4 赤い悪夢・3
満月が昇る空に、九尾の女が浮いていた。
「魔族だ!落とせ!」
女に向かって矢が放たれるが、全ての矢は9本の尻尾によって落とされた。
「うふふ。なかなかの人数がわっちに注目していやすなぁ。頃合いでありんすね♪」
女が手を掲げると、女に矢を向けていたものはもちろん、女を見ていたものまで動きが止まった。
「サァテ、躍り狂え」
その言葉を合図にしたかのように、急に動きが止まった者たちが動き出し、人間を襲い始め、辺りには一気に悲鳴と血が飛び交い始めた。
襲いかかる者たちもやめてくれと叫びながら、殺しあう。
そこはまさに地獄絵図だった。夫が妻を殺し、妻が夫を殺し、子が親を殺し、親が子を殺し、友と友が殺しあう。
そんな中、女は笑いながら血だまりの中を歩いていた。
「うふふふふ、あはははは。これが!これが我ら魔族を虐げ、殺してきた罰でありんす!ああおもしろい!…それに、ミル様の敵は生かしてはいかないでありんすからねぇ」
コルド・レヴィアタンは嬉しそうに、嬉しそうに笑う。
そこへ、子供がナイフを構え、コルドに向かって走ってくる。
コルドは尻尾であっさりと少年を捕まえて持ち上げる。
すると少年がコルドを睨みつけた。
「俺が何をしたっていうんだよ。俺はお前に危害を加えてはない!なのに、なんで俺がこんな目に会わなきゃなんねぇんだよ!」
「別に?」
少年はぞっとする。無表情に言い切ったコルドの目は、ドロドロとしたものが透けて見えるようだったからだ。
「でも、わっちもなんもしやかったんでありんすよ」
コルドが少年の首を絞めると、少年の首と体が離れ、少年の首がごとりと音を立てて落ちた。コルドは少年の体を遠くへ放り投げた。
コルドは黙ってそれを見ると、また、にこりと笑った。
「サァテ、この後はどうゆう風にしたらいいでありんすかねぇ」
コルドは鼻歌を歌いながらまた歩いて行った。