6.青いナイフ
朝だ。体が痛い。
木の上で寝たからなぁ。
起き上がる。
朝日が眩しい。
って、太陽じゃないよなアレ。
何か顔っぽい模様が見えるし。
あまり見ていると呪われそうだ、というか目が痛い。
下を見る。
モンスター達はどっか行った。
地面の下に潜っているのだろうか。
細い枝を1本折り、木を途中まで降り、枝で地面をツンツンつつく。
大丈夫だよな?
足を下した瞬間、地面から手が出るとか嫌だぞ。
そーっと地面に着地し、ゆっくり歩く。
うん、問題ない。
よし、じゃあここいらで、スキルを使ってみるとしよう!
「まずは『ツール表示』と唱える、だったか。
って、おお!」
空中に文字が現れた!
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最初に、材料の範囲を指定してください。
範囲:最大1×1×1メートル
射程:1メートル
残り:60分
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続いて光で出来た格子が現れた!
格子は俺から半径1メートルの場所を、こうやって手で自由に移動させる事が出来る!
サイズの変更も、1×1×1メートルの間で、自由に変更出来る!
「えーと、確定はどうすればいいんだ?」
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この範囲の材料を使用しますか?
はい いいえ
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はい、を選択。
とりあえずマックスの1×1×1メートル範囲で、地面を材料に指定した。
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次に、絵を描いてください。
残り:53分
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空中に、光のキャンバスが現れた。
そして光のペン、光の消しゴム。
……えーっと、これだけ?
定規とかあったら嬉しいんだけど。
まあいい。
描くか。
とりあえず欲しいのはナイフ。
神様がチートと言っていたので、このくらいは実体化してほしい。
シャッシャッシャー、と手慣れた手つきで、ナイフを1つ描く。
残り時間51分。
念のため、丁寧に描く。
取っ手に滑り止め、金属光沢も出して、っと。
で、残り時間39分。
よし、そろそろやるか。
「いくぞ。『実体化』!」
◇ ◇ ◇ ◇
・とある神の間
茶室のような空間で大の字で寝ている茶トラの猫神に、1枚の設計図と依頼書が届く。
「にゃー(ん? この設計図の物をこの材料で作りたいだって?
作る物はナイフ。材料は土、か。
コランダム製のナイフでも作ればいいんじゃないか?)」
猫神はコランダム製ナイフ、と空欄に書き、肉球スタンプを依頼書に押す。
依頼書と設計図は消え、猫神は神ポイントを獲得した。
【描写物実体化】スキルは、神様の承認を経て使用されるのだ。
なので、神様が認識出来ない物、実体化が許されない物、どうあがいても原材料では作れない物は実体化されない。
それを新泉尖が知るのはまだ先の話である……
◇ ◇ ◇ ◇
・西シカバネ草原
ポン! と軽快な音とともに、範囲指定した地面が少し凹んだ。
そして地面に現れたのはナイフ。
だったのだが、
「何だ、この青いナイフ」
俺の知っているナイフと違うのが現れた。
でもカッコいいからまあいいや。