3話
目を覚ますとベッドの中にいた。何故自分が此処にいるのか、わからない。
彼が死んだショックで、動くことが嫌になっている。
そして、携帯が鳴る。ディスプレイには彼の名前。いつもの癖で、何事もなかったかのように通話ボタンを押してしまった。
『はい。』
「どうした?どこか悪いのか?」
彼の心配そうな声を聞いて、私は幻聴を聞いているんだと思ってしまった。
『大丈夫。』
「そうか?
あ、今日のデートのことなんだけどさ」
『デート?ああ、デートね。私まだデートとか望んでたんだ。』
自分の欲望に、苦笑する。
「はぁ?お前何言ってんの。」
『あのね、私頭おかしいんだよ。死んだはずの人がこうして電話を掛けてくるなんてありえないのにね。幻聴が聞こえるんだ。』
自分で言っていてバカみたいに思いながら、自嘲するように笑った。
「おい。いい加減怒るよ。俺は死んでない。」
携帯の向こう側から、彼の怒気を含んだ声が聞こえてきた。
『死んでるよ。だって昨日、デートの途中でトラックに轢かれたじゃん。』
「何のことだよ。大体、死んでたらこんな風にお前と話せないだろ。」
『この声は私が作った幻影だよ。』
「もう知らねぇ!今日のデートは無しだ。」
そして、ツーツーという音だけが耳に響いた。
顔を洗って、遅めの朝食を食べて、またベッドに横になった。
外ではサイレンが鳴り、騒がしい。どこかで事件が起こったみたいだ。私は心の中で「ザマーミロ」と呟いて、イライラしながらも眠りに着いた。
午後5時。昼食を食べ損ねた空腹で目を覚ます。
適当に料理をして、テレビの前に座った。たまたまニュースが流れていた。
例の連続放火事件の話だった。興味がなかった私は、食事のほうに意識を向けた。すると、ニュースのアナウンサーに呼ばれる彼の名前。テレビ画面には、彼の顔写真が載っていた。
彼が死んだ。いや、生きていた。それなのに・・・
『私のせいで彼が死んだ?・・・そんなはずないよね。だって、死んでたはずだもん。』
私の中で何かが過って、携帯を開く。ディスプレイには、「17:22」と記されてある。日付は、
『嘘・・・。』
「8月15日」。昨日のままだ。それは、携帯が壊れているというわけではない。
昨日・・・、いや、前の8月15日のことを振り返る。目の前が真っ暗になる前に、携帯に表示されていた時間が、戻っていった。それが午前11時頃の出来事だ。午前11時からは同じ日の午後5時にはならない。
つまり、どういうわけか同じ日を繰り返したということ。
今日の着信履歴には彼の名前。それは、今日、8月15日には確実に彼は生きていたという証。私があんなことを言わなければ彼はまだ生きていたかもしれない。
『私が殺したんだ・・・ッ!』
もう一度、やり直したい。そう願った。そして、時間が巻き戻る。




