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第111話 武術大会(前編)

 武術大会当日、リビングに集まった少女たちがカロリーナを囲んで準備をしている。


「いよいよ今日ですね。準備は万全ですか」


「バッチリよ、フィーア。見て、ユーリカの乳お化けに鍛えられたこの腕と足の筋肉と広背筋。剣技も騎士団の皆さんにしっかり見てもらったしね。準々決勝までは行きたいな」

「今日用の剣 (バスタードソード)も軽装備もダスティンさんに貰っちゃった」


「うん、頑張りましたよカロリーナは。ただ、胸は脂肪じゃなくて大胸筋が発達しましたね。プークスクス」

「ユーリカめ…、いつか粛清してやる。闇討ちリストの筆頭にしてやるから…」


「私たち、ほどほどの大きさでよかったですね。ルイーズさん」

「はい、フィーア様。不毛な戦いですよ。おっぱいは形の美しさが一番です」


「ルイーズさんまで染まってきた…」

 女子たち唯一の良心、ヒルデの嘆きが聞こえる。


「ほら、ユウキ、準備できたら学園に行くわよ」

「待ってララ。手を、手を繋いで行きたい。お願い」


「あの2人、最近、べったりですね」

「何かあったのかな。もしかして、百合? 百合に目覚めたの?」

「う~ん、違うと思いますよ。どちらかと言うと、ユウキさんがララさんに甘えているというか。何と言うか…」

 ララとユウキを、ユーリカ、カロリーナ、フィーアが不思議そうに見る。



 学園のグラウンドに設置された特設リングに集まるCクラスの面々。グラウンド周辺は生徒や観客で大勢の人が集まっていて、騎士団の姿も見える。


「イグニス君、カロリーナさん、君たちがCクラスの代表だ。頑張ってくれよ。クラス全員で応援するからね」

 フレッドをはじめ、クラスのみんなが声援を送る。2人は笑顔で頷く。


「カロリーナ」

「なに、ユウキ」


「努力は必ず報われるよ。本当に苦しくなった時、訓練を思い出して。そして、そこからが勝負だよ。頑張ってね」

「うん、わかってる。去年のユーリカは頑張った。今年は私の番。見ててね」


 ユウキはギュッとカロリーナを抱き締めた。ユーリカはグッと親指を突き立てる。カロリーナは2人の気持ちに応えるべく、自分自身に気合を入れ、2人に頷いた。



「お集まりの皆さん!只今より学園祭恒例、武術大会を開催します。選手の皆さんは呼ばれたら指定のリングに上がってください。試合は1対1、トーナメント方式です。勝負は相手を倒すか、「降参」と言わせれば勝ちです」


「なお、武器防具の使用は自由。ただし、武器の刃は入っていないものに限ります。また、魔法は防御魔法以外使用禁止です」


 1回戦の対戦が発表されていく、イグニスの相手は1年生、カロリーナの相手は3年生だった。2人はそれぞれのリングに向かって歩き出す。


 カロリーナは指定のリングに上がる。リングには既に対戦相手が立っていた。リング上に立ったカロリーナはマントの内側から剣をリングに立て、相手を睨みつける。


「Cリングは2年Cクラスのカロリーナと3年Aクラスのマッコイ。両者前へ」


 審判の掛け声にカロリーナはボタンを外したマントを風に乗せて放す。マントの下から現れたのは、上半身は蒼く輝く美しいハーフプレート、下半身は上半分を金属のスケイルで覆ったプリーツスカートとひざ下を守る金属製のブーツを履いた勇ましい少女の姿だった。手には両手で使う中型剣、バスタードソードを持っている。

 一方対戦相手のマッコイは大型のハルバードを持った戦士だ。


「頑張れ、カロリーナー!」

 ユウキ、ユーリカを始めとした女子の声援が飛ぶ。


「ルールは武器以外使用禁止。魔法は自身にかける防御魔法だけだ。よし、試合開始!」

 審判を務める先生の合図で、カロリーナは自分自身に防御魔法をかける。


「防御なんぞ、力で打ち破る!」マッコイが全力でハルバードを振るってきた。カロリーナはバスタードソードの柄に近い部分を相手の柄に当てて突進を止める。相手は小柄なカロリーナの意外な力の強さに驚く。


「な、なんだと!」

「騎士団との訓練で、長柄武器に対する戦い方は十分学んだわ。体力も筋力も鍛えた。今度はこっちから行くわよ」


「おお、カロリーナ君、頑張っているね。」

「あ、モーガンさん。ええ、ユーリカがきっちり鍛えましたからね」

 ユウキの返答に、ユーリカが頬を染めて恥ずかしそうに俯く。


(何、このユーリカの反応は)


 ユーリカの乙女チックな反応に、ユウキは「はは〜ん」とニヤニヤするのであった。


「えいっ!」


 カロリーナは、剣を相手の真っ向からリングにギリギリ当たるところまで勢いよく振り下ろす。


「ふん、空振りしたな、へたくそめ!」


 マッコイはカロリーナが空振りしたと思い、頭上に大きくハルバードを振り上げた。カロリーナはその隙を見逃さず、グラウンドすれすれに落とした剣を腕に目一杯力を入れて振り上げた。


「かかったな、それっ!」


 カロリーナの振り上げた剣はマッコイの股に当たって急所を強かに打つ。マッコイは、「ぐぎょお!」と奇声を上げ、白目を剥いて倒れた。


「勝者、2年Cクラス、カロリーナ!」

「えっへん。小っこい美少女と侮るからこうなるのよ。やったよ! みんなー」


「ほお、カロリーナ君やるね。最初の振り下ろしはフェイントで、相手が大振りとなった所に本命の切り上げを打ちつける。これが試合用でなかったら。相手は下から両断されていたところだよ」

 モーガンが感心したように言う。


「1回戦突破おめでとう。カッコよかったよカロリーナ」

「自分で美少女って言うところもカロらしいね」


 ララやシャルロットがリングから降りてきたカロリーナの健闘を称える。そこにフレッドがやってきてイグニスも1回戦を突破したことを教えてくれた。


「よーし、2年Cクラス、2回戦も頑張るぞー!」

 クラス全員で気勢を上げる。ユウキもフィーアもユーリカも大きく手を上げて大声を出し、カロリーナやイグニスを応援するのであった。



「2回戦だね。頑張って!」

「おっし! 逝ってきます!」

「カロ! 字が違う、字が違う。それ死んじゃう方」


「Aリング2回戦。2年Cクラスのカロリーナと1年Aクラスのアンジェラ。両者前へ」


「今度はヒルデとルイーズのクラスが対戦相手ね」

「アンジェラさんは強いですよ。1年生女子では最強と言われている方です。何でもお父様が北西守護の第4騎士団の大隊長さんだそうですよ」


「あら、ルイーズ、来たのね。あなたはどっちを応援するのかしらね~」

「え、えっと、それはもちろん、カロリーナさん…かな?」


「ララ、止めなよイジメるの」

 ユウキに言われて、ララはごめんごめんとルイーズに謝るのであった。


 カロリーナはリングに上がるとバスタードソードを一振りする。一方、アンジェラは上半身を覆うハーフプレートに下半身はスケイルのスカート。武器はロングソードを正中に構えている。


「剣と剣の戦いか。胸熱だね」とララ。

「うん、あ、始まるよ」とユウキ。


 試合開始と同時に、カロリーナが自身に防御魔法をかけて前に出るが、アンジェラは動かず、剣を持つ右手に左手を軽く添えて大上段に構える。


「あ、危ない! カロリーナ下がって!」

 ユウキが叫ぶと同時に、カロリーナに向かって、強烈な一撃が振り下ろされた!

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