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ゲームも知らない女子高生のごくありふれた日常  作者: まきしま鈴木@ようこそエルフさん&東京サバイブで書籍化&コミカライズ
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第1話 こんにちは、イブです

 ハロー、イブです。本名はイヴリン。

 あ、変な名前だけど、あたしはこれでもちゃんとした日本人だからね。そりゃまあ確かに半分くらいは海外の血が流れてるけどさ。


 と言っても髪と目の色以外は、割と日本の子に近いんじゃないかなーと思ってる。だからカラコンを入れたギャルとか、不真面目そうとか何とか言われちゃうんだけど……っとと、いつの間にか余計なことばっかり話してる。

 ごめんね、あたしはちょっとだけ集中力が足りなくって、勉強とかも苦手なんだ。授業中もよくそれで先生に怒られてるしさ。


「ただーいまっと」


 ぽいっと学生鞄をベッドに放る。

 埃が舞い、西日を浴びて輝くなかで、おもむろにセーターを脱ぐあたし。むーん、胸のところがキツいー。

 別に太ったわけじゃないんだけど、高校生になってから急に服が窮屈になってきて困ってる。別に太ったわけじゃないんだけど。


 せいやっ、と気合を入れてようやくセーターを脱ぎ、裏表になったのも気にせず、ぽぽいっとその場に放る。

 で、明るい時間に帰宅するなり制服をいそいそと脱ぎ、ジャージ姿になったのには、ちょっとした理由があったりする。つい先日、同級生の美羽ちゃんから一緒に遊ばないかって誘われたんだ。


 ちんまりした彼女から「遊ぼうーっ」て笑顔で言われたら、そりゃあ断れないよ。だってあたしも遊びたいし友達になりたいもん。えへへ、にんまり笑っちゃうくらい楽しみだなぁ。


 しかしお出かけするわけでもなく、そわそわそわ、と部屋をウロつくことしばし。ようやくにしてピンポンパンとチャイムが鳴って、あたしはお財布を持って階下に向かった。




 さて、受け取ったのはこのアメゾンの箱である。

 どうしてこんな買い物をしたのかと言うと、先ほど言った通り美羽ちゃんと遊ぶためなのだ。


「これが流行りのゲームかぁ。なんて言ってたっけ。オンゲー? MMO? んー、よく分からないけど友達と一緒にモンスターと戦ったりする? みたいな?」


 うーん、笑っちゃうくらいぜんぜん分かってないね、あたしって。

 そもそもゲームなんてまったく触らないで生きてきたし、いっつも外で走り回って遊んでたんだもん。走ったり汗をかくのって気持ちいいからさ。

 ついでに言うとお小遣いも少ないから、だったらゲームよりも甘いお菓子に消費したくなるのは当然のことであって……別に太ってないから。ふっくらしてるだけ。


 でも今日はせっかくの美羽ちゃんからのお誘いなので、お年玉貯金を崩してでもチャレンジしようと思っている。

 というわけでさっき購入したのが当の最新ゲーム機ってわけ。


「じゃ、早速組み立てちゃおう!」


 うーん、ゲームなんて久しぶり。小学生のとき友達の家で遊んだとき以来かも?

 そう楽しみにしながら、せいやと勢いよく箱を開ける……と、そこには丁寧に梱包された……なんだろう、水晶? 両手で持たないと落としてしまいそうなくらい大きくて重いのがあった。

 原石みたいな荒削りさがあるし、占い師のおばあちゃんが持っているような真ん丸なのとはちょっと違う。


「……なに、コレ?」


 ドのつく機械音痴だから不安だったけど、しょっぱなからあたしの許容量を軽く超えてきたぞ。へー、最近のゲーム機ってこんなことになってるんだ。

 困ったときは説明書。困らなくっても説明書。ぴぴっと汗を飛ばしながら、アメゾンの箱に入っていた説明書をあたしは覗きこむ。


「なになに、これを部屋の中心に置く? はあ、正確に中心でなければならないため、この巻尺を使ってください? えぇー、めんどくさっ!」


 はあ、と変なため息が漏れた。

 最近のゲームはこんな感じなんだなーと驚き半分、感心半分、めんどくさい半分……って、100%を超えちゃってるじゃん。

 まあ超えてもおかしくないか、あたしの頭の許容量をとっくにオーバーしてるんだしさ。


「むーん、部屋の中心って、このテーブルはどかさないとダメってことだよね。知らなかったけど、ゲームの準備ってすごく大変なんだなぁ。そういえば兄貴も『いんすとーるで半日かかった』とか何とか文句を言ってたっけ」


 あ、じゃあ急がないとだめじゃん。

 手にした巻尺をジャッと伸ばして、部屋の角から角をつなげる感じで交差させる。


「えーと、印をつけとこ。ここが水晶みたいなのを置く場所、っと」


 戸惑いながらも目印代わりのピンをそこに刺す。これできっちり部屋の中央……なのかなコレ。こういうときこそ機械に強い兄貴がいてくれたら助かったんだけど。


「で、ここにさっきの水晶を置く、と。その次は小物を周囲に均等に並べる? えー、電気はいつ使うわけ?」


 兄貴の勧めで、せっかく延長コードも用意したのに。

 などとぶつぶつ言いながらも説明書の通りに並べてゆくことにする。意味が全然分かんないけど早く美羽ちゃんと遊びたいし。


「ま、よく分からなくても組み立てたらそれっぽくなるでしょ」


 しかし駒みたいな木片とか、ガラスみたいで透明なやつとか、説明書を読んでもこれにどんな意味があるのか分からない。

 参ったなー、と思いながら壁の時計を見あげる。


「あー、もう待ち合わせの時間も近いじゃん。この部品、あといくつあるのさー!」


 がっでむ、と肩を怒らせながらアメゾンの箱と部屋を往復しながらウロチョロするあたし。ほんとにこれでゲームできるのかな、と怪しんでいたときに変化が起きた。


「あ、光った。へえー、面白い。さっきの部品が光の線で繋がっていくぞ。はー、模様みたいで綺麗ー。さすがは最新機種って感じ」


 などと見惚れることしばし。

 ふと気づく。組み立て終わってもまだ電源と繋いでいないことを。配線どころか部品がどれもこれもバラっバラ。

 青い瞳をぱちぱちとあたしは瞬かせた。

面白そうでしたら、ご感想、ブクマ、ご評価していただけると作者の励みになります。

どうぞよろしくお願い致します。

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