6.防具屋、ヨシキ大興奮
一行は防具屋に着く。
「いらっしゃいませ〜」
防具屋の店番は10歳くらいの女の子だった。こんな少女で大丈夫か?
「邪魔するよ」
カジの真似をしながら入るヨシキ。
「10点」
「5点にゃ」
審査員は厳しかった。
「何をお探しですか?」
「この3人の防具と、女物の帽子を1つ買いたい」
先程ふざけていたヨシキは真顔で言う。
「皆さんのジョブを教えていただけますか?」
意外と少女はしっかりしている。
「俺が格闘家、こっちの娘が狩人だけど、拳闘士と剣士も持ってるからそのジョブに合ったものがいいな。それと…」
言っていいのか迷うヨシキ。リカを見ると、頷いている。
「この娘は獣戦士だ」
「分かりました。少々お待ちを」
店の奥に引っ込んで行く少女。
「え?」
ヨシキは奴隷がどうこうと言われるのかと思っていた。
「意外だったね」
ユウリも同じことを考えていたらしい。
「『獣人』でもお客様って事かにゃ?」
そうか。買い出しに獣人が来ることもあるかもしれない。それなら店からすれば客に変わりない。
3人で話していると少女が奥から何着か持ってくる。
「まずは防具になります。ウチにあるのはこれくらいになります」
ヨシキはまず『格闘家の道着』を見てみる。白い。柔道着だな。完全に。帯は黒だ。重量は柔道着より軽く、素材もやわらかそうで着心地は良さそうだ。
「試着しますか?」
小さいのに気が利く店員だ。個室に(カーテンで仕切っただけ)案内され、中に入る。早速着てみる。
「おぉ!軽い!動きやすい!」
カーテンを開ける。
「似合う?」
2人に聞いてみた。
「80点」
「90点にゃ」
以外に高評価。やはり馬子にも衣装だ。
嬉しそうなヨシキに聞こえないように2人はコソコソと話していた。
「なんかヨシキが別人みたいだにゃ。男前だにゃ!」
「今まで見た事なかった、ヨシキのチラ見せ胸筋…ぐへへ」
リカは驚き、ユウリはヨダレを垂らす。
「店員さん!これ買うからこのまま着て帰ってもいいかい?」
2人の様子に気付かない上機嫌なヨシキ。
「勿論です。お買い上げありがとうございます!」
少女はペコリとお辞儀をする。
「俺のは決まったから、次はユウリが選んで」
「胸筋……へっ?」
何事かを呟いていたユウリはヨダレを拭く。
「どうしたの?」
顔が赤いユウリ。
「何でもない。じゃあ、私の選ぶね」
何とか誤魔化す。そこへ店員が1着をお勧めしてきた。
「お客様は体のラインが出る服の方が似合うと思いましたので、こちらは如何ですか?」
「え!?マジで!?」
いきなりテンションが上がるヨシキ。店員が勧めた防具。それは…
「チャイナドレス!だと!?」
黒いチャイナドレスの様な防具だ。
店員は少し首をかしげながら商品の説明をする。
「こちらは『女格闘家のドレス』になります。拳闘士の方は回避メインの戦いをすると聞いてましたので、動きやすさも考え、こちらをお勧めします」
一理ある。別に回避メインの戦いをしなくてもユウリに着て欲しい。
「でも…これじゃ恥ずかしいよ」
「ユウリ!」
ヨシキは真剣な表情で続ける。
「俺はこれをユウリが着てくれたら嬉しい」
真顔。ど直球に自分の願望を伝えるヨシキ。
「そっか…ヨシキが喜んでくれるなら」
そう言って試着室に入るユウリ。
少しして、ユウリが恥ずかしそうに出てきた。
「おぉ!!」
「サイズぴったり!エロかわいいにゃ!」
体のラインが出たことによって強調される胸。引き締まったくびれ。健康的なお尻。スリットから伸びる魅力的な足。
「我が生涯にいっぺんの悔いなし!!」
拳を突き上げるヨシキ。
「変なこと言って…」
恥ずかしがりながら呆れるユウリ。
「冗談だよ。でも、すごく似合ってる!」
「ホントに!?じゃあ買います。このまま着ていくよ?」
「はい!気に入っていただけて何よりです。お買い上げありがとうございます」
店員はまたお辞儀をする。
「じゃあ最後はリカだな」
「こちらのお客様は、この装備で如何でしょうか?」
先程もグッジョブだった店員がリカにお勧めを伝える。獣人とか、奴隷という言葉を使わなかった店員にヨシキは感激した。差別の程度は人それぞれらしい。
「これは…?」
ヨシキはこの店員が神かと思い始めていた。
「こちらはオテギネ国より仕入れました、『女暗殺者の装束』になります」
くのいちですね分かります。何この店コスプレ専門店なの?
「獣戦士ということでしたので、動きやすさと、服の繊維に鉄を編み込み、攻撃を受けた際の耐久力を両立した、非常に優秀な防具です。ですが…」
申し訳なさそうに店員は続ける。
「動きやすさを追求した結果、少々露出が多いのです」
それはヨシキも思っていた。胸元も大きく開き、下に至ってはミニスカにも程がある。これじゃ屈むだけで見えてしまう。
「流石にこれは無理だにゃあ…」
そりゃね。露出趣味があるやつが着るものだよそれは。
「店員さん、伸縮性のある短パンの様なものはあるか?」
「ございます。少々お待ちを」
奥に引っ込む店員。
「どうしたの?」
「にゃにか思い付いたのかにゃ?」
「まあ待ってて」
ヨシキはニヤリと笑う。
店員が戻ってきた。
「どうぞ」
店員が持って来たもの、それは。そう。スパッツ。
「これを下に履けば隠せるよ?」
ヨシキはリカに勧める。
「それなら…着るだけ着てみるにゃ」
試着室に引っ込むリカ。ヨシキはウキウキする。
リカが出て来た。
「ど、どうかにゃ?」
「100点」
「100点」
満場一致で満点です。
翠の装束に黒のスパッツ。リカはユウリほどではないが、それでも体の線は充分細く、胸はユウリより大きい。
「こんなくのいち居たら、男はみんな骨抜きだ」
「リカ!凄い似合ってるよ!」
大絶賛の2人。
「そ、そうかにゃ…それなら買うにゃ」
照れながら店員にリカは言う。
「そちらも着ていかれますか?」
何も言わず頷くリカ。
「お買い上げありがとうございます!」
「おっと、リカの装束が似合い過ぎてて忘れてた」
リカはそう言われて顔を真っ赤にして俯く。
「この装束に似合う帽子も頼む」
「それでしたら」
引っ込んですぐ戻ってくる店員。
「店員さん、良いセンスだ」
「ありがとうございます」
持って来たのは装束と同じ緑色のフードの様なもの。装束にセットして装備できる様だ。
「これでひと通り揃ったかな。勘定頼むよ」
「はい。4点で4万2千ソルになりますが、値引きいたしまして4万ソルになります」
「苦しゅうない。良きに計らえ」
ヨシキは4万ソルを渡す。
店員は意味が分からない。だが、
「ありがとうございました。お客様の来ていた物は袋にお入れしますね」
そう言って3つの袋を渡しながら、
「またお越しください」
と満面の笑みでお辞儀をした。
防具屋を出た一行は雑貨屋に向かう。買った武器、来ていた衣服など荷物はヨシキが全て持っていた。
「じゃあ、回復薬やら今日の飯やら買って、カジさんの家に向かいますか」
ウキウキして話すヨシキ。新しい装備に慣れずソワソワする2人。
「そうだね」
「ヨシキは荷物大丈夫かにゃ?」
「大丈夫。荷物持ちは男の仕事!」
そうニコニコ話すヨシキに2人は少しキュンとする。
一旦分岐点まで戻り、今度は右の道に行く。数分でアイテム屋に着いた。
「いらっしゃい!」
元気なおばちゃんだ。
「回復薬か薬草あるかい?」
「あいにく回復薬はちょうど切らしててねぇ。薬草なら沢山あるよ」
どの程度回復するか分からないヨシキは多めに買うことにした。
「30個くれ。あと、使い方は?」
「食べるだけで大丈夫だよ。それにしても30個なんて、遠出でもするのかい?」
薬草を袋に詰めながらおばちゃんは聞いてくる。
「しかもこんなにべっぴんさんを2人も連れて…」
「そんなんじゃない。仲間なんだ、俺たちは」
受け答えしながらヨシキは自分の考えが的中したと思っていた。この世界の人が獣人と人を区別している要素は、恐らく耳だという事。だからリカにフードを被ってもらった。結果おばちゃんは気付かないでいる。
「まあ何にせよ気をつけな。最近モンスターが凶暴になって来ているって話だ。回復薬を切らしているのもそのせいさ。ほい、薬草30個。他に何かいるかい?」
薬草を渡しながらおばちゃんは言った
「紐か縄の様なものあるか?」
「あるよ。ちょい待ち」
奥に引っ込んで行くおばちゃん。
「なんだこれ?」
並んでいる商品を見ていたヨシキは素っ頓狂な声を上げる。
「牙?だよな?」
「そうみたいだね。刺さったら痛そう」
「そいつは『ウルフの牙』だよ。ほら、紐だ。長さは?」
おばさんは黒い紐を差し出しながら言った。
「両腕を広げたくらいの長さで良いよ。それより、ウルフの牙って言った?」
「何だ。『ドロップアイテム』を知らないのかい。変わった人だね」
その言葉を聞いて何となく察するヨシキ。おばちゃんが説明し始める。
「モンスターを倒すと、たまに『ドロップアイテム』を残すんだ。それを皆アイテム屋に売るんだよ」
「なるほど!」
「強いモンスターほど良いものを落とすらしいけど、そんなに強いのはここいらには居ないからねぇ〜」
「情報ありがとう。ドロップアイテムは…この『ウルフの牙』は何に使うアイテムなんだ?」
「武器屋に持って行くと武器の素材になるし、防具屋に持って行くと防具の素材になる。牙1つくらいじゃ話にならないけどね。ウルフの牙は砕いて飲めば解毒薬さ。ここの集落ではみんなそうしてるよ」
解毒、つまり、毒という状態異常が有るという事になる。ついでにヨシキはおばちゃんに聞いてみる。
「じゃあウルフの牙を10個くれ。出来れば砕いて欲しいんだが。それと、他にどんな状態異常が有るのか教えて欲しい」
「10個だね。砕くのはちょっと時間かかるけどいいかい?」
「時間は大丈夫。砕いてくれ」
「分かった。待ってな」
そう言うとおばちゃんは奥から金槌と麻の小袋を10個持って来た。
「じゃあ砕きながら教えよう。まず、さっきも言ったが、毒だね」
おばちゃんは手慣れた様子で麻の小袋に牙を入れ、金槌で砕いて行く。
「あと、麻痺、眠り、基本的にはこの3つだ。それと…」
砕きながらおばちゃんは続ける。もう5個は砕き終わっている。
「魅了、恐怖、混乱という状態異常もある。これは主に人が使う幻惑魔法でかかるものだね。モンスターでこの3つを使うのは極少数だね。後は、魔族がよく使うらしいね」
最後の1個を砕き終え、おばちゃんは立ち上がる。
「魔族?居るのか?」
「あんた、魔族も知らないのかい。一体今までどこに住んでいたんだい…」
日本です。と心の中でヨシキは答えた。
「魔族は長いこと人とこの世界を奪い合って戦争している。数は人の方が多いが、何でも魔族と戦う者は何故か魔法が使えなくなるらしいんだよ。不気味な話さ。それで今も戦争は続いている。と、言っても、表立って戦う者は少なくなったみたいだよ」
「そうなのか…。何で戦争が始まったんだ?」
「それは分からないんだよ。太古の昔からずーっと戦っているみたいだけど、ね。不思議だろ?誰も知らないんだよ、戦う目的を」
これもきっとデミウルゴスが言っていた固定概念になるのかもしれないとヨシキは思っていた。
「ありがとう。知らなかったよ。助かった」
「良いんだよ。長いこと話せてあたしも楽しかったよ。お客もあんまり来ないしね。ほれ、砕いた牙だ」
そう言って10個の小袋を手渡される。
「全部で3100ソルだけど、3000ソルに負けておくよ。また買いに来ておくれよ」
「ありがとう。それじゃ!」
一行はアイテム屋を後にする。
先程からユウリが考え込んでいる。
「どしたのにゃ?ユウリ?」
「さっきのおばちゃんが言ってた幻惑魔法って言葉、どこかで見たことある気がして…」
「あ!」
ヨシキが声を上げた。持っていた、ヨシキは幻惑魔法関連のスキルを。そして、リカも持っている。
「俺スキルにあるよ。幻惑魔法効かないって。あと確か、リカも幻惑魔法を弱めるスキルを持ってたはず」
「どうりで見たことあると思ったよ、それにしても」
あ、これは来るな。ヨシキは直感した。
「私だけ持ってないのか…」
落ち込むユウリ。すかさずフォローするヨシキ。
「大丈夫!俺はユウリに魅了されてるから!」
歯の浮くセリフをフォローのためとはいえ言ってしまったヨシキ。言ってから、これほぼ告白だよね?と自分で気付くがもう遅い。ユウリは顔を真っ赤にし、俯く。
「ごちそうさまですにゃ」
リカはつまらなそうに言った。
「2人とものろけていないで早く行くにゃ」
「あ、あぁ、ごめん」
「…あの、ヨシキ、さっきのって…?」
「ごめん、そういうつもりで言ったわけじゃ無いんだ」
「そう…なんだ」
「でも!!」
「ユウリもリカも俺は大事だと思ってる。これは本心だ」
「それは私も同じだよ」
「私もだにゃ。2人ともかけがえのない存在にゃ」
「2人ともありがとう。それじゃ行こうか」
何とか取り繕えた。ヨシキもユウリのことは好きだ。だがタイミングは今じゃない。
「次は雑貨屋だな。食べ物もあるんだよな?」
「そうだにゃ。とりあえず今日の食料だけ買うにゃ」
「そうだね」
「にゃにか食べたい物はあるかにゃ?」
「折角だし、魚料理がいいな」
「分かったにゃ、魚なら任せるにゃ!」
俄然やる気のリカ。猫だもんね。
「いらっしゃい」
「魚!あるかにゃ?」
威勢のいいおじさんに噛み付く勢いでリカは言った。
「うおっ!何だその言葉は!?魚ならあるが…」
指差した先ですぐ品定めを始めるリカ。10秒とせず、3尾を選んで持って来た。
「お嬢ちゃん凄いな!どれも新鮮な魚だ」
見た目はアジだが何の魚だろう。
「じゃあ、『アジ』3尾で300ソルだ」
1000ソルをヨシキが渡して700ソルのお釣りを受け取る。
「ありがとよ。また頼むぜ」
魚を買い終えた一行はカジの家に向かう。
「荷物は一回家に置いてこよう」
「そうだね。全部持たせてごめんね」
「へーきへーき!そうだ!」
ヨシキは荷物から紐を出す。
「ユウリ、これを持ってて」
紐を鞘の部分に括り付け、ユウリに渡す。
「その格好だと腰にさせないでしょ?背負ってみて」
「ピッタリ!ありがとうヨシキ!」
ユウリはご満悦だ。
「あとこれも。これはリカもだな」
革のグローブを2人に手渡す。
「装備しておいて、あと、ユウリにもう一つ」
鉄の手裏剣を渡す。
「ユウリが1番命中が高いから、持っていてくれ。ホントはリカに持たせたいんだけど…」
「だよねー」
ヨシキとユウリはリカを見る。くのいちだからね。見た目が。
そうこうしているうちにカジの家の前を通りかかる。
「ひとっ走り荷物置いて来るから2人はここで待ってて」
「分かった」
「了解だにゃ」
駆けていくヨシキ。5分で戻ってきた。
「それじゃ、入るか!」
戻ってきたヨシキは言う。
「お邪魔しま〜す」
「おう、来たか、上がってくれ。コッチだ」
立派な内装に広すぎるくらい広い家。その2階から声が掛かる。階段を上り、呼ばれた部屋に向かう。
「おぉ!?なんだ?似合ってるじゃねーか」
3人の姿を見て驚くカジ。別にカジの為に着替えたのではない。
「ま、とにかく座ってくれ。おい!」
3人に座るよう促し、奥に声を掛ける。
少しして年配の女性が紅茶を運んで来た。メイド的な人なのだろう。
「さて、まずは今回の件本当に済まなかった」
カジはまた頭を下げた。
「もう本当に気にしなくていいにゃ。カジさんに免じて許すにゃ」
「ありがとう。リックなんだが、歪んだ性根を叩き直すために、追い出したよ」
「追い出した?」
「正確には他の国を回って勉強してこい。ついでに鍛え直せと言って、な」
「そうか」
まあ、どうでもいい。
「それで、詫びのことなんだが、これでどうだろう」
カジはテーブルに様々な武器を置く。弓、剣、槍などどれも高価な物らしい、そしてヨシキは1つの武器が気になった。
「カジさん、これはどんな武器なんだ?」
「それはな、『ミスリルクロー』という武器だ」
手に装備して使うその武器は、ちょうど手の甲の辺りから3つの刃が出ているような物だ。
「気に入ったのなら持って行け。もちろん金はいらん」
「ホントに?どれも高そうだよ」
ユウリはオドオドしている。と、リカが
「カジさん、ミスリルクロー私が貰っていいかにゃ?」
「やっぱりこの武器が正解だったか。持って行きな」
どうやらリカが使いそうな武器をかき集めてくれたらしい。
「そういやこの辺にリカの使う武器は売ってないと言ってたもんな。カジさん、俺からも礼を言う。ありがとう」
「気にすんな。他にも好きなだけ持って行け」
「でも、もう武器は買って来たんだよね。ついさっき」
「そうか…済まない」
「謝らないでほしいにゃ。カジさんのお陰で私の武器が見つかったにゃ」
「そうそう。これだけで充分だ。それに、ミスリルってことは高いんだろ?もう貰えないよ」
「カジさん私これ貰ってもいい?」
「話聞いてましたか姐さん?」
「ごめん、でも…」
ユウリが持っていたのは武器ではない。小さめの袋だった。
「おぉ忘れてた!これは3人分用意してある。『アイテム袋』だ。冒険には必須だな」
「アイテム袋?」
「この袋には色んなものを入れておけるし、上限は無い。そしていつでも取り出せる。凄いだろ?」
「四次元ポケットかよ」
「あ、私もそれ思った!」
「良いのか?これこそ貴重なものなんだろ?」
「気にするな。昔俺と仲間が使っていたものだ。あと、この袋に入れたものは時間が止まるようになっている」
「マジか!じゃあ腐りやすい物も入れておけるな」
「ありがとうカジさん!」
「ありがとにゃ」
「俺には無用の長物だ。使ってやってくれ」
「ありがとう。大事にする」
「おう」
カジはニカッと笑う。
「そろそろ昼飯だ。食べていくか?」
「いや、流石に悪いからもうそろそろ帰るよ」
「そうか…じゃあ、何か困ったことがあれば言ってくれ。あんた達なら喜んで手を貸そう」
「分かった、色々と世話になった。本当にありがとう」
「ありがとう」
「ありがとにゃ」
3人は頭を下げる。
「気にしないでくれ、では、またな」
カジの家から出て自宅へ向かう。
「カジさん、俺達の事えらく気に入ってるみたいだったな」
「うん。なんか嬉しそうだった」
「私にもそう見えたにゃ」
きっと昔の仲間の事を思い出していたのだろう。
「てかユウリはなんでアイテム袋を欲しがったの?あのタイミングで」
からかうヨシキ。
「あの袋に気が付いて、袋の中を見てたら間違って手裏剣落としちゃって…そしたら手裏剣が袋に吸い込まれていったから、きっと荷物入れなんだろうなと思ったの」
「そして、手裏剣と念じたら出て来たから、この先この袋が必要かと思って」
確かに個人でアイテム袋を持っていた方が色々便利だ。
「グッジョブユウリ!」
サムズアップして見せるヨシキ。
「ありがとう。早く帰ってご飯にしようよ。お腹空いた」
「魚なら任せるにゃ!」
「昼飯食ったらちょっとモンスター討伐に行かないか?色々試したいし」
「いいよー」
「分かったにゃ」
話していると家に着いた。
「じゃあ、折角新鮮な魚にゃので、塩焼きにするにゃ」
そういえば魚しか買っていない事に今更気付くヨシキ。
「他に食料は無いんだよな?」
「魚があれば充分にゃ!」
猫かよ!猫だった!まあ、我慢しよう。夜は色々買ってこよう。そう考えるヨシキだった。
少ししてリカが焼いたアジを持ってくる。下処理も完璧で、今まで食べたどのアジよりも塩加減が絶品だった。
「流石っす猫さん!」
「ホント美味しい!凄いねリカ」
3人で少ない昼食を取り、午後にいよいよモンスター討伐に出かける。
次回!モンスター討伐!剥ぎ取りはしません(笑)
読んで頂きありがとうございます。