童話における販売業について(三十と一夜の短篇第18回)
主人公の職業は、架空のものです。
また、作中で主人公が説明している事柄は、作者が付け焼刃な知識で書いたものです。実際のルールとは異なる可能性があります点、ご理解ください。
雪が降っておりました。
暗い夜の空から音もなく落ちてくる白い雪は途切れることなく、少女の頭に冷たく降り積もります。
「マッチ、マッチはいりませんか」
少女の声に足を止める者はいません。
「マッチ、マッチはいりませんか」
今日でなければ、心優しい誰かが足を止めてくれたでしょう。少女の小さなはだしの足が、雪に冷やされて真っ赤になっているのを憐れんでくれたでしょう。
けれど、今日は一年で最後の日。誰もが、家族と過ごす暖かい部屋を思い浮かべながら、家路を急いでいます。マッチを買ってくれないどころか、少女のことを気にかけてもくれません。
降り積もる雪を踏み歩く人の姿もなくなったころ、とうとう少女はひとつの家の壁にもたれて、座り込んでしまいました。
体を丸めてみても、少しも寒さはやわらぎません。冷え切った手のひらをこすり合わせても、ちっともあったかくなりません。
売り物のマッチを擦ってしまおうか。少女がそう思ったとき、こつり、と硬い靴音が聞こえました。
少女が弱々しく顔を上げると、黒いコートを着た男が黒い傘を差して立っています。
「あの、マッチを買ってくれませんか?」
少女が期待を込めて聞きますが、男は首を横に振りました。
「いいえ」
がっかりする少女に、男は胸元から一枚の紙を差し出します。
「わたくし、こういう者でして」
かじかむ手でどうにか受け取った少女がその紙に目を落とすと、そこにはこう書いてあります。
「販売業取締官、三奈公平……?」
「はい。平たく言いますと、販売業が決まりに則り正しく行われているかを調査する仕事をしております。三奈と申します」
まったく平たくなっていない説明をはきはきとする男は、ノンフレームの眼鏡の下の意思の強そうな目、きりりと吊り上がった眉に遊びのない口元とどれをとってもお堅い仕事が似合いそうな顔をしています。この寒いのにも関わらず、マフラーもまかず防寒よりも会社の規定を重視しているであろう服を着ているのも、彼の人となりを表しているようです。
そんな彼が自分に声をかけてきた理由がわからなくて、少女は首をかしげます。
少女の戸惑いを察したのか、はたまた単に自分の職分を全うしようというのか、三奈が用件を話し出しました。
「このたび匿名の方から連絡をいただいたのですが、あなたはマッチを売っておられるとか。雪の降らないい日であれば、路上に商品を並べて販売することもあるのでしょうか」
「ええ、はい」
少女は父親に言われてたびたびマッチを売り歩いておりましたし、三奈に言われたような売り方をすることもあったので、素直にうなずきます。少女が認めたことをしっかり確認し、三奈は続けます。
「それでは、道路使用許可はとっていらっしゃいますか?」
「ええと……?」
聞きなれない言葉に少女が首をかしげると、三奈が眼鏡のブリッジをくい、と持ち上げました。
「道路使用許可です。路上での販売にもいろいろと種類があるのですが、あなたの場合、取り扱っている商品は食品ではないため行商販売業等の手続きは不要です。しかし、路上で商品を並べて販売を行っているのであれば、道路使用許可が必要となります。今回の場合、場所を移動せずに路上での販売を行う、という形態ですので、許可の分類としましては三号許可となりますね」
「はぁ……」
三奈がずらずらとのべた言葉の半分も、少女には理解できなかった。けれど、三奈は気にするそぶりもなく続けます。
「ご存知ないということは許可もないのでしょうが、それ以前の問題として、あなたは未成年ですよね? 未成年者が夜間に出歩く場合は保護者の付き添いが必要なはずですが、保護者の方はどちらに?」
「あの、ええと、母は亡くなりました……。父は、家にいるはず、です」
歯切れの悪い少女の言葉に、三奈は顔色を変えずにうなずきます。
「そうですか。それは問題ですね。その問題に関してはわたくしの管轄ではありませんので、別の者に引き継ぎます」
三奈はそう言って自身のコートを少女の細い肩にかけると、どこかに電話をします。気づけば、少女はいつの間にやら三奈の傘の下に入っていました。
戸惑いながら見上げた三奈の肩に雪が降り積もるのが見えて、少女は困りました。
コートを返そうにも、電話中に話しかけるのは迷惑になるでしょう。傘を三奈のほうに傾けようにも、傘の柄を持っているのは彼自身なのでできません。
少女がおろおろしているうちに三奈は電話を終えました。けれど、話しかける間も無く別のところに電話をかけメールを確認し、忙しそうにしています。
それからさほど時間をおかずに、数人の大人がやってきました。そして、あれよあれよという間に少女は馬車に乗せられて、気づけば三奈の姿はありません。
三奈の同僚だという人に連れられて着いたのは、大きな教会でした。きれいな服とじゅうぶんな食べ物、そして暖かい寝床を手に入れた少女は、けれど満たされない気持ちを抱えていました。
シスターは優しく、共に暮らす子どもたちとも仲良くやっています。夢にまで見た幸せな暮らしを送っているのに、少女の笑顔はときおり曇ります。
心配したシスターに希望すれば父親にも会えると言われましたが、少女は首を横に振りました。少女の願いは別にあったのです。
丈の合わないコートを羽織り、小さな名刺を握りしめた少女は、優しかったおばあさんのお墓に通いました。そして、三奈に会ってお礼が言えますように、と祈るのでした。
そのころ、三奈は別口の仕事で森を歩いていました。片手に持つ携帯電話で、誰かとメールのやり取りをしているようです。
「まったく、まだ日数に余裕があると何度も言っているのに……」
明日の相談時には少しは落ち着いていてくれるといいのですが。ぶつぶつとつぶやきながら業務メールを返信していた三奈は、森の木々の間に何やら可愛らしい家が建っているのを見つけて足を止めました。
「このあたりに個人所有の土地は無いはずですが、無許可の建造物でしょうか?」
この森一帯は国立公園だと聞いていた三奈は、不思議に思い近付きます。すると、不意にその家の窓が開いて、中から美しい黒髪の少女が顔を出しました。
「うふふ。小鳥さん、こんにちは」
少女は、窓のすぐそばにある木の枝にとまる小鳥に微笑みながら声をかけます。小鳥は特別な反応を返すでもなく仲間の鳥と鳴き交わしておりますが、少女は満足げに頷きます。それだけでなく「小鳥さんのおかげで今日も頑張れるわ、ありがとう」となぜか頬を染めています。
それを見て、この少女では土地の権利うんぬんの会話は難しい可能性がある、と三奈が躊躇したときです。
「おじょうさん、りんごはいかがかね」
家の向こう側から、しわがれた声の老婆が現れました。片手に下げたかごの中から、赤いりんごを取り出して少女に差し出しています。
「まあ、おいしそうなりんご! でも、ごめんなさい。わたしは、知らない人から買い物をしてはいけないと言われているの」
少女が残念そうに言いますが、老婆は気にせずりんごを勧めてぐいぐいと差し出します。少女は困ったわ、と言いながらも今にもりんごを手に取りそうです。
三奈は、すぐさま二人の元へ駆け寄りました。
「訪問販売を行う場合には事業者の氏名、訪問の目的、販売する商品の種類を説明が必要です」
颯爽と現れた三奈の口から放たれた言葉に、少女も老婆も動きを止めます。
それを見て、三奈は眼鏡のブリッジを持ち上げ続けます。
「つまり、訪問販売に来たらまず、会社名やご自分の名前をはっきりと告げる必要があります。それから、今回の場合であればりんごを売りに来たこと、りんごの品質や産地等の情報を告げなければならない、ということです」
ずいぶんと分かりやすく噛み砕いて説明できた、と内心で自負する三奈に対し、少女も老婆も先ほどと寸分たがわぬ姿勢を保っています。
その理由に思い至らない三奈は、空気を読まずに老婆を促します。
「では、まずどちらからいらしたどなたですか?」
「あ、はい。ええと、城から来ました、女王です」
返ってきた答えに、沈黙が落ちました。
老婆、もとい女王はしゃがれ声を作ることも忘れて素で答えてしまったことに動揺し、少女は思わぬ相手であったことに動揺しています。三奈だけが、その後に続くだろう氏名を待って黙っています。
「…………っ!」
しばらく続くかと思われた沈黙のさなかに突然、女王がりんごを放り投げて回れ右をし、駆け出しました。腕を大きくふり、足を高く上げて前傾姿勢での全力疾走です。そこには老婆らしさはもちろん、女王らしささえ、かけらもありません。
あまりに見事な走りっぷりに、少女と三奈は呆気にとられて小さくなる背中を見送ることしかできませんでした。
森のなかに静寂が広がり、軽やかな鳥の声が響きます。
はっと我に返った三奈はせきばらいをひとつして、眼鏡を直してから少女に向き直りました。
「名乗らない販売者には、ご注意を。ところで、こちらにはあなたおひとりでお住まいですか?」
「え? いいえ。ちがうわ。こびとさんたちといっしょよ」
「……こびと、ですか」
にっこり笑った少女の答えに三奈は少し考えます。こびとは果たして、人間のルールを聞いてくれるだろうか。こびとに向けて文書を残すのと、この少女に伝言を頼むのでは、どちらが確実だろうか。
「では、こちらの書類をこびとの方にお渡しください」
三奈はすぐに結論を出しました。まだ見ぬこびとに希望を託すことにしたのです。
「この紙はなあに?」
「こちらの家に関係する書類ですので、かならずこびとの方に渡してくださるよう、お願いします」
無邪気に首をかしげる少女に、三奈はそれだけを言って立ち去りました。
後日、三奈の残した書類を読んだこびとから連絡があり、老婆に扮した女王の残したりんごから毒が検出されたり、少女がどこかの王子と結婚したり、とある城の女王が姿を消したりしましたが、それは三奈には関係のないことです。対応にあたった別の部署の職員が少女とのやりとりに疲れ、三奈に愚痴を言った程度です。
少女の住む家をあとにした三奈は、迷いなく進みます。しばらく歩くと森を出て、海が見えてきました。あの海が、今回の目的地です。
さて仕事に向かうか、と動き出したとき、不意に三奈の携帯電話が振動しました。見れば、同僚からの電話です。
「どうしました。急ぎの要件ですか」
「えー、急ぎといえば急ぎですかね。ちょっと自分では判断がつかなくて……」
電話に出れば、なんとも歯切れの悪い返事が聞こえてきます。同僚の声の調子から、それほど重大な要件ではないと三奈は判断しました。
「こちらはこれから海辺の例の相談者に話を聞くところです。急ぎと断言できない用事であるならば後ほどかけ直しますので、失礼します」
「あっ、ちょ!」
「でんわ、かわって! あのっ!」
プツ、ツーツー……。
何やら電話口でもめていたようですが、三奈はぶつりと電話を切ります。最後に聞こえた声は子どもの声だったような気もしますが、同僚は児童福祉関係を受け持っているので、特段不思議なことでもありません。
電話を機内モードに設定して、着信をシャットアウトした三奈は、静かになった携帯電話を鞄にしまうと気持ちをあらためて仕事に向かいます。
浜辺に着きあたりを見渡した三奈は、岩に腰かけ長い髪を風になびかせながら海を眺める憂い顔の女性を見つけました。事前の連絡にあった特徴に合致していますから、おそらくあの女性が今回の相談者でしょう。
「こんにちは。あなたが、連絡をくださった人魚のヒメさまですか?」
「……! ……!!」
三奈が声をかけると、振り向いた女性は必死の形相で何かを訴えてきます。けれど、そののどからはなんの音も聞こえてきません。
苛立たし気にのどに手をやり、立ち上がろうとする女性を三奈が手で制します。
「座ったままで構いません。声が出ないのですよね。うなずくか、首をふるか、細かいことであれば筆談で構いませんので、まず状況を確認させてください」
女性が頭をぶんぶんと上下させるのを確かめてから、三奈は事前にもらっていた情報を確認していきます。
「まず、あなたの名前はヒメさま。種族は人魚。間違いありませんね?」
コクコク頷くヒメを見て、続けます。
「今回の相談内容は魔女との契約をクーリングオフできないか、というもの、と認識していますが、よろしいでしょうか」
ヒメがしっかり頷くのに、三奈も頷き返します。
「それでは、魔女との契約内容を確認させてください。まず、あなたは人間になりたいと魔女のもとへ向かった。そして、声と引き換えに人間の足を手に入れた。しかし、魔女の力はあなたの想い人が結婚するまでしか続かず、あなた以外の方と結婚した場合はあなた自身が泡になって消えてしまう。ということでしたね」
ヒメは頷きます。
「あなたの要望としては、せっかく手に入れた足が痛み、想い人にすでに恋人がいることから、魔女との契約をなかったことにしたい。そういうことでよろしいでしょうか」
三奈が問えば、ヒメはこくりと頷きます。必死に、すがるような目で三奈を見つめながらう頷きます。
「では結論からいきますが、あなたと魔女との契約をなかったことにはできません」
「……っ!!」
告げられた言葉に、ヒメは声なき悲鳴をあげました。見開かれた目には、真珠のような涙が光っています。
けれど、三奈はそんなヒメに動じることなく続けます。
「第一に、クーリングオフが適用されるにはいろいろと条件があるのです。自ら出向いて購入や契約をした場合は適用外であったり、自ら出向いた場合でもエステティックサービスならば一定の期間や金額を超える場合は適用可能であるなど」
そこで言葉を切った三奈は、一度、事前資料に目を落とします。律儀な魔女は、契約内容を書面に落としておりました。三奈は今回の相談と共に、その写しをもらっていたのです。
「それを置いておいたとしても、足が痛む件については魔女からの事前説明があった。また、あなたの想い人が誰を好きになるかということについては魔女に責任のないことですので、あなたが水泡に帰すという条件を飲んでいる以上、こちら側から契約を反故にする、というのは難しいでしょう」
抑揚のない声で告げられた内容に、人魚のヒメの眼からほとほとと涙がこぼれ落ちます。
人魚であったころならばうろこに落ちてはじけ、哀しくも美しいきらめきとなったであろう涙は、今はただ震える膝を覆うスカートを濡らすばかりです。
そんな物悲しい光景に心を痛めるでもなく、淡々と続けるのが三奈公平という男です。
「ですが、契約の内容をあなたに有利になるように、働きかけることは可能です」
「……?」
涙に濡れた顔を上げた人魚のヒメは、言葉の意味がわからず首をかしげます。
「あなたの想い人が他の者と結婚するとあなたが水泡に帰す、という点に変更を願い出ましょう。注釈を加えて『この場合の想い人とは何人目であるかを問わないこととする』としましょう」
三奈が言うと、ヒメはぽかんと口を開けます。
「今回の契約では、初恋に限ると書かれていないため、この変更が通る可能性は高いと思われます。生き長らえれば今後、好きになる異性のひとりやふたりいる可能性はあるでしょうから、足の痛みや声の件も、今後時間をかけて良い方向に持っていきましょう」
言い終えて、くいっと眼鏡のブリッジをあげる三奈に、うっかり人魚のヒメがときめきかけたそのときです。
「そのときめき、ちょっと待ったーーー!!!」
叫び声を上げて登場したのは、かぼちゃ型の馬車に乗った少女です。馬車には、もうひとり大層美しい女性が乗っています。
「送ってくれてありがとうございます! 舞踏会、楽しんできてくださいね!」
走行中の馬車から飛び降りた少女に手を振りながら、美しい女性は去っていきました。
奇抜なデザインの馬車が走り去ると、少女は三奈とヒメに向き合います。
「あなたは、マッチ売りの……?」
「はい、覚えていてくれたんですね!」
三奈のつぶやきに笑顔で答える少女は以前、三奈が担当した件で知り合ったマッチ売りの少女でした。
少女は笑顔を消すと、身の丈に合わない大きなコートを翻して、人魚のヒメに詰め寄ります。
「お姉さん、いいですか。こちらの三奈さんは、融通の利かない仕事人間です。ピンチを助けられてうっかりときめいたとしても、報われません。現にわたしもお礼を言うため連絡を取ろうとして、何度も挫折を味わいました。手紙を書いても音沙汰がなく、気持ちが届いたのかわからない。お礼を言うためにお会いしたいと伝言を送れば、自分の仕事をしただけなので不要だと伝言を返されました。せめて電話口で感謝の気持ちを伝えたいから電話番号を教えてほしいと願えば、業務用の携帯電話なので業務外の用途のためには使えないと断られました」
少女の言葉で、三奈はしばらく前に届いた手紙を思い出しました。差出人は見知らぬ名前だったため、封を開けて業務に関する書類ではないことだけ確認してそれっきりにしてあります。
若い女性が会いたがっている、と同僚に言われたことも思い出しました。聞けば仕事で助けられたお礼を言いたがっている、という話だったので、丁重に断わった覚えがあります。
携帯電話の電話番号に関しては外部にもらさないという規定があるため、同僚はマニュアル通りの返答をしたのでしょう。
けれど、少女にめげている様子はありません。
「最終手段と思って無理に電話をすれば、会話をする前に電話を切られてしまったのです!」
灼熱の炎を瞳に宿し弾丸のように話す姿は、雪の舞う夜に所在無げに立っていた少女とはとても思えません。
度重なる三奈への接触に失敗した少女は、気持ちを弱らせるどころかやる気をみなぎらせているようです。
「だから、もう直接お仕事場所に乗り込んでお礼を言うしかないと思って、ここまで来たのです!」
劇のクライマックスかと思えるほどに力の入った少女の言葉に、ヒメは呆然とするばかりです。
こぶしを固く握りしめた少女は、三奈をロックオンしてこれでもか、と力を込めた声をお腹から出しました。
「あなたが融通の利かない堅物だということはわかっています。それでも、あなたにうっかりときめいてしまいました! 責任とって、結婚してくださいっ!」
「断ります」
少女の熱い告白に、三奈は冷たく返します。その顔にはひとかけらの動揺も見られません。
「そもそも、あなたは未成年でしょう。その時点で考慮の余地はありません」
淡々と返す三奈に、けれど少女はめげません。
「だったら、わたしが成人するまで待っていてください! それまでは、婚約者ということで!」
「断ります。年の差を考えてください。あなたを婚約者にした場合、私の社会的立場が危うくなります」
「ということは、三奈さん自身がわたしを嫌いというわけではないんですね! 嬉しい!」
「議論の飛躍はやめてください。そもそも、好悪を判断する段階に達していません」
言い合う二人の勢いに飲まれてぼんやりしていた人魚のヒメは、うっかりときめいてしまわなくてよかった、と思いました。
そして、自分には男を見る目がないのかもしれない、と気が付きます。
(ひとまず、魔女に連絡して契約内容に注釈を加えてもらいましょう。それから、魔女でもお姉さまたちでもいいから、男を見る目を養う方法を知らないか、相談してみましょう……)
なおも言葉の応酬を続ける二人を置いて、人魚のヒメはそっとその場を立ち去るのでした。