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第115話 冬休みの騒がしい1日

 年末も押し迫ったある日、ユウキたちがリビングで他愛もない話をしていると、玄関の扉が開いて、「こんにちわー」と女の子の元気一杯な声が響いた。


「誰だろう?」


 ユウキが玄関に出てみると、そこには大きなカバンを持ったフェーリスが立って、ニコニコしている。


「フェ、フェーリス様。どうしてここに?」

「はい! お城はみんな忙しくて、誰も私を相手にしてくれないので、遊びに来ちゃいました! 何日かお邪魔します」

「ええ~、あの、お付きの人たちは?」

「みんな帰しました!」


「国王様は、王妃様は何も言わなかったのですか?」

「お父様にしつこく遊びを強請っていたら、「ユウキの所にでも行ってこい!」と言われました!」


 ユウキはこめかみを押さえ、ダスティンに了解を取ってくると、フェーリスを中に入れた。


「ララ、ヒルデ、ルイーズ、マヤさん。フェーリス様が遊びに来ました」

「フェーリスです! よろしくお願いします。様はつけなくていいですよ。えへ」

 フェーリスを見たマヤの目がギラリと輝く。


 フェーリスは椅子に腰かけると周りを見回し、マヤの出してくれたお茶を飲みながら、


「あの…、意地悪な継母と姉2はいないんですか」と聞く。

「ブフォッ、ゲホゲホ、ゴホッ」

「もう、姉1は汚いわね。フェーリス様、私はララ。継母と姉2は帰省していて不在なんです。姉1で我慢してください」


「そうなんですか。残念です。学園祭のあの劇、面白かったですね。思い出すとまた笑いが…。うぷぷ」

 つられてヒルデも笑い出す。ユウキは1人苦い顔。


「こんなに喜んでくれると、脚本家としても嬉しいです。実はですね、あの悪女3人はコンセプトだけ決めて、セリフはほぼアドリブだったんですよ」


「えっ、そうなんですか? アドリブであれだけの意地悪なセリフを…。凄いです! うわ~、だからあれだけ面白く出来たんですね。マクシミリアン兄さまもドン引きしてました!」


「ユウキ様のセリフが酷すぎて、遠くを見つめてました!」


 ユウキの顔から表情が消え、がっくりと肩を落とす。その様子を見たララとヒルデは笑いをこらえるのに必死だ。


「実はですね、翌日の美人コンテストでも、悪女3人組のミニコントがあったんですよ。フェーリス様、見てましたか?」

「えっ! 2日目は学園祭に行かなかったんですよ。ヤダ、行けばよかった。どんな話だったんですか?」


「水着姿でシチュエーションのパートがありますよね。そこにいるルイーズのテーマが何と、『彼とのデート中に街中で、意地悪な継母と嫌味な姉1、性格の悪い姉2に見つかって絡まれる』だったんですよ!」


「わっ、聞いただけで面白そう!」

「ですよね~。その時のセリフが……で、最後の捨て台詞も酷くて、『チッ、白けちまった。行こうぜ! おう、そこのチャンネー、イイ男連れてるじゃねーか! ちょっと貸してくれよ。ぎゃはは!』ですよ」


「昨年の美少女コンテストチャンピオンのユウキが。ぷくく…、最低な女…」


「アハハハハ、アハハハハ、面白い、可笑しい、アハハハハ、酷い、酷すぎる! ぷくく」

 フェーリスはバンバンとテーブルを叩いて大声で笑う。


「フェーリス様…。ホントに王女様?」

 ヒルデが、何か別の生き物を見るような目でフェーリスを見る。


「フェーリス様、この話には落ちがあってですね、ルイーズが継母と姉1姉2の演技に本気でビビッてしまって、控室でガチ泣きしてしまいまして、泣かせた張本人が慰めるという一幕があったんですよ」


 ララの暴露に、ルイーズは恥ずかし気に俯き、ユウキは肩を落としたまま顔を上げられない。


「面白い話をありがとうございます! プッククク、お城に帰ったらマクシミリアン兄様にも教えてあげよっと」


「やめて! お願いします。それだけは止めて下さい。平に平に御容赦を~」

 その言葉にビクリと反応したユウキが必死にフェーリスに縋りつく。


「フェーリス様、さすがにそれはユウキが可哀そうです。ユウキはね、マクシミリアン様のこと好きなんですよ。恋する女の子なんです」

 ララの爆弾発言にフェーリス、ヒルデ、ルイーズが一斉に「キャアー!」と黄色い歓声を上げる。


「ち、ちが、違うもん! 好きとか嫌いとか…、そうじゃなくて、尊敬する先輩。そう、尊敬する先輩なの! それだけなんだからね。わかった!」

「ハイハイ、わかった。わかったから、そんなに必死に言い訳しなくてもいいから」

「もお、ホントなんだからね…」


 マヤの心づくしの夕飯を食べ、ダスティンがいつものように豪快に酒を飲む。ドワーフを見たことのないフェーリスはダスティンの隣に座り、興味津々で色々質問する。ダスティンも満更では無さそうな顔で答えている。


『皆さんお風呂が沸きましたよ』

 とマヤが知らせてきた。


「フェーリス様、一緒に入りましょうか」

「ダメよ。あんたと入ると、フェーリス様が格差社会の現実に打ちのめされるでしょ。私が一緒に入るから。そうだ、ルイーズもおいでよ」

 ユウキの誘いにダメ出しをし、ララが、フェーリスを抱きかかえ、ルイーズと3人で風呂場に行ってしまった。


「仕方ありませんね。ユウキさん、私と一緒に入りましょうか」

「うん、ありがとうヒルデ。お風呂でおっぱいについて語り合おう」

「いや、特に語り合わなくてもいいです」

「え~」


 お風呂から上がったフェーリスを、マヤが嬉々として自分の部屋に連れて行く。


「あ~あ、リース、シャルロットに続いてフェーリス様も禁断の世界に…。こうして、ユウキと同じ性癖を持つ女の子が増えるのね」

「どういう意味よ! ボク、変態じゃないから、そりゃ、際どい下着は好きだけど…」

「世の中、それを変態と言うのよ」

「ええ~、違うもん」


 結局、フェーリスは5日ほど滞在し、ユウキ自作のゲームをしたり、みんなでお話ししたり、ダスティンの工房でお手伝いしたり、さらにはマヤの着せ替え地獄に付き合ったりと、退屈する暇もなく、王宮にいてはできない体験をして大分満足したようであった。


「皆さん、ありがとうございました。私も来年は学園の1年生です。よろしくお願いしますね。あの、また遊びに来ていいですか」

 と言って、フェーリスは迎えに来た馬車に乗り込み、王宮に帰って行った。


「賑やかでしたね。でも楽しかったです」

 ヒルデがしみじみと言い、ルイーズが同意とばかり頷く。


「春にはフェーリス様も学園に入学するのか。ボクたちも3年生だね。あっという間だったな…」

「うん、残り少ない学園生活を楽しもう。そして、学園を卒業してもずっと友達でいようね。ユウキ、私たちずっと一緒だからね」


「ララ? うん、そうだね」


 この時、ララが何故こんな事を言ったのか、今のユウキには分からなかった。


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