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第104話 学園祭①(演劇発表会前編)

「いよいよ来たね。ホールは大入り満員だよ。来賓席には王家のレウルス様、マクシミリアン様、フェーリス様が見に来ているって」


 ララが興奮してはしゃいでいる。

 ユウキが演題を見ると、やはり他のクラスは王国の物語や伝承をモチーフにしている。その中で、Cクラスは異色の内容だ。順番はくじ引きで決められ、Cクラスは一番最後になっている。


「出番は午後ね。それまでゆっくり学園祭を見て回りましょう」

「ララはのんきなもんだね。ボクはドキドキが止まらないよ」

「まあ、今から緊張しても仕方ないので、ヒルデのクラスに行ってみませんか」

「そういえばシャルは?」

「マヤさんの所で、最後の調整ですって」


 1年Aクラスに来たユウキたち。ヒルデを見かけて声をかける。


「ヒルデ! 来たよー」

「あっ、皆さん、いらっしゃいませ」

「どれどれ、どんな小物を売っているの? わあ可愛いものがいっぱい」

 カロリーナ、ララ、ユーリカはきゃあきゃあ言いながら小物を見ている。ユウキがふとあるコーナーを見ると、『ランジェリー』と書いてある。ユウキが近づくとそこには、かなりエロエロなショーツやブラが所狭しと並んでいる。


「こ、これは…」

「これ、いつもユウキが穿いているパンツに似てるね」

「バ、バカ、カロリーナ、大きな声で言わないで」


「ああ、これはですね。シャルロットさんのコンテスト用に大量に作った下着なんです。捨てるのがもったいなくて、ここに並べているんですけど、エッチ過ぎて誰も買ってくれないんです。ユウキさん買ってくれませんか?」

「う、うん。いいよ、何枚か買おうかな。可愛いのもあったし」

「ヤッター! ユウキさんならそう言ってくれると思ってました」


 1年Aクラスのお店を出て、各クラスの出し物を見て回っていると、お昼の時間になった。ユウキたちは中庭に出て、マヤが作ってくれたお弁当を食べていると、マクシミリアンとフェーリスがやってきて、


「やあ、午後は君たちの番だね。楽しみにしているよ」

「ユウキさん、面白そうな演題ですね。どんな話ですか? 今までのクラスは王国の物語ばかりでつまんなかったです」

「フェーリス様、結構厳しいですね。でもまあ、楽しみにする価値はあると思いますよ」

 ユウキがそう言うと、フェーリスはパッと顔を輝かせ、にこっと笑って「期待しています」と言って、マクシミリアンとともに去って行った。



 午後の部が始まり、ユウキたちCクラスの番が来た。


「お兄様、ユウキさんたちのクラスです。どんなお話なのか楽しみですね。ユウキさんはどんな役なんでしょう。ワクワクします」

「ははは、少し落ち着きなさい、フェーリス」

「もう、レウルスお兄様も楽しみにしてたくせに」

「ほら、始まるよ」

 マクシミリアンがフェーリスに始まりを教えてあげた。そして、舞台の幕が上がった。



ナレーター(ララ)

「昔々、ある国にシンデレラと呼ばれている心の優しい娘がいました。 シンデレラのお母さんが流行り病で亡くなり、お父さんは新しいお母さんと結婚しましたが、新しいお母さんはとても意地悪で、さらにその連れ子である2人のお姉さんも我が儘な、性格の悪い女だったので、掃除、洗濯、食事の支度などすべてシンデレラにやらせていました」


継母 (ユーリカ)

「シンデレラ! シンデレラ! どこにいるの? ああ、ここにいたのね。何度言ったら分かるのよ! 掃除が終わったら食事の用意をして、洗濯物を片付けなさいって言ってるでしょう。まだ、掃除も終わらないなんて、全くドジで間抜けなカメなんだから、さっさ食事の用意して! このド貧乳!」

「すみません、お継母さま。今すぐに…」


嫌味な姉1(ユウキ)

「シンデレラ、私の部屋に来なさい。お部屋の窓拭きは終わったの?」

「はい、終わりましたお姉さま」

 お姉さま(ユウキ)は窓枠を指でツーッとなぞると、嫌味ったらしく笑いながら、

「あらあ~、埃が取れてないようねえ。もう一度やり直し! 手抜きができる身分なの?」


「それに、ベッドの上の私の下着、全然畳んでないじゃない!」

「でも、お姉様のエロパンツ、紐みたいに細くて、どう畳んだらよいかわからなくて…」

「う、うるさい。私はこれが好きなの! ちゃんと畳んでよね、これだから貧乳は」

「ごめんなさい。貧乳ですみません…」


性格が極悪な姉2(カロリーナ)

「シンデレラ、私のアクセサリーはどこ! ちゃんと片付けて置けって言ったでしょ!」

「え、ちゃんとお姉様の部屋に置きましたよ」

「無いわよ! もしかしてアンタ、盗んだんじゃないでしょうね。このドロボウ猫!」

「お、お姉さま、それは自分の彼氏を別の女にとられた時のセリフです」


「うっさいわい! この貧乳女が! こうなったらお前の体に聞いてやる!」

「お許しくださいお姉様!」

「うはははは、よいではないか、よいではないか。それそれぇい」

「あーれー!」

「む、シンデレラ、なんでアンタは私よりおっぱいが大きいのよ! 悔しい~」


貴賓席

「お、お兄様、始めから凄い出だしですね。私、ユウキ様は主人公だと勝手に思ってましたが、性格の悪いお姉さん役だなんて、しかも怖いくらいハマってます」

「ユーリカ君もカロリーナ君も凄いね。しかも下手な役者より上手い」

「でも、面白い」「ですわ」


ナレーター(ララ)

「ある時、この国の王子様が舞踏会を開く事になり、2人の義理のお姉様はドレスを着てお城へ出かけることになりました」


継母 (ユーリカ)

「姉1、姉2。ちょっとこっちに来なさい」

「何事ですかお母様(私たちって名前がないの?)」

「何でも、王子様がお妃さま探しのため、舞踏会を開くとのお知らせがあったわ。あなたたち、何が何でも王子様を堕としなさい。お妃になれば、贅沢は思いのままよ」

「王子様の性癖は解らないけど、幸い姉1は巨乳。姉2は貧乳。しかも、顔も悪くない。男色でもない限りどちらかが必ずヒットするはず。がんばるのよ」


姉1(ユウキ)

「わかりましたお母様。この日のために常に体を磨いてきました。この巨乳、くびれた腰、大きめのお尻。このナイスバディとギリギリを極めた勝負下着で必ず落として見せます。なに、この体を見て股間が疼かない男はいません。お任せください」


姉2(カロリーナ)

「お母様、胸なんて所詮飾りに過ぎんのです。見てください。この無駄のないフラットな美しいボディ。相手が幼女趣味なら必ず墜ちます。貧乳は希少価値です。ステータスです。我が自由貧乳同盟に栄光あれ!」


貴賓席

「お、お兄様、凄い会話ですね。今までの演劇と一線を画してます。もしかして、この3人が真の主人公なのでは。はう、凄く面白い。続きが楽しみになってきました」

「ユウキ君…、ユウキ君のイメージが…」

「あ、マクシミリアンお兄様が遠くを見ている」


ナレーター(ララ)

「シンデレラも行きたかったのですが、もちろん連れて行ってもらえず、悲しくなったシンデレラは『私も舞踏会に行きたいわ』と泣き出してしまいました。すると、シンデレラの目の前に魔法使いが現れ、こう言いました」


魔法使い(リン)

「泣かないでシンデレラ。私は魔法使い。優しいあなたを舞踏会に連れて行ってあげるわ」


シンデレラ(セーラ)

「でも、お城に来ていく服がないわ」


魔法使い(リン)

「大丈夫よ。任せて。その前に、シンデレラ、大きなかぼちゃを1個取ってきて。それと大きなネズミを捕まえて来てちょうだい。急いでね」


貴賓席

「やっと物語らしくなってきましたね。ただ、継母や姉との会話のギャップが激しすぎます。また、意地悪な姉、出てこないかな…」


ナレーター(ララ)

「魔法使いは、杖を一振りして素敵なドレスとガラスでできた靴を出すと、かぼちゃを杖で叩きます。するとかぼちゃが大きく立派な馬車になりました」


魔法使い (リン)

「馬車を引く馬はネズミを使って…、それ!」

「あれ、間違ったかな。まあ、これで行こう。いいよね」


ナレーター(ララ)

「なんと、魔法使いはネズミを馬にしようと魔法をかけたのですが、失敗し、ビキニパンツ一丁で全身裸、頭にネズミの耳を付けている、どう見ても巨大な筋肉質のバケモノが現れたのです」


大ネズミ (ヘラクリッド)

「フハハハハハ! 呼ばれて飛び出てジャジャジャジャーン! 吾輩に何用ぞ。ん、馬車を曳いてほしいとな。喜んで!」

「なに、事情は知っておる。吾輩がお主に『真実の愛』とやらを掴むための手助けをすればよいのだろう。フ、フハハハハ!」


魔法使い (リン)

「よかったね。何とかなりそうだよ。早くドレスに着替えて。それと、夜の12時にお城の鐘が鳴るわ。12時を過ぎると魔法が解けるから気を付けなさいね。12時までに王子を堕として家に戻るのよ」

「おっと、大事なことを忘れるところだった。王子様は貧乳好きよ。よかったね」

「じゃーねー」


シンデレラ (セーラ)

「わ、わかりました。貴重な情報ありがとうございます」


貴賓席

「この話、全体的に可笑しいです。変てこりんです。誰が考えたんでしょう。早く、早く次に進んで!」

「フェーリス、落ち着け」

「フーッ、フーッ」(鼻息の音)


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