5 魔王の夜会と車椅子
洞窟は進むうちに、どんどん暗くなっていった。
「なるほど、ミル様は転生者なのですか」
「そうだけど、お前敬語やめろよ堅苦しい」
「いえ。あなたは私の主であられますし、七大魔王を僕とするならばこの世界で唯一の魔王となられます。つまり、世界中の魔物の王であられますゆえに、馴れ馴れしいのはよしたほうがいいでしょう」
「………………一応冗談だったんだけど」
「あれミルちゃん流の冗談だったんだ。僕には全く冗談に聞こえなかったんだけど」
洞窟からは水が滴り落ち、進めば進むほどジメジメしている。
「そういえばさ、なんかこの先の城に数年に一度、七大魔王が集まるんだっけ。」
「あぁ、はい。この先の魔王城というところに、数年に一度魔王の夜会が開かれますね。」
フィアはスラスラと答えた。
「へぇ、フィアは詳しいんだな」
「当然でございます。ミルさまの眷属である上に私の能力は知恵。この世の全ての知識を持っております」
フィアは誇らしげに胸を張る。
「フゥン、ぶっちゃけ魔王の夜会では何をするんだ?」
「領地のことや人間の事、あとは決まりごとを決めたりしてますね。ですが、七大魔王は大変仲が悪く、大抵は口喧嘩で終わってしまうそうです。魔王の夜会以外は彼らは自分の領地からは出てきませんね。」
「ふむ。ところでお前らそれ辛くね?」
ヘルはフィアのことをおんぶしており、フィアの方が大きいためにかなり苦しい体勢になっていた。
「だ、だいじょうぶ!僕は全然平気だよ!」
「そうですよ!だいたい私たちがこのくらいで疲れるわけないじゃないですか」
「いや。でもお前らどっちも力ないだろ」
すでにヘルの足はガクガクになり、捕まってるフィアの腕は真っ赤になっていた。
「ちょっと待ってろいいもん作ってやるから」
そう言うとミルは引き返し、残されたヘルとフィアはキョトンとした顔で見送っていた。
数分後、ミルは何かを抱えてきた。
「ほらよ、車椅子だ」
ミルは抱えていた車椅子を置いた。
「ええ、で、でも悪いですよそんな」
「作っちまったんだからさっさとのれ」
ミルはフィアを抱えると、そのまま車椅子に乗っけた。
「座り心地どうだ?大丈夫か?」
「はい。すごくいいです」
フィアは嬉しそうに車椅子の上でもぞもぞと動いた。
「魔法で動くようにしてるから労力使わねえし、段差でもまあ平気だろ」
ヘルはしげしげとその車椅子を眺める。
「すごいけどどうやって作ったのこれ」
「錬成」
「…………本当何でもありだよね。ミルの能力」
「それは認める」
ミルとフィアが話している間でも、嬉しそうにフィアは揺れている。
「あ、出口見えた。」
ヘルが前を指差すと、前の方には穴が開いておりそこから光が漏れていた。
「オシ、じゃあ魔王城殴り込み行くか!」
「「おう!」」
嬉しそうにミルたちは出口目指して歩いていった。