2.俺、神様に命じられる
ここは辺り一面真っ白な床の空間。
宙に浮かぶ映像には、俺が死ぬ直前の様子や、死んだ後のことが映っていた。
何で自分が死んだと分かるのかというと、俺の体が半透明で、足の先が無いからだ。
映像が消え、俺の目の前に男が現れた。
ヒゲをもじゃもじゃに生やした、バスタオルみたいなのを巻いた筋肉質の男が言う。
「ようこそ、死後の世界へ、新泉尖よ。
貴様は死んだのだ」
「はぁ」
「貴様は今から異世界へと旅立つことになる。
いわゆる異世界転移というやつだ」
「そうっすか」
最近関わった仕事で、小説家にニャろうというサイトのネット小説の1つをコミカライズ化する、というのがあった。
そのネット小説も同じように、死んだ後、異世界という新しい世界へ生まれ変わる話だった。
生まれ変わった者は、チートと呼ばれる特殊能力を得て、好き勝手生きていく。
「で、俺は何を任されるんだ?
魔王討伐? それとも文明の開拓?」
「うむ、実はな、貴様の転移先に妻が落し物をしてしまってな……」
「それを探すために俺を送る、というわけか」
「落し物は全部で4つ有る。
いずれも各国で国宝指定されている」
「えっ、国宝を4つ盗むのか?」
「人聞きの悪いことを言うな!
元々妻の物だ! 勝手に人間が回収し、所持しているに過ぎない!
私達くらいの偉い神になると、気軽に現地に降りることも出来ないのだ。
なので、代わりに回収してくれると助かる。
その代わりに礼として、貴様にふさわしいチートを渡すから、頼むぞ!」
「それで、落し物の国宝とやらを回収した後、どうやって渡すんだ?」
「私が24時間監視していて、入手次第すぐに神の間に招き入れる。
だから貴様は何も心配せず、自分の役目を果たすのだ!」
「はぁ、了解っす」
「妻の落し物は、毒蛇の牙のネックレス、炎竜の瞳のブローチ、マーにゃんこの置物、ドラシルの種だ!
では頼んだぞ!」
神様がすちゃっと右手を挙げた瞬間、俺の体が光に包まれる。
次の瞬間、膝くらいの高さの草が生い茂る草原に、一人突っ立っていた。
って、俺、何のチートを渡されたのか、聞いてねー!