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二日目

さて、まだまだ憂鬱な火曜日であるが話を続けよう。

しかしながら、僕が期待していたようなことなんてこれっぽっちも起きないわけ。朝の二人の時間も進展はなく、意味もない30分を過ごしてしまった。

いやぁ本当にまいってしまった。だから僕は彼女をストーキング…いや観察することに徹っしてみたんだ。

丁度お昼休みくらいかな?彼女が動いたのは。彼女をひっそり追うと図書室に辿り着いた。彼女は躊躇する間もなく扉を開け、司書の先生もまだ来ていない静寂の部屋へと入っていくのである。

誰もいない図書室はもの寂しげで日当たりが悪いのにやたらと広いものだから気味が悪いというのが一番似合う表現だったと思う。

彼女は少し古い文芸書を読んでいるようで少し奥の方でペラペラとページをめくる音だけを響かせていた。

「奇遇だね。何読んでるの?」

僕はさり気なく彼女に話しかけることを試みた。

「奇遇って…小野瀬くん初めて来たくせに」

本を閉じて彼女は少し呆れて言った。

ばれてるなぁこれは…尾行失敗だ。

「そ、そうかも」

彼女の静かな声一つ一つが胸に突き刺さりそうだから僕は少し身構えた。

「私毎日来てるもの」

「それは凄い…で何を読んでいるんだい?」

彼女は本の表紙を一回確認すると少し考えた素振りを見せて、僕を見たが彼女はどこか悪戯な目をしていた。そして何かを思いついたかのような素振りを見せてから話し始めたんだ。

「そうねぇ…主人公は私達と同じくらいの女の子でね、その娘はある日を境に3日間をループするの。ずっと、ずーっと。正解を探して何度も同じ日を繰り返すって話…かな」

「へえー」

彼女には失礼だけど、僕はてんで本に興味がなかった。ただ彼女が少し楽しそうに話していたものだから罪悪感に苛ままれていた。

「どうせ…興味なんてないんでしょ」

彼女は呆れていたというよりかは僕のことをお見通しであるという余裕を含んだ口調で言った。

「いやいや。そんなこと…じ、じゃあ何回巻き戻るの?」

往生際の悪い僕に彼女はいよいよ機嫌を悪くし、読んでいたページが半分くらいなのであるのをこちらに見せつけた。もう終わったと思ったね。見えない地雷を踏んだ感じ。

「―――ごめん」

しかしながら彼女は失笑し、本を閉じた。くっくっと苦笑しだした彼女はらしくない程に笑って、僕を困らせた。

「全部嘘」

「――――――!?」

参りました。


何も言わずに彼女は「正直者と悪戯」と書かれた分厚い本をカウンターに持っていき、そのまま図書室をあとにした。

結局彼女が何故あのような嘘をついたのかは僕は聞き出せなかったな。

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