13 ヘルの心とミルの計画
「さて、ヘルどうしようか!」
開口一番にそういったミルに、七つの大罪たちはフリーズし、フィアはそっとお茶を飲んだ。
数分前、ミルから大広間に来いと伝達されたフィアたちは、全員が集まっている。
「どうしようと言われても……………」
「なんとかできるのってミル様くらいしかいないよね」
「純粋な戦闘能力なら私よりあの子の方が上ですし」
「我ですら勝てるところが思い浮かばんからな!」
「無理なもんは無理ですよね〜」
朗らかにみんなが笑いあっていると、ミルはプルプルと震え始めた。
「ダーッ!!なんでそうなるんだよ!何楽しそうに笑ってんの!?お前ら一応私の部下だよな!?」
そんな風に騒ぐミルを、不満げな顔で見る。
「ミル様の言うこと聞かない奴は潰しますよ?七つの大罪とフィア様でかかればヘル様勝てるかもしれないし」
「潰すな!私はただアイデア聞いてんだっつの!」
「でも自分ですでに考えは決まっているのでは?今回話を聞きに来たのはそれを確定させたかったからでしょう」
フィアの問いに、ミルは深いため息をつく。
「まぁそうなんだけどよ」
「なら実行すればいいでしょう。私たちは誰も反対しませんので」
「…おう」
ミルはとぼとぼと大広間から出て行った。
「僕は悪くない僕は悪くない僕は……」
ヘルは部屋の隅っこでうずくまり、ぶつぶつとつぶやいていた。
部屋の中は暴れたのかかなり荒れており、ヘルの手からも血が出ていた。
「ヘル、入るぞ〜」
ミルの声が聞こえるとともに、ヘルは素早く立ち上がり、来ているローブを整えると扉を開けた。
「よ、お久。ヘル」
「ミル!」
ヘルは嬉しそうにミルに抱きついて頬ずりをする。
「会いたかった〜。大丈夫?疲れてない?」
「大丈夫だよ。それより部屋荒らしたな〜。手ェ大丈夫か?」
「う、うん!こんなの全然平気だよ!」
ヘルは慌てて手を後ろに隠す。
「ヘル、話があるんだ」
「なぁに?ミル」
ヘルは嬉しそうにくるくると回る。
「私はヘル以外の、フィアや七つの大罪がすきだ」
ミルが言った途端に、ヘルは凍りつき、回転を止める。
顔は下を向き、影になっていて見えなくなった。
「でも、ヘルが一番好きだ。誰よりもヘルが一番好きなんだよ。お前は私の相棒だ」
その言葉を聞いた瞬間、ヘルの顔はぱあっと輝き、ミルに抱きついた。
ミルはヘルの頭を撫でながら、口を開く。
「私はヘルとずっと一緒にいたい。だけど、他の奴らとも一緒にいたいんだ。それじゃダメか?」
ヘルは不満げにミルを見つめる。
「僕だけじゃ嫌?ミルは僕のものになってくれないの?」
「私はお前が好きだ。だからお前を私のものにしたいんだ。でも私は強欲だから他の奴らもほしいんだよ。私は強欲で傲慢なんだ。お前はそんな私が嫌いか?」
ヘルはぎゅっとミルを抱き締める力を強くする。
「ううん、大好き」
「そうか。なら出てきてくれないか。私のヘル」
「いいよ。僕のミル」
ミルはヘルの頭を撫でる。
「お願いが一つあるんだ」
「なぁに、ミル」
「私がお前のものになったのは黙っていてくれないか?」
「うん、いいよ。秘密の方が楽しいもんね」
「ああ、そうだな」
ミルはぎゅっとヘルを抱きしめ、ヘルは嬉しそうに笑った。
(ごめんな。私はお前も、フィアも、七つの大罪も、みんな大好きなんだ。だから私は失うのが怖いんだ。だから嘘をつく。私に依存して、もう離れないで欲しいから)
ミルは小さく笑うと、そっとヘルの髪に、顔を埋めた。
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