8.小さな洞窟で
お約束の盗賊に襲われる姫様を見つけることもなく、町を見つけるでもなく、再び夜を迎えようとしていた。
腹が減った。
道の途中に生えている木の実やキノコなんかを食べようとしたが、毒があるかもしれないと思いやめた。
そして、今日の安全地帯、なし。
これはマズい。
今は、誰も居ない小さな洞窟を見つけて、その入り口で休んでいるのだが、いつモンスターに襲われてもおかしくない。
念のため草木で入り口に封をしているが、洞窟の中からモンスターが沸いたらアウトだ。
ぐぅ~。
ああ、腹減った。
外の地面からゾンビがはい出てきた。
お化けっぽいフワフワ浮かぶ生物も現れた。
絶対この異世界、ファンタジーじゃなくてホラーカテゴリーだろ。
カラン、コロン。
俺の背後から、軽くて高めの音が聞こえてきた。
後ろを振り返る。
骸骨が目を青く光らせて、俺を見ていた。
「で、出たー! モンスター!」
「ギャー! 人間デスー!」
あたふた、あたふた。
俺と骸骨は、その場で慌てふためく。
「……ん?」
「カラン、コロン、ボク、悪イスケルトンジャナイデスヨ。
ドウカ命ダケハ、オ助ケヲ……」
えーと、目の前の骸骨、怯えていないか?
「お前、モンスターだよな?
さっき、俺の背後から襲い掛かろうとしてなかったか?」
「誤解デス! ボクノ寝床ニ侵入者ガ来タカラ、様子ヲ見ニキタダケデスヨ!」
ふむ、ここは骸骨の住処だったのか。
ってことは、俺の方が不法侵入者ということになるな。
「それは済まなかった。実は道に迷ってな。
近くに人里が無いか知ってるか?」
「アッチニ半日歩ケバ、人間ノ都市『ダークフレイム』ヘト着キマス」
「だっせぇ名前の都市だな……」
だが、俺の歩いている方角に間違いは無かったみたいだ。
明日には都市にたどり着く事が出来るだろう。
「貴重な情報、ありがとう。
それと、厚かましいのを承知でお願いがある。
出来ればここで一晩過ごしたいのだが」
「ド、ドウゾ。何モナイ所デスガ」
俺は腰を下ろす。
ふー、一日中歩いたせいで、足がパンパンに腫れている。
念入りにマッサージしなければ。
もみもみ。
「ヨケレバ、ボクガ揉ミマショウカ?」
「いいのか? じゃあ頼む。……ああ、そこ、それくらいの強さ……いい……」
疲れのせいか、マッサージが気持ちいいせいか、そのまま俺は眠ってしまった。