第八話:即席の戦術と奮戦
第八話:即席の戦術と奮戦
橋に到着すると、私たちはすぐに防御体制を整えた。狭い橋の中央に、残った盾や壊れた家具、瓦礫をかき集めて即席のバリケードを築く。槍を持った兵士がその背後に並び、盾を持った兵士が最前線に立つ。数は少ないが、皆必死だった。
私の指揮は、父から教わった基本的なことと、トーマスの経験に基づく指示が頼りだった。
「盾をしっかり構えろ!列を乱すな!」
「槍で敵の動きを止めろ!深入りするな!」
トーマスが的確な指示を補足する。「橋の下にゴブリンが回り込もうとしているぞ!数人回せ!」
血牙部族が橋の向こうから現れた。彼らは人間が狭い場所に集まっているのを見て、獰猛な笑みを浮かべている。「愚かな人間どもめ!逃げ場などないわ!」オークの咆哮が響く。先頭に立ったのは、巨大なオーガと、何十人ものオークの重装歩兵だった。彼らは雄たけびを上げながら、橋を一気に駆け上ってきた。
私たちの戦術は、最初こそ効果があった。狭い通路では、敵の数が活かせない。盾壁で最初の突撃を受け止め、槍で牽制する。私が持つ古い短剣は、触れるオークを怯ませ、動きを鈍らせた。私の血に流れるかすかな聖なる力が、邪悪なクリーチャーには効果があるようだった。
だが、敵はそれだけではなかった。橋の側面、急峻な崖の上から、ウォーグライダーの弓矢が飛んできた。隠密行動に長けたウッドエルフのエララが、森の中からそれらを狙撃し、何騎か馬から引きずり落としたが、数が多い。さらに、巨大なオーガが即席バリケードにその怪力任せの棍棒を振り下ろした。木の破片と石が飛び散り、防御線に大きな穴が開く。
「くそっ、オーガを止めろ!」グリムが叫び、彼の持つ重い戦鎚を構え、オーガの足元へ突進する。ドワーフの頑丈さと、鍛冶師としての力強さで、グリムはオーガの巨体と渡り合った。一撃受けるたびに呻き声を上げながらも、オーガの動きを止めようとする。彼の放つ一撃は、岩をも砕くかのような威力だった。
そして、敵陣の後方からは、黒いローブをまとったオーク・シャーマンたちが、不気味な呪文を詠唱していた。彼らの手から放たれた暗黒のエネルギーが、味方である血牙の戦士たちを包み込む。オークたちの目が赤く輝き、狂暴さが異常なほど増した。「グアアアァァァ!」彼らはもはや痛みを恐れず、狂ったようにバリケードに体当たりしてくる。同時に、私たちの兵士たちの足元からは、地面から骨のような手が伸びて、動きを妨害しようとした。セレスティアルが必死に反撃の魔法を試みるが、シャーマンたちの邪悪な力は強大すぎた。簡易な魔法陣は、歪んだ光を放ち、弾け飛んだ。彼の知識と魔力は、この混乱の中では十分に発揮できなかった。
私は必死だった。剣を振るい、指示を叫び、倒れた兵士の盾を拾い上げる。微弱な神聖な力で、オークを怯ませ、傷ついた兵士の傷にかすかな光を放つ。手が触れた瀕死の兵士の傷が、一瞬だがかすかに光るのを見た。それは、ほんの慰めにしかならない光だった。この力は、この押し寄せる絶望的な状況の前にはあまりにも無力だった。数、力、そして邪悪な魔法。全てにおいて、私たちは圧倒的に劣っていた。