きます!」

「第4騎士団の栄光は潰えていません。我々は最後で戦い抜きます」


「ありがとう。君たちの様な部下を持って、私は誇りに思う。よし、皆で一緒に行こう」

「はい!」

「そこの妻を愛してると叫んだ君、名前は」

「ラブマンです! 大隊長!」

「お、おう…。ラブマン、君を分隊長に任命する。よろしく頼む」

「は、謹んでお受けいたします。妻に自慢できます!」


「副官、イングリッド副官。君はどうする?」

「はっ! け、結婚式の日取りですか! まだ両親にも会ってないのに?」


「違うよ。君は私らと一緒に敵陣に突入するか、ここで待つかどうするかって聞いてるんだけど…」


「はわわ、スミマセン。も、もちろんマクシミリアン様と一緒に行きます! マクシミリアン様と一緒なら地獄だろうが男湯だろうが大丈夫です。どこまでも付いて行きます!」

「そ、そうか…(大丈夫か、この子)」


「では行くぞ。第4騎士団第1歩兵大隊出撃だ!」


 第6騎士団に続き、第4騎士団最後の部隊8人が戦いに出撃する。全員、国や家族、騎士団の誇りなど、それぞれの想いを背負いながら。


(おっぱい大きくするにはどうしたらいいのかな…?)

 イングリッドの想いだけは別次元にあった。

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