10 赤い悪夢・9
「あはははははは」
ヘルは乾いた笑い声をあげる。周りには血まみれの人間が倒れていたが、全員まだ生きていた。
「えへへへ、え〜い」
ヘルは母親の前で、赤ん坊の目をくりぬく。母親は悲鳴をあげてヘルに擦り寄ろうとしてくる。
「あ、死んじゃった。ま、いっか」
赤ん坊をいじっているうちに、ビクビクと動いていた赤ん坊が動かなくなる。
ヘルはつまらなさそうに母親の眼の前で頭を踏みつぶした。
「あははははあはははははは…」
ヘルは急に笑い声を止めると、冷淡に行った。
「あきた」
ヘルは手を向けると、口を開いた。
「『シヴァ』」
強烈な閃光が放たれ、たちまちのうちに死体は崩れ去り、その場が吹き飛んだ。
残ったのは地面がえぐれた後のみだった。
「ダメだ、ミルちゃんにはとても及ばないなぁ。あははは、さすがミルちゃん。やっぱりミルちゃんは格別なんだよ」
ヘルはうっとりとした顔で言った。すると、がしゃんと音が聞こえた。
狩りから帰ってきたであろう姿の男は、弓をその場に落とし、ただただヘルを恐怖の目で見ていた。
「あ、まだいた」
ヘルがそういうと、男は弓を引き、ヘルに向かって矢を射った。ヘルはその矢を手で掴むと、そのまま男に投げ返した。矢は男の足に突き刺さり、男は悲鳴をあげる。
「俺が、俺が何をしたっていうんだ!なのになんだこの仕打ちは!」
「人間だから。人間は生きていることが罪なんだよ」
目を見開いた男をヘルは首をもいで潰す。
「ああ、いい月夜だなぁ。早くミルちゃんのとこにか〜えろっと」
ヘルはにっこりと微笑み、嬉しそうに歩いて行った。