第114話 冬休みの穏やかな1日
学園の2学期も終わり、3週間の冬休みに入った。カロリーナ、ユーリカ、フィーアは実家で過ごすために帰省し、ダスティンの家にいるのはユウキ、ララと家が遠いヒルデ、ルイーズの4人。ララはダスティンの作る武器防具に装着する魔法石作りが面白く、ずっと手伝いをするといって帰省しなかった。ちなみにアルはヘラクリッドと山籠もりに行ったらしい。
ある雪の日、4人はリビングで暖炉にあたりながら、まったりと過ごしていた。マヤは洗濯物を片付け、ダスティンは「今日は仕事にならん」と言って、マヤが作ったおかずを肴に酒を飲んでいる。
「凄い雪だねー。珍しいね、こんなに降るなんて。これは積もるかもしれないよ。雪かきいやだなー、腰が痛くなる」
ララが、嫌そうに雪かきの心配をする。
(そういえば、王都に来る前に住んでいた家もよく雪が積もったな。いつも助さん格さんが雪かきしてたっけ。あの2人もいつかは出してやらないとね。でも今はまだいいや、エッチだし。絶対にボクのおっぱい見ようとするに違いないもん。他の女の子も危ない)
ユウキはぼんやりと雪が降るのを眺め、ララは小さい水晶玉に魔力を込めて魔法石を作っている。ヒルデとルイーズはそれを使ってああだこうだ言いながら、アクセサリーを手作りしている。
(こんな日もたまにはいいよね…。そうだ!)
ユウキは自分の部屋に戻ると、ララから貰った暖房の魔道具を使って部屋を暖め、服を脱ぎ、ブラも外してショーツだけの姿になると、美容の魔道具を使って自分磨きを始めた。
(久しぶりに全身磨きをしよう。最近忙しくて、手抜き気味だったし)
ユウキが、体にコロコロと魔道具をかけていると、「ユウキ~、何してんの~」とララ、ヒルデ、ルイーズが入ってきた。
「わあ! ノ、ノックくらいしてよ」
「うわ、そんな恰好で何してんの? ま、まさか、1人でエッチな事? お邪魔した?」
「ち、違うよ! これを使って体を綺麗に磨いてるの! 美容の魔道具だよ。もう」
「へえ、面白いもの持ってますね。エルフの国にもこんなのはなかったな」
「ユウキさんの肌が綺麗なのは、これを使っていたからなんですね」
ヒルデとルイーズが感心したように言う。
「よかったら、みんなも使ってみる?」
部屋に鍵をかけて、全員ショーツ姿になり、きゃあきゃあ言いながらコロコロと魔具を転がし合う。
「ルイーズはホント、スタイルいいわね~。ユウキもヒルデもおっぱい大きいし。私だけ幼児体形…。悲しい」
「でも、それはそれでララに似合ってて可愛いよ」
ユウキが謎の慰めをし、ララが「もお~」といって、ユウキをポカポカ叩く。ヒルデとルイーズはそれを見ながら大笑いしている。あまりにも大声で騒いだので、ダスティンから「お前ら、騒がしいぞ。静かにしろ!」と怒られた。
翌日、外を見ると昨日からの雪は降り止んだが、30cmくらい積っている。朝食後、ダスティンから雪かき宣言が出された。
「おい、雪かきをするぞ。みんな手伝え。俺とユウキ、マヤは店の前と通りをやる。ララたちは裏庭の井戸周りと通路だ」
全員、防寒着を着て、準備を整えると各自スコップを持ち、雪かきを始める。
2時間ほどで店の前の除雪を終え、道具を片付けていると、ララとヒルデ、ルイーズが雪玉を転がしている。どの位転がしていたのか、直径はララの身長の半分ほどもある。かなりの大きさだ。
「久しぶりの雪だから、雪だるまを作ろうと思って」
「ララさん、この上に載せていいですか。う~~~ん!」
ヒルデとルイーズが自分たちの雪玉を、ララの作った雪玉に載せようとするが、重くて持ち上がらない。
「あははは、雪って結構重いんだよ。雪だるまはね、胴体の上に小さい玉を載せて、それに雪をくっつけて、少しずつ大きくしていくんだ」
ユウキが笑いながら言うと、3人は残念そうに顔を見合わせる。
「え~、せっかく作ったのに。う~ん、そうだ!」
と言うが早いか、ララは家の中に戻り、何かを持って戻ってきた。
「ヒルデ、ルイーズ、2つの玉を並べて。そうそう、では、玉の上にこれを置いてっと…」
ララは雪玉の上に丸く削った炭の玉を置いて、
「はい、できたー! ユウキのおっぱい!」
「バ、バカーーーー! 何てもの作るのよ! それに、私の乳首、こんなに黒くない!」
「ウッ、ク、ハハ、だ、だめ、我慢できない。アハハハハッ!」
「ヒルデ、ルイーズ、笑いすぎ! もおー、ララのバカ!」
「あははは、ごめんごめん。許して」
「何を騒いでいるんだ? それにしてもアイツらは元気だな…」
きゃあきゃあ言いながら、雪合戦を始めたユウキたちを眺めて、ダスティンはボソッと呆れたように呟いた。
今日も朝から風が強く吹き、雪が横殴りに吹きつけている。
「今日は吹雪いてて寒いわね。外にも出られないし、何しよっか?」
ララが窓の外を見ながら、暇そうに言うが、ヒルデもルイーズも何も思いつかない。そこに、ユウキが板を持ってリビングに入ってきた。
「えっへん! 簡単なゲームを作ってきました。どう、やってみる?」
「朝から工房に行ってたと思ったら…、何を作ってきたの?」
「これです!」
ユウキが板をテーブルの上に置く。板には縦横8×8のマス目が引いてあった。ユウキは板の真ん中に表が黒、裏が白の丸い石を2個ずつクロスするように置き、
「こうやって、対戦者が順番に相手の石を挟むようにに置いて行くの。挟まれた石は、挟んだ石と同じ色にして、最後に数が多かった方が勝ちだよ。あと、石は縦横、ななめに置けるけど、挟む対象がなければ、パスとなって相手の番になるよ」
「へえ、面白そう。やってみたいです」
ヒルデとルイーズは興味津々でゲーム板を見ている。
(これ、絶対ユウキのいた世界のゲームだよね。思い出したのかな?)
ララがユウキをちらっと見ると、ユウキがパチっとウィンクして見せた。
「じゃあ、最初はボクとララでやってみようか。ヒルデとルイーズは見てて」
結果は、ユウキの惨敗。
「あ、あれ、おかしいな?」
「あれ~、ユウキさん、どうしたんですかぁ。ぷぷ、弱い、弱すぎる…」
「く、悔しい…」
「おっ! 涙目のユウキ、いただきました!」
「私たちも遊びましょう。ルイーズさん!」
「はい、負けませんよー」
結果は僅差でルイーズの勝ち。ヒルデはあと一歩と言うところで負け、悔しそうだ。
「このゲーム面白いです。単純なのに奥が深い」
珍しくルイーズが興奮している。
そのうち、マヤまで加わって5人で日が暮れるまで遊んだ。
「ぜ、全敗…」
「ユウキ、弱すぎでしょ。逆にマヤさんは強すぎ。無敗の女帝!」
『誠に忝いお言葉でございます』
「ルイーズさんとは引き分けでしたか。次こそ決着をつけましょう!」
「ヒルデさん、望むところです!」
『さあ、夕飯にしましょうか』
マヤの声に全員で「はーい!」と答える。
緩やかで穏やかな1日が今日も過ぎて行く…。