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第106話 学園祭③(美人コンテスト前編:シャルロットの覚悟)

 学園祭2日目の朝、全員リビングに集まって朝食を食べながら、演劇の感想を話していた。


「ララさん、昨日の演劇とっても楽しかったですわ。自分で言うのも何ですけど、男装が凄く似合ってて、ビックリでした。ファンクラブもできたんですよ」

「うんうん。フィーアの演技よかったし、とてもカッコ可愛いかったよ」


「私も1Sクラスの友達と見ましたけど、あんなに面白い演劇は初めてでした。何度お腹がよじれるほど笑ったか。お、思い出したらまた笑いが…、ぷくくく」

「ありがとヒルデ。ホントは不幸な女の子が幸せになるという王道ストーリーだったんだけどね、主人公よりも強烈な個性の3人組が喜劇にしちゃって。でも、かえってよかったかな。面白かったし」


「その3人組は、いまだ立ち直ってないようですわね」


 フィーアがテーブルの一角を見ると、ユウキ、カロリーナ、ユーリカが暗いオーラを纏わせながら俯いてどんよりしている。


「もう、まだ落ち込んでる。今更なくせに、なにいい子ぶってんだか」

 ララが結構厳しい。


『あら、皆さん時間は大丈夫ですか。今日はシャルロットさんの晴れの舞台。準備のため私も行きますね』

「あっと、もうそんな時間? 行きましょうか」

「ほら、継母、姉1姉2。行くよ!」

 ユウキ、カロリーナ、ユーリカはのろのろと立ち上がった。


 学園の入り口でシャルロットと合流する。


「シャルロット、今日はがんばろうね」

「うん、ララ…ホントにあたしで大丈夫なのかな。ほかのクラスの子、みんな美人でスタイルいいよ」

『大丈夫です! 私がシャルロット様を優勝させて見せます! この日のために徹底的に磨いてあげたじゃないですか。私を信じて!』


「一昨日見た、あのシャルの姿だったら、優勝できると思う」

「お、ユウキ、復活したね」

「全力でシャルを応援するよー!」『おー!』


 講堂の美人コンテスト控室に集まった面々は、シャルロットが準備するのを手伝い始めた。


「そういえばヒルデ。あなた美人コンテストに出なかったんだね。出たら優勝候補だったと思うのに」

「ええ、実は私のクラスに私なんか足元に及ばない超絶美少女がいるんです。名前をルイーズさんって言います。凄く性格もいいんですよ」


「なぬ! もしかしてユウキより可愛い?」

 いつの間にか復活したカロリーナが驚いて聞く。


「いい勝負だと思います。ただ、ユウキさんは昨日の劇で大分評判を落としたので、今時点で見ると、総合的にはルイーズさんの方が上かも」


「そりゃあ、男を勃たせる発言してみたり、カロリーナと奥義炸裂で相討ちしたり、ガチンコキャットファイトすれば、ユウキに憧れていた男たちは幻滅するわな」

「ララ、ハッキリ言わないで。悲しくなる…」


「それじゃ、私もユウキと一緒に評判を落としたっていうことか…」

「あら、カロリーナは元々そんな女だと思われているから大丈夫よ。最初から評判なんて無いに等しいし」

「ララ、あんたとはいつか決着をつける必要があるわね」

「ほらほら、喧嘩しない。そろそろ始まりますよ」



「レディース&ジェントルメン! 只今より学園祭恒例のイベント、学園美少女コンテストが間もなく始まります。さあ、学園一の美少女は誰か! みなさんの投票により決定します」

「司会は私、2年Cクラスのリンでーす。そして、今年の解説はオーベルシュタイン学園長にお願いしました。楽しみですね。学園長」

「うむ。昨年はレベルが高かった。今年も期待している」


「さあ、間もなく開演です。女たちの醜い…、じゃなかった。熱い戦いが今ここに!」


「あれ、今年はリンちゃんが司会だ」

「シャルロットの準備はマヤさんに任せて、私たちは席に行きましょう。貴族用の特別席を取ってますのよ」

「流石フィーアさん、気がききますね。じゃあ、女の戦いを見るとしますか」

「ユーリカも復活したね」


 フィーアに連れられて、ユウキたちは舞台から3列目の真ん中付近に座る。舞台から近すぎず、出場者が良く見える位置だ。


「さあ、丁度時間となりました。美少女コンテストを始めます」

「始めは、恒例の自慢の私服で自己PR!」

「では、1年Eクラスからどうぞー」


「おお、今年もなかなかレベルが高いね。次はヒルデのクラスの噂のルイーズちゃんか」


 舞台袖から、ルイーズが出てくると、会場から「おお~」「美しい」といったどよめきが沸き起こった。ルイーズは腰まで伸ばしている美しい金髪、白く透き通った肌に、碧く大きな目。薄く形の良い唇にピンクのリップ。小さな顔には少しあどけなさが残る。また、薄水色の可愛いワンピースに包まれた体は、出るところは出て、引っ込むべきところは引っ込んでいるなどバランスが取れている。姿勢も堂々として美しく、正に正統派美少女だ。


「こ、これは中々の美少女ね。ホント、ユウキやフィーアと勝負できる逸材だわ」

「強敵ですね。シャルロットさん大丈夫かしら」


『シャルロット様、そろそろ出番です。準備はいいですか』

「ま、マヤさん…あたし大丈夫かな。みんなホントに美人だし。自信ないよ」

『何言っているのですか! この一月半、私が手塩にかけて磨いたのです。自信をもって。さあ!』

「う、うん。行ってくる…」


「さあ、次は2年Cクラスです。昨年の優勝者ユウキさんのいる私のクラスですよ、えへへー。出場者はシャルロットさんです!」


「シャルロット! がんばれー!」

 ユウキたちの声援が飛ぶ。


 舞台袖から恥ずかしそうに出てきたのは、亜麻色の髪をサイドテールにし、結び目には鮮やかな緑色の大きなリボンを付けた女の子。手首には黄色と赤色の大きなリボンがそれぞれ飾られている。黄色の糸で縁取りされた淡い黄緑色のレオタード様の衣装は胸が大きく開き、美しい刺繍で飾られた幅広の肩紐で前後を繋いでいる。スカート部分は花びらのようにふわっと広がって、細身の美しい足が伸び、服と同じ色のブーツは踝の上で折られ、白地に薄紫色の刺繍が施された内側が、スカート同様、花のように開いている。

 顔も、肌も、ツヤツヤピカピカで、薄く施された化粧が映え、ユウキやフィーアにも負けない美少女だった。


「え、えっと、誰ですかこの子。え、シャルロットさん? え、ええーーーーー!」

 司会のリンが驚きの声を上げ、再び会場がどよめく。


「何と言うことでしょう! 野性味あふれるところ位しか特徴のなかった女子が、まさかまさかの大変身! さなぎから羽化した蝶のように、超絶美少女としてやってきたー! 妖精のような衣装も超可愛いです。昨年と言い、今年もやってくれましたよ私のクラスは!学園長感想をどうぞ!」


「う…む、とてもいいな。琴線に触れるところがある。私の嫁にしたい」

「学園長の変態発言が出ました! このロリジジイ、後で憲兵隊に突き出します」


「シ、シャルロットって、あんな美少女だったっけ?」

「元々可愛い顔はしているなと思っていたけど、ここまでとはボクも想像できなかったよ」

「あの衣装はマヤさんの手作りですね、凄い。ということは、下着もギリギリの…」

「いや、あの衣装だと下着はつけていない可能性があると思う」

「や、ヤダ。ユウキさんみたいに変な性癖に目覚めなきゃいいですが…」

「へ、変な性癖なんて持ってないもん!」


「え、えーと、私、まだ驚きから立ち直っていませんが、自己PRをお願いします」


 シャルロットは「はい」と返事をすると、応援してくれているユウキたちクラスメイトを真っ直ぐ見て、たどたどしくも話し始めた。


『シャルロット様、とても可愛いですよ。がんばって』

 マヤは、舞台袖から健気に頑張るシャルロットを応援するのだった。

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