1.ある漫画家の終わり
他の作品が完結していないのに新作を投稿する、小説家のクズがここに居ます。
深夜4時過ぎ。
ようやく原稿が上がった。
そのままデータを編集さんに送る。
俺はデジタル派だ。
紙も保存に優れている点では悪くはないが、取り扱いは断然デジタルの方が手軽で良い。
何度でも線の書き直しが出来るし、最近は漫画制作ソフトも充実してきた。
紙で作るより早いし正確に作ることが出来る。
アシスタントの仕事も減る。というか最近はもっぱら一人で描いている。
とはいえ、〆切間近だとアシさんが欲しくなることもある。
そういう時は臨時で雇うのだが……
「よりによって、全員他の漫画家の所に行ってたとはなぁ」
俺はまだ〆切まで1日余裕を残して仕上げたのだが、他の連中は切羽詰まっているらしい。
頑張れ、頑張れ。
冷蔵庫を開け、500mlの冷えたビールを1本取り出す。
ぷしゅ。ごくごく。
「く~っ! 仕事の後はこれに限る!」
2年前に、健康診断で先生に、高血圧だからお酒と塩は控えるようにと言われたが、今まで何ともなかったし大丈夫だろう。
もし何かあっても最悪、病院に通えばいい。
冷えたビール最高ッ!
仕事終わりの、この楽しみを控えるなんて、ありえない。
「……ッ?!」
ガン、ガン、ガン!
バットで頭を殴られたように、頭が痛みだした!
さらに、ゲロが勢いよく出てきた。
直感的に、酒に酔って出たゲロではないと分かった。
やばい、やばい、これアカン奴や!
き、救急車……
何か右手が痺れている。
痺れを抑えつつ、何とか119番を押す。
頭痛い。
プルル、ガチャ。
『はい。事故ですか、救急ですか?』
「き……きゅりゅりゅ……」
え、呂律が回らないんですけど。
ガチャリ!
俺はスマホを落としてしまった。
運の悪いことに、衝撃でヒビが割れ、画面が真っ暗になった。
壊れたか。
頭痛い。助けて。
誰か。
誰か……
俺は、そのまま意識を失い、
死んでしまった、らしい。