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第133話 ユウキと学園の仲間達

 夏休みが終わり、新学期の始業式の日、ユウキは自分の部屋で制服に着替え、姿見で服装をチェックしていた。


「うん、おかしい所はないし、髪型もいつも通り。準備もできたし、下に行くかな…」


 ユウキが1階に降りると、みんなが待っていてくれた。


「さあ、皆さん学園に行きましょうか。私の家から大型の馬車を持ってきていますから、全員が乗れますよ。ちなみに、御者と護衛の騎士はヒルデさんファンクラブの方です」


 フィーアの余計な一言で、ヒルデの顔から表情が消えた。


 道中は特に妨害されることもなく、学園の入り口に到着し、迎えに来てもらいたい時間をフィーアが告げると、馬車は一旦、侯爵家に戻って行った。帰途についた馬車を見届けてから、全員で門に入り、学園までの長い街路を歩く。周りの生徒の視線が自分に集まっているような気がして、何とも居心地が悪く、ユウキは下を向きながら歩いてしまう。


「ユウキ、下を向かない! 胸を張って歩きなさい。ほら、おっぱいを立てて」

「ゴメンね、カロリーナ。うん、下を向いちゃいけないよね。でもおっぱいを立てるって何?」


 ユウキは3年Cクラスの前まで来た。中に入ろうとするが、手が震えて中々戸を開けられない。ララたちはユウキが自分で戸を開けて教室に入るのを待っている。


「ユウキさん。大丈夫です。勇気を出して」


 ユーリカが明るく励ましてくれた。その声にユウキは「うん」と答えて、入り口の戸を開けて1歩中に入り、「お、おはよう」とクラスメートに声をかけた。


 ユウキの挨拶にクラスメートが一斉に振り向く。ユウキは自分に集まる視線にたじろいでしまう。入り口の前で立っていると、1人の女の子がパタパタと駆け寄って抱き着いてきた。


「ユウキー来たんだねっ!」

「シ、シャルロット!」


「心配したんだよ! もう、ホントに心配したんだよ。ユウキの家に行っても出かけていて当分戻らないっていうしさぁ、もう、ユウキいなくなるんじゃないかって思ったら、どんどん不安になっちゃって…、ユウキのバカバカバカ~ァ。ふぇええええん」


 シャルロットはユウキに抱き着いて泣きじゃくる。ユウキはシャルロットの背中を優しく撫でて「心配かけてゴメンね」と謝った。


 この様子を見た他のクラスメートもユウキの周りに集まってきて、学園に出てきてくれたことを喜んでくれた。


「ヘラクリッド君、フレッド君、イグニス君とケント君も…、ありがとう。心配かけてゴメンね」

「ボク、ちょっと噂の件で落ち込んじゃって、里帰りしてたんだ。でも、もう大丈夫だから。みんな、これからも仲良くしてくれると嬉しいな」

「当たり前でしょ。ユウキとあたしは友達だもん。もう心配かけないでね」


 シャルロットの温かい言葉に、ユウキも成り行きを黙って見守っていたララやカロリーナたちも安堵するのであった。


 始業式も終わり、ユウキたち全員とシャルロットで学園の食堂に集り、昼食を食べていると「皆さん、ごきげんよう」と声が掛けられた。振り向くと1人のかわいい女の子が近付いてきた。


「フェーリス様! お久しぶりです。そうか、フェーリス様も1年生になられたんでしたね」

「うふふ、はい、1年Sクラスです。同じ学園にいるのに、皆さんと中々顔を合わせることが出来なくて、寂しかったです。あの、ご一緒しても?」


 ユウキは「どうぞ」と言って、席を1つ用意する。フェーリスはお礼を言って座る。


「実は今、王家も大変でして、食糧危機に増えた魔物の対処、それに…」

「それに?」

「あ、いえ、何でもありません。(王家に対するクーデターの噂は言えない…)」


「あと、お父様が言ってました。ユウキ様に関する噂は王家と国民の人心を惑わす悪質なものだから、王国憲兵隊に取り締まらせるって。だから、もう少しの辛抱ですよユウキ様。お父様も私もあんな噂信じてませんから」


「ありがとうございます。その言葉だけで十分です」


 ユウキはフェーリスに頭を下げ、フェーリスは「うふふ」と笑顔を返した。


「ねえ、ララ」

「なに、カロリーナ」


「ここにいるメンバーを見て思わない?」

「何を?」


「巨乳と貧乳の数よ。見てよ、デカ乳女はユウキ、ユーリカ、ヒルデの3人、美しき貧乳は私にララ、シャルロット、フェーリス様の4人、中途半端な乳女が2人」

「貧乳派が優勢よ。ついに来たのよ、貧乳が巨乳を圧倒する時が! ここにあのエロスケがいないのが残念だわ。あの鼻腔に指を突っ込んで笑ってやったのに!」


「もう『女は乳がデカくなきゃ生きている価値がない』なんて言わせないわよ。ついに私たちの時代が来たんだわ。貧乳万歳! 自由貧乳同盟万歳! フェーリス様! ようこそ、こちら側の世界へ」


「あの、カロリーナ様は一体何を言っているのですか?」

「あれはいつもの発作です。放っておけば治まりますので気にしないでください。あれは乳の大きさに取りつかれた可哀そうな女なんです」


 フェーリスは不思議なものを見るような目で、カロリーナを見て思った疑問に、ユーリカが冷たく言い放った。 


「そうそう、話は変わりますが、ユウキ様、今度マヤさんの所に遊びに行ってもよいですか?」

「え、あの、今はボクの噂の件があるので、王家の方はボクの家に近付かない方がよいと思うんですけど…」


「そうなんですか…。残念です」


「マヤさんに何か?」

「ええ、実は、以前ユウキ様たちの家に遊びに行きましたよね。その時、マヤさんに色々と着せ替えをされまして…」


(イヤな予感…)ユウキは直感的に、フェーリスが何を言いたいか予想できてしまった。


「あの時に身に着けた際どい下着が癖になってしまいまして、マヤさんに少し譲っていただけないかと…」


「フェーリス様が、お姫様がエロ下着の虜になったですと!」


 カロリーナが驚きの声を上げるが、そこに意外な人物が参戦する。


「わかりますお姫様! あたしはシャルロットと言います。実はあたしも去年、美人コンテストに出た時、マヤさんに磨いてもらったんですけど」

「その時に身に着けた、危ない下着が余りにも体にフィットしてしまって、もう手離せなくなってしまったんです。実は今、黒のレースを穿いているんです」


「わあ、お仲間ですね! 私は白の紐パンです」


 フェーリスとシャルロットのカミングアウトに、その場の全員が固まる。


「お姫様だけでなく、シャルロットまで、ユウキと同じ性癖を…。エロ下着しか身に着けられない体に…。私はいつもの地味下着…」


 カロリーナがショックを受ける。あのシャルロットに一歩先に行かれたという複雑な感情で胸が一杯になる。


「でも…」


「ユウキ様のような、極限まで布面積を少なくした下着は、まだ恥ずかしくて」


 フェーリスが頬を赤く染めて、恥ずかしそうに言い、ユウキに全員の視線が集中する。


「え、あの、フェーリス様?」


「マヤさんにユウキ様の下着を見せていただいたんですけど、あまりにも大人すぎて」

「お姫様、分かります。あたしも流石にあの下着は恥ずかしいです。レベルが高すぎて」


「みんな! 誤解だよ。ボクはエロ下着なんか穿かないよ! 普通だから、普通の下着しか着けないから。ホントだからね」


 ユウキが慌てて弁明する。


「よし、じゃあ見せてみろ!」


 カロリーナがユウキのスカートを捲り上げ、全員がユウキの下着を目の当たりにする。


「きゃあああああああ!」


 スカートの下から現れたユウキの下着は普通ではなかった。


 第3部はユウキやララ、カロリーナの内面的な話を中心にしましたので、第1部や第2部と比べると、短いストーリーとなりました。学園の生活はまだ続きますが、次回から第3章に移ります。

 第3章は舞台のほとんどが戦場になってしまいます。王国にとって辛く厳しい戦いが続き、ユウキを始め、友人たちの運命も翻弄されてしまいます。戦いの果てに待ち受けるものは一体…。

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