『 キツネうどんだってそういう意味なんです 』
どうやら、便所に起きて正解だったようだ。
「客人は酒を飲んで寝とるな。ひひ、さぁ今の内にご馳走の準備をしなければ」
「人間が迷い込むなんて珍しいからのぉ。人間鍋なんて久しぶりじゃ」
台所から聞こえる話し声。
遭難した僕を助けてくれた、親切な老夫婦だと思っていたのに。
ああ、鍋の材料にされる前にすぐ此処から逃げ出さなくては。
「おや、客人がいなくなっているぞ。折角、人間が大好きな鍋を作ってやったと言うのに」
ぐつぐつ煮込まれた野菜とお肉。
部屋中に広がるカレーの良い香り。
「狸だって事、バレちゃったんでしょうかねぇ」
老夫婦は大きな尻尾を振りながら、残念そうに呟いた。