逆ハーですか?いいえ、パーレムです!
開いて頂きありがとうございます!
拙い文章ですが、読んで頂ければ嬉しいです。
これは逆ハーなのか?
「エルは僕のものだから!」とキャスタ。
「エル、私の傍においで」とビリアム。
「エルの顔を見ているだけで俺は満足だよ」とアランド。
「俺は剣しかない。ただ、剣を。俺の全てをエルに捧げるよ」とデルフィー。
四人が集まっている。
ゆるふわな金髪カールに、美女のような顔立ち。元第一王子、アランド。
黒髪の神経質さを感じさせる、眉目秀麗の眼鏡。宰相輩出人数が多い名家の元跡取り。ビリアム。
ちんまりした体躯にショタ心を擽られる、可愛らしい容貌に生意気な毒舌。元王国一の商社財閥の跡取り。キャスタ。
茶髪の人の良さそうな優しい顔立ち、背が高く鍛え上げられた細く締まった体躯は令嬢達の心を掴み離さない。近衛騎士団長を代々輩出する名家の元跡取り。若き天才剣士、デルフィー。
甘い言葉を囁く、このABCDの四人。
全員が肩書に元とあり、家名が付いていないのに気付いただろうか。
そう、アランド、ビリアム、キャスタ、デルフィー。
全員が勘当されているのだ。
「はぁ……」
溜息をつきながらABCDと歩く。
彼らに口説かれているエル。これが僕だ。
エルと呼ばれる僕はエル卜ラ卜。
普通の低級貴族家の嫡男……男だ。僕も含めてABCDEの完成だった。
僕達は、全員まとめて国から島流し……いや、未開発地区の北地区流しを受けてしまったのだ。
「婚約者はエルを選びます」
王子が成人する日に、婚約者として指名されたのが僕だった。
そこにBCDの三人が、先を越されまいと結婚を申し入れてきた。男である僕にだ。
名家、ABCDの家の人達で決めた方法は、罰として北地区の開拓という名目で送られた。
どう考えても、僕はとばっちりだよね?何かおかしいよね?
吹雪が顔に張り付き、体温を奪っていく。
国の北地区へと向かう僕達。
寒い、寒いと愚痴をこぼすと、アランドが爽やかな微笑みで。
僕にとっては、やたらと神経を逆なでする煽りの微笑みでしかない、その笑みを浮かべ口を開いた。
「エルと一緒なら、どこに居ても暖かいさ」
そう白い歯を輝かせるアランド。僕は身体を震わせながら、平然としているアランドをジト目で睨んだ。
周りを見ると、みんなにやけた顔で暖かそうに歩いている。
僕だけが寒い思いをしているのはズルいと思う。
「そう、暖かくていいね。アランドはいいよね、僕は寒いけど……」
寒いけど、寒いけど……。言葉がABCDEに響く。
「え、エル。寒いなら、ほら……」
アランドが服をめくりあげ、俺にかぶせた。二人羽織のように、厚手のセーターに包まれる。
小柄な僕は、アランドに軽く抱きかかえられ大きなアランドの服にすっぽりと収まった。
少し暖か……ってぇ?
「アランド!?お前、セーターの下何も着てないの!?」
「俺は服で身体が暖まるより、エルと一緒に居て心が暖まる方がいいんだ」
何この王子、馬鹿なの!?
「エル、アランドから離れて。こういう時は血液に近い所をあたためるのがいい。こっちへ」
ビリアムが俺を手招きする。
「血液が集まるのは、まず肩だな。このあたりだ」
軽く肩の中心を揉まれる。じんわりと、肩のあたりが暖かくなる。
「他には、心臓の付近だ」
そう言って、俺を抱き抱えて、俺の胸のあたりをさすって温め……
やたらとソフトタッチだけど、本当に温めようとしてるんだろうか?
「あとはお腹や腰だな」
お腹から胸のあたりをソフトに撫で、腰からお尻あたりをソフトに撫であげるビリアム。
そして、少しすると僕の服をまくりあげて直に撫であげようとする。
ギルティ……。
「殺すよ?」
寒いってば……。
そういうと、ビリアムは本当に効果があるのに、とブツブツいいながら一歩離れた。
こいつも馬鹿なの?暖めるために裸にして
「寒い、寒いよ……」
キャスタのHPはゼロ近くだった。仕方なく、キャスタの手をこすって暖めてあげる。
「暖かくなった?もう少しで北地区に付くから」
キャスタは弟のような感じがある。小柄な僕よりも一回り小さい。
「ありがとう、暖かくなったよ、エル兄……いや、兄貴。ハァハァ」
なぜだろう、弟のような感じがあるけど、兄貴と呼ばれるとゾワゾワくる。
「あ、でもまだ足の付け根のあたりが寒いかも」
そういって、足と足の間に手を当てるキャスタ。
「……うん」
「エル兄、もう足の付け根が寒くて。本当に。このままだと風邪をひきそうで」
「……だから、何なの?」
「こすってくれない?」
「断る」
お断りだ……。
本当にお断りだ……。馬鹿なの?
「キャスタもエルも軟弱だな。身体を動かせば寒くなんてないぞ」
そういうデルフィは、薄い服で平然と歩いていた。
「うん、デルフィは凄いね」
「ああ、俺は生まれてから一度も風邪をひいた事が無いんだ」
馬鹿は風邪ひかな……いや、頑丈でいいね。
「憧れちゃうね」
あれ、デルフィ何だか顔が赤くない?
「そうか?それにしても今日は暖かいな」
デルフィの額に手を当ててみると、やけどしそうなくらい熱かった。
熱あるよね!?風邪引いてるよね!?
「ははは、風邪っていうのは頭が痛かったりだるかったりするんだろう?俺は全然平気だぞ?そう言えば、最近大地が動いているのを感じられるようになった。俺もレベルアップしたもんだな……」
馬鹿は風邪をひかないんじゃない、気付かないだけだって言葉は本当だったんだ。
「あ、憧れ……。おい、エル、お、俺の方が頑丈だぞ!?」とアランド。
セーターを脱ぎ捨て、半裸になる。
「私にとって、この程度の寒さは何でもないですね」とビリアム。
「ぼ、僕もエルのためなら脱げるし!」とキャスタ。
こちらも服を脱ぎ捨て、半裸になる。
「よし、みんなで脱いで行こう。これは精神修行の一環だ」とデルフィ。
馬鹿なの!?吹雪なのに、何で脱ぐの!?
皆が期待するような目でじっとこっちを見ている。
「「「……」」」
「いや、脱がないから……」
それから二時間後。
ABCDの逆ハー、いや……
全員頭が悪い逆パーを連れた僕は北地区へと入った。
北地区の人達の驚いた顔はきっと一生忘れないだろう。
「何で半裸で。こいつらは死ぬ気か……」
到着してから一週間の間……
当然のごとく風邪をひいたパーレム四人の看病をし続ける僕と、
僕に看病されて嬉しそうにしているABCDの姿があったという。
読んで頂きありがとうございました!
少しライトなお話です。
長編のプロットを書いていたのですが、中々書く時間が取れないし、と短編にして落とす事にしました。
開拓でだらけるよりも、こういうスパっと終わる方が読みやすいかなぁ、と。
お付き合いいただいてありがとうございました!
星馴染