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十六話 カーテンコールを…

後日談。


部室の窓から校庭を見ていた。校庭では野球部やサッカー部が部活動に励んでいる。

日差しが日に日に強くなってきているが風があるせいで暑さはそこまで苦にならない。

「平和だなぁ」

誰にでもなくつぶやいてみる。

「まだ感傷にひたっているの?」

独り言のつもりで言ったのに、いつのまにか結花が背後に立っていた。

いつのまに部室に入ってきたのだろうか、まったく気づかなかった。

「まさかあのタイミングで蓮も消えるとは思わなかったわね」

昨日の演劇部初公演は盛況に終わった。その舞台の後、片付けの前に旧校舎の演劇部室や科学室を探したが蛍の姿も蓮の姿も無かった。

「確かに…でも蓮の顔、楽しそうだったな」

そう、最後に見た蓮の顔は笑顔だった。

結花が隣まで来て鞄を探り一冊の冊子を差し出した。

「…?」

「少し前にね、旧校舎の部室を探していて見つけたの」

結花の声を聞きながら冊子を受け取ると表紙には『宮坂高校演劇部 活動記録』と表紙に書かれていた。

そこに何があるのかうっすらと感じページをめくると旧演劇部の活動記録や写真がファイルされていた。ページが進むごとに徐々に年数が新しくなっていき、目的のページは最後のページだった。

そこには旧校舎の部室で撮ったと思われる写真が貼られており、いつものひとなつこい笑顔を浮かべた蓮が笑って写っていた。たった一人で。

『部長 蒼風 蓮』写真の横に書かれた文字、廃部になるという事は部員数が原因だったのだろうがまさか蓮しかいなかったのか。

「なんだか…」

俺のつぶやきに結花がこちらを見る。

「…なんだか?」

「一人きりのくせにしてこの笑顔って…なんだか蓮らしいなって思って」

俺の言葉に結花は少しだけ笑い「そうね」とだけ言ってくれた。

もう一度写真を見る。生きていた頃の蓮も俺の知っている蓮と同じで人懐こくて感情的で涙もろくてあっけらかんとしていたのだろうか?

「邪魔するぞー」

部室のドアが開くと同時に局長の野太い声が響いた。手には大量のコンビニの袋を持っている。

「な、なんですか?その荷物?」

「何ですかじゃないだろう、馬鹿かお前は?打ち上げに決まっているだろう」

俺の問いかけに局長はさも当然と言った顔で答える。

局長に続いて美月さんと室長も両手にビニール袋を持って入ってきた。

「そういえばバタバタしていてすっかり忘れてたわね」

「確かに」

結花とそう話しているうちに他の三人によって着々と打ち上げ会場が出来上がっていく。と言っても長机を中央に集めてその上にビニール袋の中身を並べただけ…

「…ちょっと待ってください、なんですかコレは」

机に並べられた飲み物の中に混入していた缶を指差し局長に聞く。

「何ですかじゃないだろう、馬鹿かお前は?ビールに決まっているだろう」

「知ってます!じゃなくて何で買ってきているんですか?高校ですよ?ここ!」

「前にも言っただろ?俺は成人してるから飲めるんだ、法律的に許されてるんだ」

「法律が許しても校則では許されないでしょ?」

「知るか!俺は飲みたいんだ!」

なんとも横暴な生徒だ。学校側としても成人しても生徒として居座る生徒が出るとは誰も思わないだろうから校則に載っているかも不明だ。

「ほら、乾杯するわよ」

結花がそう言いながらコーラが入った紙コップを二つ差し出す。

「待て、俺はそっちの…」

「乾杯するわよ」

局長の抗議はむなしく却下された、さすが結花。

「それでは初公演をの成功を祝って…」

「「「「かんぱーい!」」」」

部室にみんなの声が重なる。



みんなの楽しそうな声が部室に響いている。

その声を聞きながら何となくまた窓から校庭を見てみる。

「本当に緊張しました」と美月さん。

「電源が落ちたときは焦ったぞ、本当に」これは局長。

「いや、あれも計算のうちだ」…これは室長。

「まぁ、結果としては大成功だったわね」そして結花。

「いやぁー!やっぱりみんなで一つの物を作るのは楽しいよ!」これは……?

聞き覚えのある声、でも聞こえないはずの声だった。

振り返るとそこにはあっけらかんとした顔の幽霊がいた。

「な、な、な、なななっ!」

「なんでいるのよ?蓮」

俺の単語になっていない声にいつもより一回り大きい結花の声がかぶさる。

蓮は結花の問いかけに少しだけ気まずそうに笑いながら俺と結花の顔を交互に見た。

「いやぁ、なんか…戻ってきちゃった」

テヘヘとでも言いかねない顔でそう言う蓮に今度は俺が聞く。

「戻ってきちゃったじゃないだろ、消えたんじゃないのかよ!蛍と一緒に」

「そうそう、俺も一緒に行ければいいなぁーと思ったんだけどさ…どうも消えなくて」

「消えなくてって…お前…」

俺の言葉を聞いて美月さんや局長、室長も事態を把握したのだろう、

「なんだ?まだ幽霊がいるのか?」

局長が訝しげに聞いてくる。

「…はい」

「そうなるとまだ心の残りがあるんだな、演劇部幽霊には!」

なぜか楽しそうに局長が言いダハダハと笑っている。

「少しでもしんみりした俺が馬鹿だった…」

「なに?真は俺が消えて寂しかったの?」

蓮が嬉しそうに聞いてくる。

「うるさい!やっと静かになって清々したと思ってたんだよ!」

そう言いながらも正直なところ、なんだか安心している自分がいる。

結花が俺の顔を覗き込みながら少しいたずらな笑みを浮かべて言う。

「真、平和ね」

その言葉に思わず吹きだしてしまう。

確かに、これはこれで今の演劇部にとっては平和なのかもしれない。

「それじゃあこれから次回作の打ち合わせしよう!次は俺も出演してカーテンコールを全身にあびないと気がすまない!やっぱり主役じゃないとー」

蓮のあっけらかんとした声が聞こえてくる。

「確かに、平和だ」

誰にとも無く、そう言った。

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