第105話 学園祭②(演劇発表会後編)
ナレーター(ララ)
「巨大なネズミのバケモノに曳かれた馬車に乗ったシンデレラは、舞踏会の会場に着きました。中に入ると、色とりどりのドレスを着た美しい女性たちが目をギラつかせて、獣のように王子様からのお誘いを待っています」
継母 (ユーリカ)
「ふむ、狩人の目をした女どもが群れているわね。しかーし、我が娘より美しい女はいないわ。何せ、姉1は陰険性悪だけど超絶美人でぼっきゅんぼんのナイスバディ。姉2は性格は最低最悪だけどまあまあ可愛く、ロリータボディ。もし、2人がダメなら、この私自身が打って出る。この爆乳は無敵無敗! 墜ちぬ男はいない!」
貴賓席
「キ、キター! 継母きたー。はう、面白い。面白過ぎる。姉は、姉はいないの!」
「フェーリス、だから落ち着けって」
「フーッ、フーッ」
姉1(ユウキ)
「おーっほほほ。私の胸に集中する妬みの視線が心地よい。妬め妬め貧乳どもよ。胸なし芳一どもめ。お前らが決して持つことのできない高みがここに存在するのだ。見よ、この最高峰を。自由貧乳同盟? そんなものこのビッグバストで粉砕してくれるわ!」
姉2(カロリーナ)
「乳の大きさを自慢する愚か者め。腐った乳は大木をも揺るがす!! この乱世に幸せをつかむのは私。自由貧乳同盟の理念を今こそ実現させる。私は退かぬ!媚びぬ!省みぬのだあああっ!」
姉1姉2
「決着をつける時が来たようね、カロリーナ。貴様、死◯星を見たな!」
「ユウキ、せめて奥義で葬ろう。神は私たちの戦いを望んでいる!」
舞踏会の参加者 (クラスメイト)
「ねえ、あれ大丈夫? 2人とも、素に戻っているよ」
姉1姉2
「砕け散れ! 貧乳断罪拳!」
「死ねええ! 巨乳爆砕破!」
2人の間に攻防の閃光が一瞬輝いた。そして…、
「ぐっ…(ばたり…と倒れるユウキ)」
「や、やはり相討ちか…(どう…と倒れるカロリーナ)」
ナレーター
「巨乳と貧乳。相容れない2人の宿命の戦いは何と奥義炸裂による相打ち! 相打ちです。2人ともノックダウンにより退場! 何やってんのよ。このバカ!」
継母
「何やっているんですか、このおバカどもは…」
「こうなったら仕方ない。私が王子を堕とす!」
貴賓席
「ぎゃははは! お、面白い。面白いよ~。おっかしいよ~。姉最高! うひゃひゃ」
「フェーリスが壊れた…」
ナレーター(ララ)
「ホントにあのバカどもは…。気を取り直して物語を進めます。舞踏会に現れた美しいシンデレラは、たちまちみんなの注目の的となり、王子様もシンデレラの美しさに気づき、シンデレラを踊りに誘いました」
王子様 (フィーア)
「美しいお嬢さん。ボクと踊っていただけませんか。おお、なんて美しいほどほどな胸元。ボクはあなたの虜になってしまいそうだ」
シンデレラ(セーラ)
「う、嬉しいです。王子様。まるで夢のよう…」
継母
「待てやコラ。邪魔じゃ、退け小娘」
貴賓席
「ま、継母…、継母きた。ラスボスキター! あの言い方! まるでチンピラです。ユーリカさん、面白い。面白過ぎる。ぷぷ、ぶわははははは!」
継母
「ああ~ん、おうじさまあ~ん。私と一緒に踊ってくださらな~い」
「(むぎゅっておっぱい押し付けて、よし、これで堕ちる!)良い思いさせるわよぉ」
「うふ、どう、私と堕ちるところまで堕ちてみない? いい夢みさせてア・ゲ・ル」
王子様
「いや、ボクは巨乳には全く興味がないんで」
継母
「ガーン!」
「私が貧乳に敗北? ウ、ウソ。そんな…。誰かウソだと行ってええぇ!」
貴賓席
「しゅ、瞬殺! 瞬殺の女王が瞬殺された! あーっはっは。ぷくくくく!」
「ダ、ダメ。登場から退場までが面白過ぎて、お、お腹痛い。お腹よじれる。あははは」
「フェーリスが遠くに行ってしまった……」
ナレーター
「バカ姉同士の戦いと継母の乱入で、台本が多少狂いましたが、話を進めます。シンデレラは王子様と夢のような時間を過ごしているうちに、時の経つのも忘れてしまい、気がつくと、時計が12時を打ち始めています」
シンデレラ(セーラ)
「ああ、12時だわ。王子様、名残惜しいけど、ここでお別れです。(玄関前で片方の靴を脱いでおくのよね)」
大ネズミ(ヘラクリッド)
「ヌハハハハ! シンデレラよ、早く来るのだ。間もなくタイムアウトぞ」
「乗ったか? よし、マッスルダッシュ!」
王子様
「ああ、愛しの君! 待ってくれ。ああ、行ってしまった。どこの誰だったのだろう。名前を聞くのを忘れてしまったよ。ん、この靴は?」
「これは、彼女の…。そうだ、ガラスの靴がぴったり合う女性を自分の妻にするというお触れを出そう。彼女を探すんだ」
ナレーター
「王子様は国中の女性に、次々にガラスの靴を試してみましたが、ガラスの靴がぴったり合う女性は誰もいませんでした。 王子様の使いはシンデレラの家にもやってきて、義理のお姉さまたちも靴を試そうとします」
王子様の使い(クラスメイト)
「あなたは巨乳なので、調査の対象外です」
姉1
「なぜなにどうして! 巨乳のどこがいけないの!」
姉2
「おーっほっほほ、邪魔よ。退きなさい、おっぱいお化け。時代は貧乳なの。これが理解できないなんて、惨めよね」
「あ、あれ、靴が合わない。入らないよ」
姉1
「あーっはっは。体と胸は小さいのに足だけデカいなんて、正にバカの大足よね。残念でしたわねぇ~、プークスクス」
姉2
「おのれ~姉1ことユウキ! テストじゃいつも私に負けてるくせに! 乳ばかりに栄養がいった頭空っぽ女! や~い、悔しかったらテストで勝ってみろ〜」
姉1姉2
「こ…この貧乳地味女! 叩きのめしてやる!」
「かかってこい! 乳だけバカ女!」
「ギャーギャードタバタ!」(本気の取っ組み合いを始めた)
シンデレラ
「あ、あの、私にも試させてくれませんか」
継母
「失せろ小娘、私が先だ。貴様は部屋の隅で指でも咥えて眺めてろ」
王子様の使い
「だから巨乳は対象外ですって。それに、あなたは王子様にはっきりと断られたでしょ」
継母
「うええーん、王子様の使いにイジメられた~。悲しいよ~」
貴賓席
「……ピクピク(笑いすぎて痙攣している)」
「フェーリス…」
シンデレラ
「あの、これを見てください。その靴と同じものです。履いてみますね…。ほら、ぴったり」
ナレーター
「王子様の使いは、この方こそ王子様の探しておられた女性だ!と言って、シンデレラをお城へ連れていきました。王子様はたいそう喜び、数日後にシンデレラと結婚式をあげました。心優しいシンデレラは、今までの意地悪を詫びた義理の母と姉たちを許し、たいそう親切に遇し、いつまでも幸せに暮らしました」
王子様
「シンデレラ。ああ、愛しい人よ。君という生涯の伴侶を得て、ボクの心も幸せに満ち溢れているよ。これからはずっと一緒だよ」
シンデレラ
「嬉しいです、王子様。私、こんなに幸せでいいのかしら。幸せいっぱい胸いっぱいです」
継母
「どこが親切なのよ。あのくそアマ! こんな所に閉じ込めやがって! 恨んでやる、呪ってやる、祟ってやるぅ~」
姉1
「お城の地下で、粉ひき用の人力回転器械回し…。なんで! どうして! わたしは幸せになりたいだけなのに〜」
姉2
「シンデレラのヤツ、同じ貧乳なのにこの仕打ち! 許さん、許さんぞ……。祟りじゃ祟りじゃ! 貧乳の神はお怒りじゃ!!」
大ネズミ(ヘラクリッド)
「何で、吾輩まで…」
ナレーター
「王子様とシンデレラが楽しく暮らす城の地下では、延々と回転器械を回し続ける継母と姉1姉2、大ネズミの慟哭がいつまでも響き渡るのでした。おしまい」
貴賓席
「フェーリスが笑いすぎて気絶した」
「なあ、マクシミリアン、これは俺たちが知っているフェーリスなのか?」
2年Cクラスの演劇「シンデレラ」は大ウケのうちに幕を閉じ、その後の結果発表で見事優勝を果たした。しかし、この演劇でユウキ、カロリーナ、ユーリカの受けた心の傷は計り知れないほど大きかった…。
「あー、面白かった。満足満足」(ララ)