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第100話 登場!紅い三連星

 ユウキとユーリカが荷馬車の御者席に座って、収穫した野菜について話していた。


「これだけあれば、マヤさんも喜びますね」

「うん! あ、そうだ、フレッド君やシャルロットにも少し分けてあげようよ。前に家計が結構厳しいって言ってもんね」

「シャルロット、ウェイトレスのアルバイト代、全部両親に渡したそうですよ。家族思いの優しい子なんですよね。狩りをするのも家計の助けって言ってましたし」

「じゃあ決まりだね」


 ユウキが荷台を見ると、リサがカロリーナにしつこくお兄さんの事を聞いている。


「カロリーナさん。お兄さんは独身ですか? 彼女は? いない! そうですか。好きな食べ物は? 好みの女性のタイプはどうですか。貧乳の年上でも大丈夫ですかね。私、包容力はあるんですよ。乳はありませんが」

「リ、リサさん。落ち着いて、落ち着いて、目が怖い」


「必死すぎる…」

 ユウキはため息をつく。ヒルデは可哀そうなものを見る目でリサを見ている。



「ユウキさん、カロリーナさんの家で聞いた話、どう思います」

「生産量と輸送は問題ないけど、何故か流通量が不足するって話のこと?」

「ええ、奇怪しいと思いませんか」

「そうだね…。ねえ、ユーリカ。各地方から運ばれてきた野菜って、どういう経路で商店に行くの? 生産者が直接販売してるの?」

「直売もありますが、大部分は一度、青果市場に運んで、そこで競り落とされる仕組みです。価格と供給の安定のためですね」


(日本とあまり変わらないんだな)


「誰かが競り落とした後に、流通させないように保管か廃棄しているとか」

「あ、それはあるかも知れません。でも、そんなことが可能でしょうか。量が量だけに直ぐにバレると思いますが」

「う~ん、例えば、大人数で少しずつ競り落として、誰か、あるいはどこかに集めているとか」

「んん、もしかしたら、それがアタリかも。その誰かが集まった食料品を小出しにして、流通を減らしている可能性はありますね。でも、何が目的なのでしょうか」


(それが分からないんだよね。マルムト様が関係しているとは思うんだけど…)



「ユウキさん、あれ見えます?」

「うん、何者かが通せんぼしているね」


 ユウキは魔法剣に手を添えて戦闘態勢をとる。道を塞いでいる男たちの手前で、ユーリカが手綱を引き、荷馬車を止めた。


 道を塞いでいたのは10人ほどの男たち。手に手に得物を持ってニヤニヤと笑いながら近づいてくる。どう見ても野盗の類にしか見えない。


「あの、何か用ですか。道を塞がれると邪魔なので、どいてくれませんか」

 ユウキが相手に向かって退くように言うが、男たちは無視する。


 ユウキとユーリカは御者台から降りて武器を構えた。荷台からヒルデも降りてきて2人に並ぶ。カロリーナとリサは荷台から「がんばれー!」と無責任に応援をしている。


(これは、一戦するしかないか…)


 ユウキが戦いもやむなしと考えていると、男たちの後から一際体の大きい3人が出てきた。3人ともぼさぼさの赤毛に顔中に濃い髭を生やしている。魔物の毛皮を着て手には大剣や戦斧を持ち、とても人間には見えない。


「お、オーガだ…。3体もいる」ユウキが呟く。すると3体のオーガは人の言葉をしゃべった。


「違うわ! 誰がオーガじゃ。よく見ろ、人間だ!」

「オレの名はガイア!」

「オルテガ!」

「マッシュ!」

「人呼んで、イシュトアールの紅い三連星!」

 手下の男たちが「おー」と歓声を上げ、拍手する。


「ぐわっはっはぁ! 恐ろしくて声も出まい。だが、こちらが名乗った以上、お前らの口上を聞いてやる。さあ、お前らも名乗れ!」


 ガイアと名乗った男がユウキたちに向かって言うと、いつの間にかカロリーナがユウキたちの前にしゃしゃり出てきて無い胸を張った。


「言ったわね、よく聞きなさい!」


「この子はユウキ! 見事な巨乳でオヤジの心を掴んで堕とす。誰に見せるか、毎日が勝負下着のエロ女。人呼んでオヤジ殺しの乳魔人!」

「この女はユーリカ! 無駄にデカい乳と安産型の大きな尻を持つ女。戦斧を振るう度に揺れるおっぱいに男は見とれ、顔を埋めたいと願わずにいられない。人呼んで悩殺の女王、ビックバストクイーン!」

「このエルフはヒルデ! 大きい乳が自慢のウザ女。貧乳とは絶対に分かり合えないと抜かすイヤなヤツ。人呼んで魔乳自慢のエロエルフ!」


「3人揃って、ロディニアのデカ乳三銃士!」


「うっさいわい!」「誰がイヤなヤツですか!」

 3人はカロリーナをぼこぼこにする。


「ぎゃあああ! ごめんなさいー」


「お前ら、結構面白い奴らだな」

 ガイアがガッハッハと笑いながら言い、野盗の男全員が感心したように頷く。


「ゴホン、ところでボクたちに何の用?」

 ユウキが一つ咳払いをしてガイアたちに尋ねる。


「何、俺たちは腹が減っているんでな。お前らの持っている食料を頂こうと思ってな。大人しく渡せばお前らには何もせん。さあ、さっさと寄越せ」

「ふーん、イヤだと言ったら?」

「ガッハッハ! その時は痛い目を見る羽目になるぞ」


「何もしないと言ったけど、私たちの体も目当てなんでしょ。エッチな事した後、売り飛ばすにに決まってる。盗賊の連中は女を道具としてしか見ていないもん」


「ぬ、俺たちはそんなことはせん。そこらのチンピラどもと一緒にするな!」

 ガイアが何故か怒りを込めた声で返してくる。


「本当~?」

「本当だ! 何より…」

「なによ」

 ユウキが不審な目を向けて聞き返す。


「俺たちは女に興味はない!」

「何故、俺たちがそんな脂肪の厚い凸凹な体を持つ生き物を相手にせねばならんのだ! 漢の体こそ、神がこの世に創りだした最も強く、美しく、愛すべき芸術品なのだ!」


「げっ!」「うそ!」「キモ!」

「ま、まさか全員…、男色ホモなの? その身なりで?」


「男色と言うな! 俺たちは『体の絆』で結ばれた崇高なる漢たちなのだ!」

 ユウキたち女性陣は声も出ない。というより、あまりの衝撃で出すことができない。


「あ、あの…。荷物は、渡すことができません。お引き取り下さい…」

 ユウキは何故か敬語になって、引き下がるようお願いする。


「それはできん! 俺たちも生きるためだ。力づくで貰い受ける! デカ乳三銃士よ、覚悟はいいな。その醜い乳を無様に大地に晒すがいいわ!」


「お前ら、行け! 突撃!」


 ガイアの命令に、手下の漢共が吶喊の声を上げて押し寄せてくる。全員ペアになって手を繋いでいる。それを見てユウキとユーリカは腰が引けてしまった。


「ユーリカ、行ってよ」

「イヤですよ。ユウキさんが行ってください。イロモノの相手は得意ですよね」

「ヤダ! アイツら神聖隊だよ。ホンモノだよ」

 ユウキとユーリカは「どうぞどうぞ」譲り合う。そうこうしているうちに、ガイアの手下たちが近づいてきた。顔を青ざめさせている2人の前に、ヒルデがスッと立った。

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