表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/5

最終話

今回で最後。そう、もう一度心の中で呟いて起き上がった。聞き飽きた着メロが流れる。


「もしもし、もしもし!」

『え?あ、はい・・・。』


電話を掛けてきたのは、彼の母だった。話を聞くと、彼の持病が昨日の夜中に悪化して、入院中との事。今は調子がいいので、見舞いに来て欲しいと言われた。

今までにない、変化が起きた。少しの変化なのに私は喜んで彼の病室に向かった。


『コンコン。』


ノックの変わりに、手を狐にして遊んでみる。

浮かれている今の私に羞恥心はなかった。


「何やってるの。ほら、入って来なよ。」


彼は少し笑いながら言う。こんなに安心したのは久しぶりかもしれない。


『で、大丈夫なの?』

「当たり前だよ。ちょっと悪化しただけだし。すぐ退院できるよ。」

『そっかそっか。はい、これお土産。』

「何この果物の量。」

『いいじゃん。安かったんだから。』


バナナ、リンゴ、ブドウ、桃。他にも色々詰まっている籠を渡した。


「普通お見舞いの品を安さで決める?ちょっと酷いよ。」


彼は苦笑いしながらも受け取ってくれる。

こんな病院の個室なら彼が死ぬ確率は少なくなるため、私は安心しきっていた。

すると、彼は顔を引きつらせた。


『どうしたの?』

「あのさ、お手洗い行きたいんだけど・・・」

『やだよ。』


入院中、彼の移動手段は車椅子になる。なんか、うまく立てなくなるらしい。だからお手洗いにも1人じゃ行けない。


「お願いだからさ。」

『そんなに?さっきまでお母さんいたんじゃないの?』

「2時間前に帰った。早く早く!」

『はいはい。』


いざ男子トイレの前まで行ったものの、さすがに私も女だから入りづらい。しかし、彼のためにと思い、我慢して入っていった。

そう、さっきまでそんなバカみたいに穏やかな日常だったはず。なのに何故彼は血だらけなのか。何故私の手は赤いのか。何故私が赤く染まった果物ナイフを持っているのか。鏡に映った私は、彼の血を浴びていた。

彼を殺したのは、私。

その結論にたどり着くと、私の頭の中に記憶が流れ込んできた。

1つ目は、トラックの運転手にお金を払っている私。

2つ目は、工事現場のおじさんにお金を払っている私。

3つ目は、フードを被った男を脅している私。

4つ目は、彼の飲むコーヒーに薬を入れている私。

覚えられないくらい、次々と入ってくる。


『そっか。彼を殺そうとしていたのは神様じゃなくて私だったんだ。』


病院の屋上へ駆け上がる。柵を越え、建物のギリギリで足を止めた。


『私が死ねば、もう時間は巻き戻らないよね。悪夢は終わるんだよね。

全部、全部私のせい。ごめんなさい、ごめんなさい。』


そう呟いて、前に倒れこんだ。

落ちる際に、クルクル回る私の身体。世界が一望できた様で楽しかった。

私の中に残っていた最後の一粒を目から落として、地面にぶつかるのを覚悟して目を瞑った。

死ぬ直前、誰かの笑い声が聞こえた気がした。




事件調査記録。


8月15日。

場所:未来病院


****

*****の恋人。

4階の男子用トイレにて*****に果物ナイフで腹部を刺され、大量出血にて死亡。


*****

****の恋人。

4階の男子用トイレにて****を刺した後、未来病院の屋上から飛び降り自殺。

*****は二重人格である。


警察は*****のもう1つの人格の暴走だと視ている。


関係者の名前は、何らかの理由で出来た赤黒い染みにより読めなくなっている。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ